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リュ・スンワン監督、最新作、「相棒」。

韓国のタランティーノが贈る、架空の地方都市オンソン(穏城)を舞台にした、様式美に彩られた暴力の万華鏡とでも呼ぶべき逸品。ソウルの暴力刑事が、幼なじみが刺殺されたとの報を受け、10年振りに故郷に帰ってくる。しかし、観光特区指定とカジノ建設に揺れる街は、もはや昔の街ではなく、幼なじみ達もまた・・・ってなお話。始めは、B級パクリ最高峰「荒野の用心棒」へのオマージュかと思いましたが、どちらかと云えば本家タランティーノ「キル・ビル」でしょう。

五人の幼なじみには、ソウルの刑事に、チョン・ドゥホン、若いフリーターに、本作監督リュ・スンワン、町の実力者に、太ったイ・ボムス、司法試験のため財産を使い果たしたリュ・スンワン兄に、「王の男」チョン・ソギョン、元ヤクザにリュ・スンワン作品常連アン・ギルガン。アン・ギルガンの妻でイ・ボムスの妹には、特別出演『パリの恋人』「欲望 Lovers」美形キム・ソヒョン。10代のチョン・ドゥホンに、「僕らのバレエ教室」オン・ジュワン、10代のリュ・スンワンに、「親切なクムジャさん」パン屋の店員キム・シフの顔も見えます。

元々格闘シーンは抜群の監督ですが、いつも通りワイヤを使わず凄まじい迫力がありながらも、今回の、凝ったセットや衣装を使い、不自然な程演出された格闘シーンは、ものすごく素晴らしい出来で、「パリのアメリカ人」の舞踏シーンをすべて暴力シーンに置き換えた、って感じが近いかもしれません。彼の暴力描写が到達した一つの境地なんだろうと思います。金と麻薬にまみれた10年の歳月が、一緒に闘った仲の良い5人組をズタズタに引き裂いていく、という骨子は持ちながらも、その暴力の因果を問うというよりは、暴力そのものを描いていると云って過言ではないので、かなり好き嫌いは分かれる筈ですが、「キル・ビル」がお好きなら、日本語字幕なんかなくっても、絶対に気に入る筈の一本です。

ちなみにチョン・ドゥホンですが、名作ドラマ『勝手にしやがれ』の無骨で心優しいスタント監督役で気に入って以来、数多くの映画でスタント、悪役、武術監督として目にしてきましたが、この作品で初めてトップにクレジットされています。何かとても嬉しい感じです。