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ムン・ソングンつながりで、「おぉ!スジョン」。

国際的には評価の高いホン・サンス監督の第三作ですが、「女は男の未来だ」「気まぐれな唇」に比べると個人的にはかなりお気に入りの一本。

主な登場人物は三人。裕福な美術関係の坊ちゃんに『LOVE~サラン』「誰にでも秘密がある」チョン・ボソク、世渡り下手な監督に「グリーン・フィッシュ」ムン・ソングン、放送作家に今は亡きイ・ウンジュ。銀幕初主演の彼女は、処女性に固執しながらもどこか大胆な女性像を、死の原因になったとも云われる「スカーレット・レター」よりはるかに大胆な艶技を交えて、熱演しています。

この珍しくモノクロの映画は、プロローグ「一日中待つ」、第一部「もしかしたら偶然」、インターミッション「つり下げられたロープウェイ」、第二部「もしかしたら意図」、エピローグ「番いになったら万事好都合」、という5部から構成されていて、本編である第一部「もしかしたら偶然」第二部「もしかしたら意図」は、「藪の中」のように同じ物語が別の視点から描かれています。よく、第一部は男性チョン・ボソクの記憶、第二部は女性イ・ウンジュの記憶から描かれていると云われますが、個人的には、物忘れの激しい二人の神様が、一つの事実に対して、ああだった筈、いやこうだった、と云い合っているような感じがしたりします。

二つの物語では、同じ会話なのに別の場所で交わされたり、同じシーンなのに登場人物や出来事が違ったりと、よく雑誌にあるイラストの「間違い探し」を見てる気分になるんですが、同伴喫茶でキスするのは同じでも、テーブルから落ちるのがスプーンとフォークだったり、なんてのもあって微笑ましかったりもします。一組の男女が出会ってからの結ばれるまでの顛末は、辿った事実は一つの筈なのですが、お互い忘れたいこと覚えておきたいことの違い、あるいは相手は知らない出来事によって、相当印象の違う二つの物語ができてしまった、って感じです。

皮肉と、この監督には珍しい愛らしいユーモアに満ちた、お薦めの一本だと思います。