こんばんは、押田です。
みなさんは、京都は好きですか?僕は大好きです。
日本人で、京都が嫌いな人はほとんどいないと思いますが・・・。
今や世界一の観光都市ともいわれる京都。
日本人だけでなく、世界中の人々からも注目されていますね。
今回のブログは、前回の
「リビングからは軽井沢、和室からは京都の風情、理想の暮らしは里山暮らし」の②
今回は、京都、きらめ樹編です。
僕は大学時代から一人旅に行くようになりました。今でこそ一人旅は行きませんが、
日本各地から、世界中(数カ国ですが・・・)と、バックパッカーとして、旅するようになりました。
僕が大学3年の時、最初に行った一人旅。
行き先は、迷わず、「京都」でした。
中学の修学旅行以来、京都には、いつかゆっくり旅してみたいと思い続けてきました。
昨年、造園連の関係で、10数年ぶりに京都に8月と10月の2回も!訪れる機会がありました。
以前、このことはブログにも書きましたが、
久しぶりの京都は、やっぱり素晴らしかったです。少し、振り返ります。
2014年の8月、天ぷら料理の名店、「吉川」。
部屋の中から見る美しい景色に、圧倒されてしまいました。
庭を眺めながら、お茶を頂きました。
この時は植木屋さん10人くらいで行きました。
普段は庭づくりの仕事を行っている我々でも、
「やっぱり、和庭っていいなぁ~、家の中から、こんな景色が眺められたら・・・」
と改めて思いました。
こちらは、石庭で有名な、「龍安寺」での一コマ。
裸足で外国人の女の子がつくばいで遊びます。
このつくばいは、「吾唯足知(われただたるを知る)」 という、とても有名なつくばいです。
周りにも、近くで写真撮ろうと、人がたくさん並んでいましたが、この微笑ましい光景に
みなさん、じっと待たれていました。
日本庭園では、よく用いられる、つくばいですが、海外の方、しかも小さなお子さんも興味があるのだということが、とても嬉しかったです。
清水寺付近のある、お土産屋さん。
わずかなスペースでも、灯篭を置き、景色をつくることで、「京都らしさ」を演出しています。
「最近和庭、日本庭園を作ってないなぁ~、作りたいな~」
こんなことを思いながら、京都を旅行したのを思い出しました。
さて、ここは、群馬県のとある現場。打ち合わせ時の写真です。
思っていれば、願いは叶うものです。
和室があり、景色を眺める窓がありました。
ここは、「和庭」をつくるしかありません。
ここから見える景色を京都みたいにしたいと思いました。
そして、工事に入ります。
窓から外を見たときに、隣のお宅が少し気になりました。
まず、行ったものが、隣地との視線を遮断する、遮蔽垣をつくるということ。
今回は、遮蔽垣として、【檜(ひのき)皮 塀】をつくることにしました。
まずは、柱を建てて、コンパネ(国産)を張ります。
手前の溝は、生きた大地にするための、水脈です。
タッカー等で、檜の皮をコンパネに打ち付けていきます。
ほぼ、張り終わりました。
次に、檜の皮が剥がれにくいように、竹や焼き板を当てて、仕上げます。
今回はコンパネを使い、そこにひのきの皮を張っていきましたが、この辺は、板を張ったり、色々なやり方があると思います。
さて、この「ひのきの皮」なんですが、これは買ってきたものではありません。
これは、ただのひのきの皮ではないんです。
とても意味のあるものなんです・・・・。
こちらは、埼玉県毛呂山町。
私の母親の実家の山林。
檜の森が約5ヘクタール。今年の6月下旬の写真です。
50~60年前に落葉樹主体の雑木林を切り倒し、杉や檜を植えた山林です。
お隣の飯能市では、「西川材」という優良ブランド材がありますが、ここ毛呂山町もその流れを汲んでいます。当時は、木材を生産しようと、日本中で杉や檜の植林が行われました。
しかしながら、時代は変化し、コストの安い外国の木材を使うことが、主流になってしまいました。
需要が少なくなり、お金にならなければ、山は放置されます。
そして、日本の林業は衰退していきました。
植林して、50~60年が経ち、本来なら、今が切り頃なのかもしれませんが、
山に全く手が入らずこんな状態に・・・・。
木は太らず、いわゆる線香のような林。いわゆる、線香林です。
林内は、ほとんど陽が当たらないため、地面は下草がなく、土がほぼむき出しの状態。
森の外は、晴れていても、檜の林の中は、薄暗く、生き物の気配がありません。
鳥の鳴き声もほとんど聞かれず、とても静か、「シーン」としています。
生き物といえば、蚊がいるくらいでしょうか。
下草がないため、土が流れます。土砂崩れ寸前です。
こんな森、実は日本中あちこちにあるんです。
日本は森林が豊かな国、というイメージがあるかもしれませんが、
実はそうでもありません。
今やこのような崩壊寸前の人工林は国土の4割にも及ぶそうです。
それでも、森は放置され、熱帯雨林などの原生林から大量の外材を輸入している現状です。
そして、現在日本は、世界最大の木材輸入国となってしまったようです。
1年間で、四国の面積分の原生林がなくなっているという現実、皆さんはご存知でしょうか?
私もこの現状を知って、とてもやりきれない思いになりました。
何とかこの状況を変えることはできないだろうか?
この森を、生きた森に再生できないだろうか?
これ、できるんです!
まず、これを解決するには、
間伐してあげることです。
間伐というのは、木を間引くことです。
しかしながら、これがなかなか難しい・・・。
材木は重いし、伐採するのもとても大変な作業です。
こんな時に出会ったのが、きらめ樹です!
