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名子役ユ・スンホの多分デビュー作、「おばあちゃんの家」。

見るでもなく、聞くでもなく、考えるでもない、ただ感じるままに向き合うしかない、こういった映画にはそうそうお目にかかれないと思います。大鐘と百想のベスト・フィルムを獲ったこの作品は、都会の少年が田舎のおばあちゃんの家に預けられるというだけの設定でもあり、おそらく韓国映画の中で最もユニバーサルな作品で、地球上どこで上映しても観客を魅了できると思います。

おばあちゃんキム・ウルボンのものすごい存在感と子役ユ・スンホの巧さは、ちょっと残酷だったり、哀しかったり、それでいてものすごく優しいエピソードを紡いでいく演出と相まって、この映画を不世出の傑作に仕上げています。個人的に一番好きなのが、おばあちゃんが孫のチョコ・パイを買いに膝の悪いおばあさんの雑貨屋を訪ねるシーンなんですが、2分を超える1カットで、結果的に4個のチョコ・パイとカボチャが交換されるこのシーンは声も出ないくらい素晴らしいです。

これ以上この映画を文章で褒めるのに余り意味があるとも思えませんので、余談ですが・・・朝鮮日報で、「ウルブン」(何故かウルボンではなく)で検索すると、主演キム・ウルボンさんのインタビューとか後日談を読む事ができます。本当に読み書き出来ないとか、撮影中監督を叱ったとか、77年間映画館に行ったことがなく初めて映画館で見たのが自分の映画だったとか、映画の大ヒットで60年間住み慣れた忠清(チュンチョン)北道・永同(ヨンドン)郡・上村(サンチョン)面からソウルに引っ越さざるを得なくなった、とか・・・そこから見え隠れする姿も別の一つの映画のような、おばあちゃんの穏やかな余生を心からお祈りしたいと思います。