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イ・フィヒャンつながりで、よしながふみの漫画を原作にした、『宮(クン)』で大ブレイク、チュ・ジフン待望の初主演映画、「西洋骨董洋菓子店 アンティーク」。

甘いものを受け付けない大金持ち坊ちゃんジニョクは、客が女性だという理由から、突然ケーキ屋を開業すると宣言する。パティシエに応募してきたのは、よりにもよって、11年前高校卒業式の日ジニョクに愛を告白し、今や、その世界では、惹きつけられない者はいない「魔性のゲイ」と呼ばれるソヌ。その菓子作りの天才的腕前からイヤイヤ雇うものの、女性従業員を受け付けず、男性従業員とは絶えず色恋沙汰を起こし、ジニョクは雑用係を止められない。そんな時、ソヌが珍しく興味を示さない、ケーキに目のない出前持ちキボムが弟子入りし、さらに、ジニョクの幼馴染みで忠誠心以外取り柄のない不器用なボディガード、スヨンも転がり込んで来て、男4人の奇妙なケーキ屋稼業が走り出す。一方、町内では、少年誘拐殺人事件が連続し、ジニョクは、何故か、悪夢にうなされ始め、ソヌには、フランスから、かつての恋人で世界最高級のパティシエ、ジャンが訪ねてくる。

坊ちゃんジニョクに、『宮(クン)』チュ・ジフン、ゲイのソヌに、『コーヒープリンス1号店』で大注目キム・ジェウク、元天才ボクサーのソヌに、「俺たちの明日<俺たちに明日はない>」で名演『最強チル』などTVでもブレイク中ユ・アイン、ドジなボディガード、スヨンに、モデル出身『犬とオオカミの時間』チェ・ジホ。フランス人天才パティシエ、ジャンに、最近主演作「我が至上の愛~アストレとセラドン~」が封切られた仏人俳優アンディー・ジレ、謎の中年夫婦客に、キム・チャンワンとイ・フィヒャンの名優コンビ、元刑事で自動車修理工場社長に、奇しくも『最強チル』ではユ・アインと父息子を演じたナム・ミョンニョル、ソヌのかつての拳闘ライバルに、最近出ずっぱりチョ・ヒボン。若い女優は皆無ですが、友情出演は豪華で、女校怪談つながりで、チョ・アン、イ・ヨンジン、キム・ミンソン、さらには、「私の生涯で最も美しい一週間」つながりでソ・ヨンヒ、が数カットずつ出演しています。

原作を全く知りませんが、果たして、原作を活かしているのか否か、ちょっと気になる出来ばえです。勿論、大好きな「少女たちの遺言」「私の生涯で最も美しい一週間」ミン・ギュドン監督作品なので、エンタテインメントとしての仕上がりは完璧だと思います。癖のある4人の店員と怪しげな客・家族の織りなす、お洒落でいてキッチュな物語は、ミュージカルや妄想シーンなども巧みに織り込み、しかも目にも麗しいケーキたちに彩られ、万華鏡のように進んでいきます。役者も見事で、無精髭をたくわえ対人関係に苦しむチュ・ジフンも予想以上に奥の深い演技を見せますが、何より、キム・ジェウクのゲイ演技は、「王の男」イ・ジュンギに匹敵し、その気がなくてもフラっとくる色香と清潔感を漂わせ絶品でしょう。ただ、それぞれに優れた、コミカルさ、華やかさ、何度か登場する男同士のキスシーンとかの俗物さ、中盤以降のサスペンス、などをパッチワークのようにギュっと詰め込んだ物語構成は、前作「私の生涯で最も美しい一週間」が余りに素晴らしかったこともあって、2時間への収め方として一歩及ばなかったのでは、という感じは否めません。恐らく、原作を大切にする余りだと思うのですが、観客によって、或いは、パートによって、好き嫌いが斑(まだら)模様になるのではないかと心配されたりはします。

とは云え、女優が、映画を見る楽しみの8割を占める者から見ても、主演女優のいない物語でここまで引き込んでくれるのは、原作・監督・役者の並々ならぬ才能をひしひし感じさせてくれるからなのは間違いありません。ジャンルを特定することが難しいので、適切な言葉が見つかりませんが、ものすごくリッチ(エッチではありません、念のため)な気分にさせてくれる映画、とでも呼びたいと思います。

恵比寿ガーデンなど4月18日(土)を皮切りに、順次、全国公開されますので、興味があれば、是非…