きらめ樹、といって、杉やひのきの皮をむき、立ち枯れさせる。
木を自然乾燥させ、軽くなったところで、間伐(伐採)をする、というやり方です。
乾燥させてから、伐採をすることで、丸太の運び出しが劇的に楽になります。
そして、間伐をすることで、森に光が入ります。
光が入れば、地面には、下草が茂り、鳥や動物たちも帰ってくる。
森は生きた森、恵みの森へと変わっていきます!
きらめ樹について、詳しくは、【NPO法人 森の蘇り】まで
皮をむくと、キラキラと輝く幹肌が現れます。
このあたりが、きらめ樹、というネーミングになったのだと思います。
とてもかわいそうだという気持ちもありますが、このまま、森が死んでしまっては、意味がありません。
何とか、活かしてあげたい、森を復活させたい、という思いで、皮をむきます。
「きらめ樹(きらめき)~」
という掛け声が毛呂山の森に、こだまします。
本来、木の皮はきらめ樹をやっている人の間では、あまり使い道がないと考えられてきました。
でも、この皮は何か使えそうだということで、僕はストックすることにしました。
きらめ樹によって集めたひのきの皮。
軽トラックで運べるサイズに切りとりました。
きらめ樹をした、手前の木を間伐してあげれば、光が入ります。
残した木はまた、太らせ、後に材木として取ればいい。
今回、6月と8月下旬に、試験的にきらめ樹間伐を行いました。
「この皮、和庭で使ってみよう!」
「杉皮塀」というのは、造園の世界でもよく見かけるものなのですが、
檜の皮を使って、遮蔽垣を作ってみよう!と思いました。
今回、ちょうど先程の和庭の施工とほぼ同時期だったため、
今回の「檜皮塀」を施工することに至った訳であります。
大変前置きが長くなりましたが、和室の中からの写真。
山からの恵みをこの庭で活かす!
和室からの景色、【檜皮塀】によって、グッと京都らしくなりました。
施工前はこんな状態だったわけですから、だいぶ変わりましたね~
そこから、植栽を入れ、
灯篭を置きました。
今回使用したものは、水蛍(みずほたる)灯篭。
茨城の真壁まで買いに行きました。
仕上げは「落ち葉仕上げ」。
和庭では、苔を張ることが多いかもしれません。
しかし、この現場では、日照が少ないことと、今後の管理のしやすさを優先し、
いつもの中央園芸スタイルである、落ち葉仕上げにしました。
この落ち葉仕上げ、いくつものメリットがあります。
表土を乾燥から守る。
草の発生を抑える。
そして、微生物の働きを活発化させ、良い土壌をつくる、
ということでしょうか。
とても和庭にも合う、と思いました。
そして、和庭、完成しました!
うん、京都っぽい!
和室からは、京都の風情。
京都っぽい、京都らしい雰囲気など、とてもざっくりした言い方ですが、
前回のブログの「軽井沢みたいな雰囲気」など、
和庭、日本庭園を表現する際、
「京都みたいな雰囲気」、というのはとてもわかりやすいものだと自分では思っています。
今の子供たちにも、あまり大掛かりなものでなくとも、日本庭園の文化というのは、もっと身近に感じて欲しいと思います。
そして、心の奥底にある、日本人独特の美意識や価値観などをこのような景色を通じて、共有できれば、と思います。
今回の群馬の現場のように、リビングからは軽井沢の雰囲気、でも、和室の前は、京都の風情、
そんな景色がひとつの家の中にあるって、とても幸せなことではないでしょうか?
また、今回、ひのきの皮を荒れた山から採取してきました。
来春には、今度は檜本体を伐採します。
その木材を製材すれば、今回の檜皮塀の柱やコンパネの代わりの木材としても使用できる。
普段施工している、ウッドフェンス(木柵)や、デッキ材料にもなる。
荒れた山林は実は宝の山!
夢は広がります。
最後にもう一つ、同じく群馬県、館林での現場。
施工前。
仕立て物の植木があり、庭石があり、いわゆる昔の庭。
庭をリフォームすることになりました。
家の中から見た写真。
もっと庭を楽しめたら、と感じました。
このお宅は、物置きなどを解体したとき出た、水鉢や古瓦、石臼、石材などがたくさんありました。
廃棄してしまえばただのゴミですが、もう一度新しい息吹を吹込むように利用できたら・・・。
前庭の物置きを解体した跡地は、雑木の庭のスペースにしますが、
ほんの一角を「和」のスペースにしたいと思いました。
水道もあったので、水鉢を置き、筧から水を流すことにしました。
そして今日の写真。完成です。
古くからこの家にあった古材が、生き返りました!
コンクリートがむき出しのスペースも、焼き板と、竹を組み合わせた、ウッドデッキにしました。
そして完成したばかりのこのスペースで、3時のお茶をいただきました。
水が流れる音というのは、本当にいいものです。
筧から落ちる水の音を聞きながらの束の間の休憩。
忙しい師走の土曜日、群馬県館林にて、ふっと京都の風情を感じた瞬間でした。
和の空間であろうと、もっと生活の一部として、庭を楽しんでもらいたい。
それは、たくさんお金をかけなくとも、家にあるものや山の材料でもいい。
そして、日本人の心の奥底にある原風景や、ものを大切にする気持ち、精神性・・・。
そんな風景を限られた庭の空間の中で、多少なりとも感じていただけたら、と思います。
リビングからは軽井沢、和室からは京都の風情、理想の暮らしは里山暮らし、②
次回は、理想の暮らしは里山暮らし 編です。