オ・グァンノクつながりで…ポスターやタイトルとはかなり印象が異なる、豚と太刀魚が主演ともいえる辛口で純朴な人間ドラマの佳編…「しあわせまでの距離」

 

干潟と太刀魚の田舎町。高校生チェヒョンは大事な今日も喧嘩三昧だ。相手はピョンス、理由はミンジという女子だが、喧嘩ができれば何でもよいようだ。今日は殴り倒されるチェヒョンだが立ち上がり自転車で必死に走る。行き先は最強の姉チェファの結婚式だ…3年前。長らく町を支えてきた太刀魚が突然捕れなくなり町の元気がなくなる。町でただ一人の独身男チュンソプは生花栽培の傍ら細々と魚を捕り続けるチュンソプだけで、彼を狙うのはチェヒョンの姉チェファと、養魚場のユジャ、無職のミジャの三人娘だともっぱらの噂だ。チェヒョンは、太刀魚が捕れなくなりアルコールに溺れる父親に代わり、泥まみれで干潟ウナギを獲り、糞尿まみれで三頭の豚を育てる働き者だ。豚が発情期を迎え暴れて豚小屋を壊すが、三人娘もどうやら爆発寸前のようだ…

 

働き者チェファに、美形ファン・ジョンウム、町ただ一人の独身男チュンソプに、男くさい二枚目イ・ジョンヒョク、養魚場で働く友人ユジャに、映画出演は少ないチェ・ヨジン、友人ミジャに、「サニー」で印象的パク・チンジュ、チェファの母に、「エマ夫人」などエロメロ路線のスターが20年ぶりに復帰アン・ソヨン、アル中チェファの父に、韓国の間寛平オ・グァンノク。友情出演では、喧嘩相手ピョンスの父親に、笑えるチョン・ウンピョ、結婚男の父親に、お馴染みキム・ギチョン。

 

一言でいえば、辛口の朝の連続ドラマ小説(総集編)という感じでしょうか。監督は、シニカルなコメディ「幸福な葬儀屋」「浮気日和」を撮ったチャン・ムニルですが、本作も、平凡で滑稽な日常を追いながらもそこに潜む激情みたいなものを軽い口調で淡々と語るリズムはやはり好感です。一方、主演のファン・ジョンウムは、Netflix加入直後たまたまクリックした『サンガプ屋台』でその姉御肌に惚れ込み一気見した因縁の女優ですが、干潟の泥にまみれ、豚の糞尿にまみれ健闘する姿は相当の女優魂を感じさせます。恐らく全羅南道あたりの干潟と太刀魚に支えられる閉鎖的な風情も良く描かれており、土俗的な人間ドラマとして評価する観客も少なくないかもしれません。

 

ただ、ポスターや邦題「しあわせまでの距離」から想像されるほのぼのしたラブコメを期待すると相当に困惑すると思われます。むしろ、原題「豚のような女」から感じられる文芸的な匂いの方が近いと思われるので、その辺りは注意された方が良いでしょう。

 

楽曲について。すべて町ののど自慢の曲ですが、ミジャのばあさんが歌うのは、チョ・スヨン(저수연)2012年「春の風(봄바람)」、ファン・ジョンウムが歌うのは、ハ・イダ(하이디)1996年「チニ(진이)」、ユジャとミジャのデュエットは、映画ではお馴染みナミ(나미)1984年「くるくる(빙글빙글)」。