リ・ガーデンの依頼 | 中央園芸のブログ

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(株)中央園芸の庭づくりの様子や、日々の出来事

昔つくった庭を直したい、という人はけっこう多い。

 

毎年の植木の手入れが大変で・・・

夏暑くて、外に出られない・・・

世代が変わり、庭の使い道が変わった・・・

 

 

など、最近庭を作り替える、リ・フォームならぬ、「リ・ガーデン」という依頼が増えています。

 

1970年~1990年の景気の良かった時代、「庭ぐらい作らなくては・・・」とほとんどの人が家を建てると、庭をつくりました。

黒松やマキ、モチノキ、チャボヒバなどの形の整った大きな仕立物を植えて、石や灯篭を置き、毎年お金をかけて植木屋さんに手入れに来てもらう。

 

多くの方が競う様に樹形の良い高額な植木を植えて、「庭を作る事」は、ある意味ステイタスのような時代もありました。

 

しかしながら時は流れ、

世代が変わると同時に、庭を潰して駐車場にしたり、手間のかかる大きな木を伐採したりという場面を今までいくつも見てきました。

 

「木陰をつくり、夏の暑さを軽減したい」とか、「木々を植えて、地域の自然環境を再生する!」なんて考えはほとんどなかったように思います。

 

 

既存の庭を生かしつつも、

もっと庭を楽しめたら、もっと庭の管理が楽になったら・・・、

それはある意味、これからの庭づくりの大きなニーズのように思います。

 

今回のブログはそんな「リ・ガーデン」の様子をご紹介します。

 

 

 

 

既存の庭を雑木の庭に、リ・ガーデンしたいという依頼、千葉市W邸。

 

広い庭の外周には、昔植えられたであろう、ヒバや梅の木、モミジ、モチノキなどがありました。

 

 

 

 

 

既存の樹木も点々とありますが、管理しきれずに伐採した樹木の大きな切り株もある。

庭の中は菜園や花壇があったり、広い庭をどう活用してよいのか、持て余してしまう。

 

ここを雑木類に囲まれた庭にしたい、という依頼。

 

 

 

「既存の樹木は、どうぞ好きなように伐採しても構いません」

と言われるお客さんは多いのですが、

僕の場合はほとんどそのまま残すか、移植して別の使い道を探します。

 

「この木は要らない」

と、お客さんの要望でやむなく伐採する事もまれにありますが、それをそのまま処分する事はなく、その庭の水脈整備の資材として、その庭に還すようにしています。

 

 

 

 

W邸は、昨年の年末から工事を始めました。

 

 

トラックに満載の雑木類を積み込み、千葉市まで片道2時間半。

 

弊社の圃場から掘り取った雑木類を現地に運びます。

 

まずはコナラから植栽します。

 

 

庭の中の草の管理で悩まれている方は多いと思います。

まず、草が繁茂する理由のひとつとして、「日当たりが良すぎる」ということがあります。

 

どうしても日当たりが良いと、草の勢いが増します。

庭の中の日差しを極力抑えることは、庭の管理においてとても重要だといえます。

 

また、最近は山採りのモミジやアオダモ、アオハダなどの雑木類を植える事が多くなりました。

そんな繊細な雑木を植栽をする場合、1日中直射日光が当たる場所に植栽する事はどうしても防ぎたい。

 

元々寒冷地の木漏れ日の中に生育していたこれらの雑木類は、同じような木漏れ日の中に植える事が自然の摂理。

夏の強烈な日差しを1日中樹木に当てる事は、樹勢を弱め、病虫害が発生する原因となります。

モミジやアオダモを元気に育てるには、森の高木層(他にクヌギやヤマザクラ、赤松・・・)として日除けをつくるコナラの植栽は不可欠となります。

 

 

庭の中に数本のコナラを植え、庭全体が木漏れ日に包まれる環境をつくり、次にアオダモやモミジ、アオハダなど繊細な雑木類を植栽していく。そして、ツツジやアオキなどの低灌木類を植えて、ヤブラン、ギボウシなど下草の植栽をする。

