もう一本昨年の作品を…キュートなパク・ソダムの魅力満載、バイオレンス・カー・アクションの秀作…「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」

 

釜山。警察廃棄証拠品販売所、”ペッカン商業”が呼ばれる。”特送”ドライバーのウナが書類にサインして、ボコボコになったVolvo 940を受け取って帰る。”特送(何でも誰でも運び屋)”本拠の廃車処理場に着くと、腕の良い自動車修理工アシーフに使えるように直せと指示する。ペク社長は新たな”特送”をウナに命じる。トップホテルからテソン港まで30分の仕事だ。ホテルの前にBMWを横付けして待っていると、依頼人キムが慌ててホテルを出てくる。密航船で逃げる気だ。ウナは車が追ってくるのに気付く。キムは運転手が若い女だと罵るが、時間がない。ウナは車を急発進させ、細い路地に入って、追手の車を次々と撒き、時間通りテソン港に着く。その頃、トゥシクの家では逃亡の準備に忙しい。TVではプロ野球選手イ・ドヨン投手が八百長を告発している。野球賭博組織の共同CEOトゥシクは、潮時だ、と幼い息子ソウォンを連れて海外逃亡するつもりだ。組織の金庫口座保安キー(セキュリティー・フォブ)を持ってだ。金庫には30億円相当が入っている。二人は密航仲介人イムを訪ね、偽造旅券を受け取る。船は明日21時ピョンタク港出発だ。イムは”特送”を紹介しようか、と持ち掛ける。その頃、賭博組織では影のトップ、刑事チョ・ギョンピルがトゥシクの持ち逃げに気付く。こうして、ウナの危険な仕事が幕を開く…

 

北朝鮮出身”特送”ドライバーのウナに、あの「パラサイト」のパク・ソダム、極悪徳刑事チョ・ギョンピルに、良い人の印象が強いソン・セビョク、”特送”の親分ペク社長に、エンタメ・文芸幅広い名優キム・ウィソン、悪徳組織に追われるトゥシクの幼い息子ソウォンに、彼も「パラサイト」の男前子役チョン・ヒョンジュン、賭博組織の金を持ち逃げするトゥシクに、本来は二枚目ヨン・ウジン、NIS(国歌情報院)の北朝鮮担当ハン課長に、実に味があって巧いおばさんヨム・ヘラン、ペク社長の下で働く不法就労インド人アシーフに、恐らくハーフのハン・ヒョンミン、チョ刑事の右腕やっぱり悪辣刑事サンフンに、二枚目ホ・ドンウォン、冒頭の”特送”依頼人に、いつも笑えるチョ・ヒボン。特別出演では、児童売買人に、主演作もあるチョン・ソッコ、密航仲介中国人イム・ギバンに、準主役の活躍が続くチェ・ドンムン。友情出演では、ラストに写真だけ登場は、本作パク・テミン監督前作「キム・ソンダル」の縁なんでしょう大傑作「おばあちゃんの家」デビューの天才二枚目ユ・スンホ。

 

映画自体は、(「トランスポーター」+「グロリア」)÷2+濃い韓国ノワール・スパイス、といった感じでしょう。序盤は実にスマートに”特送”を描いていきますが、中盤辺りからは、金庫口座保安キー(セキュリティー・フォブ)の行方を巡って凄まじい暴力描写が続くので、その辺が好悪を分けることになると思われます。個人的には、とにかくパク・ソダムです。「パラサイト」の僅か6秒”ジェシカ・ソング”で世界に知られる彼女ですが、その魅力が炸裂しているといって言い過ぎではないでしょう。意外にも三十路に入ったようですが、その独特の空気感は十二分に堪能できると思います。出尽くした感のあるカーチェイスもなかなか凝っていて、ドリフト縦列駐車とか車幅ギリギリの狭い路地の激走とかKORAIL列車とのニアミスとか、相当に楽しめるという感じです。

 

韓流的に華のある役者が揃っているわけではありませんが、渋い演技陣も良く効いていて、ちょっとやり過ぎ感のある拷問などの暴力描写に耐えられるならば、鑑賞の価値があると思われます。そんな人がそんなに多いとは思えませんが…若干ストーリー展開が個人趣味に合わない所もあるので五つ星とはいきませんが、パク・ソダム目当てなら、上出来カー・アクションといってよいでしょう。

 

楽曲について。ウナとソウォンの逃避行で流れるのは、 Cardigan Club 2019年「Follow You」、ウナの凄まじい格闘シーンのBGMは、Black Gatsby 2016年「Make Your Money (Shake It)」。