 

雑木林や森の中での植栽に習い、それを庭で再現していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に土中環境の改善作業。リ・ガーデンといっても、水脈整備は大事な作業となります。

今回は、隣地に所有する竹林から、環境改善資材を調達しました。

 

 

 

 

 

 


竹を間引いて、そのまま放置していたものが竹林内に何か所かありました。

 

 

それを片付けながら、外に運び出します。

 

 

 

 

 

一般的には切った竹はただのゴミなのでしょうが、水脈整備の資材として有効に活用できます。

 

枯れた竹はチェーンソーで細かく切り、枝葉は竹林内の青竹を数本間引き調達しました。


 

 

 

今回は、園路の施工と同時進行で水脈整備を行いました。

 

 

庭を周遊する園路の両脇や敷地外周に水脈ラインを取ります。

 

 

 

 

 

 

途中、道を横切るように水脈を通し、園路の両側を繋げていきます。

 

 

 

 

 

隣地の竹林から切り出したフレッシュな青竹を使用し、園路の際に水脈を通していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リ・ガーデンの作業において、敷地内にあるものは、基本的に持ち出す事はしません。

別の使い道を考え、敷地内で使用しています。

 

 

園路をつくる際や、水脈整備をすると、かなりの残土が発生しますが、これを残土として外に処分するのではなく、植栽地に築山(つきやま)として盛ります。

庭の中に起伏をつくることで、土の中の空気や水も動きやすくなり、樹木も健全に育ちます。

また、見た目にも美しい起伏のある景観が出来上がります。

 

 

 

 

 

土の中から出てきた、コンクリートの破片(コンクリガラ)は、外周の水脈の土留めに。

外周の深い水脈の溝や主要な大きな点穴(縦穴)には、むしろ庭から出てきた石やコンクリガラは土留めとして必要なものになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

敷地内にあったいらなくなったレンガは、別の使い道を模索。

テラスに行く園路として、再利用させることにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回、園路はハナマサ(固まる土)を使用しました。

 

 

 

 

 

園路の両側を横切る水脈上には、縁切りも兼ねてこちらもレンガを上に乗せて使用しました。

 

 

 

 

 

 

 

ということで、ハナマサが固まり、完成です!

 

園路や植栽地をつくる際にはぎ取った芝生地の芝も、植栽地の土留め(グランドカバー)として再利用。

芝生は所々に張り、目地は竹林内の落ち葉も使わせていただきました。

 

 

 

 

 

昔植えられた植木の間を通り抜けるように、園路をつくり、植栽した雑木類となじませます。

 

 

 

 

再利用したレンガ、目地はハナマサ(固まる土)で固め、新たなレンガの園路の完成です。

 

 

 

 

 

起伏のある地形には、さらに脈を刻み植栽地の中でも地形の落差をつけました。

 

 

 

 

 

 

緩やかに蛇行する園路。

コナラやヤマザクラなどの高木を植え、土中環境の水脈整備をする事で、敷地の全体を木漏れ日の中に包み、草や木々の成長を穏やかにさせていきます。

 

 

 

昔植えられたキャラの仕立物も、雑木の庭の中にひとつやふたつくらいあってもいいかな・・・(笑)

 

 

昔作られた庭を作り替える事は、出来そうでできない方が多い。

それはやはり先代の思いを壊したり潰してしまいたくないからでしょうか。

 

しかしながら、木々を全て伐採し、一度庭をリセットして新しく作り替える必要はなく、むしろ既存の材料を有効に利用することで、工事費も抑える事ができ、何よりも今までの庭を尊重できる。

 

 

 

リ・ガーデンとは、昔の庭の思いを残しつつも、現代の生活スタイルや趣向にあったものにする事が一番望ましいのだろう。

 

庭は大変だ、大変だと嘆いたり、遊ばせておくよりは、

庭をもっと楽しく有効に活用できたら、昔植えられた木々や、先祖から受け継いだその土地の神様もどんなに喜んでいることでしょう!