こんにちは、押田です。6月5日~7日に北陸に旅行に行ってきました。
日本造園組合連合会 青年部の全国総会が福井県の芦原温泉で行われましたが、福井から石川、富山へと名園や観光地を見て回りました。
横浜市、総持寺と並んで、今から750年前に開かれた曹洞宗の大本山。
杉の大木とモミジが美しい境内。初めて訪れました。
石垣。
このわずかなスペースにこれだけの土留めを行うことは、とても技術のいることです。
しかし、日本の城壁を初め、多くの建築物に付随して昔の職人たちは地元で産出される石を積んで、用を足してきました。
石垣には、「練り積み」と「空積み」というものがあります。
練り積みとは、石と石の間をモルタルやコンクリートで接着しながら積むやり方。
空積みとは、この写真のようなコンクリートを使わない、石の積み方。
もちろん、日本の城や古い寺社の土留めなどには、「空積み」の手法で施工が行われています。
この石垣はお城によく見られる、野面積みという積み方です。
土留めをするという目的、崩れてはいけない、強度が出なくてはいけない、という「機能」だけではなく、外観をも美しく見せるという技術。
これは長年日本人が行ってきた「ものづくり」の素晴らしさを物語っていると言えます。
現代土木では、型枠を組んで、コンクリート擁壁などを行うところでしょうか。
同じ土留めをするにしても、空積みの石垣とコンクリート擁壁の決定的な違いは、「空気と水が通るか」ということです。
昨今の全国的に見られる土砂災害にもいえることですが、空気(風)や水など自然の力を抑えることは到底不可能です。空気や水の力を上手く逃がし、弱めることで、数百年もの間、この石垣もそのままの形で残されているといえます。
石垣と建物の間の木々も、この石垣によって、呼吸をし、木々もここまで大きくなりました。
さらに言うと、これらの木々の根ががこの建物や石垣をより強固に支えています。
この石垣は「崩れ積み」という方法。
建物のすぐそばに、この勾配。
上から流れ落ちる土砂をどう逃がすか、この落差に適した土留めとは。
この場所に適した工法というのを、的確に捉え施工されています。
さらに木々の根が、この勾配の土砂を掴み、食い止めています。
このようなことは「数値」で計り、施工されてきたものではありません。
しかし、幾度の台風や大雨、地震にも耐え、このように美しく残されています。
安易に木を伐採し、コンクリートで擁壁や暗渠をつくっても、数十年で耐久年数をむかえてしまいます。
そして崩れてしまえば、さらに強度を増したコンクリート建造物を施工する。
コンクリートを使えば使うほど、水脈は遮断され、さらに空気や水の抵抗をまともに受けることになります。
こんなことをやっいているのが、現代土木というものです。
コンクリートの利点というもの十分にあるとは思いますが、このような日本の先人たちが培ってきた技術をもう一度学び、現場へと知恵を生かしていくべきだと感じます。
シャラの大木。
本当に美しいお寺でした。
建物のすぐそばに、この杉の大木!
現代の建築では、建物を建てる際に、地下にコンクリートの基礎を施工するため、
樹木の根は痛めつけられることになります。
このような大木が残っているということは、建物の地下深くまで根が張り巡らせていることと思います。
「建物に枝がぶつかる」、とか「屋根に葉っぱが入る」とかの次元の話ではありません。
建築物と樹木、自然とは遥か昔から常に寄り添ってきたのだと感じます。
さて、北陸旅行2日目は石川県、小松市。
芦城公園内にある茶庭、「玄庵」。
素晴らしい茶庭。
石と木と苔。シンプルでありながら美しい茶庭の景色を堪能しました。
つくばい周り。
茶室、「玄庵」。
前日の雨が苔を一層美しくしてくれました。
本当に素晴らしい茶庭でした!
続いて金沢に移動し、茶屋街で一服。
雰囲気の良い通り。
やはり金沢は京都の風情によく似ています。
続いて、懐石「つる幸」の庭。
金沢一とも言われる、「つる幸」。
凝縮された日本の庭園美。
こちらも素晴らしかった!
この日の最後に、ふらっと立ち寄ったのが、武家屋敷 「寺島蔵人邸」。
客室からの眺め。
今回の旅行は造園連 埼玉県青年部員4名の旅行でしたが、ここでも写真を撮りまくりました!
ここは古いドウダンツツジが多かったのですが、この古木で350年!
飛び石と苔の美しさ!
作庭志稲田の稲田さんも、確かめるように飛び石を歩きます。
造園業者として、本当に勉強になった2日目でした!
3日目は富山へ。
南砺市の「樫亭」 。
樫亭内部から、庭園の眺め。
とても歩きやすい飛び石。
見た目の美しさよりもまずは「歩きやすい」という機能を重視している、とのこと。
作庭者の河合さんの言葉です。
南砺市や砺波市など、砺波平野に広がる典型的な景色。
家の周りの耕地で稲作を行い、日常生活に必要な資材を屋敷林から調達するという、つくり。
屋敷林は、風雨や吹雪、夏の暑さ、寒さから守るためだけではなく、
杉葉や小枝は燃料に、さらに家を新築する際には、この杉を建材として使用したそう。
まさに自給自足の仕組み。
このような農家が集まり、「散居村」という集落形態を形成しています。
昔、教科書で見た景色です。家屋の屋根も黒色が多く、景色としても統一感があります。
砺波平野は日本最大の「散居村」の景観が広がる地域。
まだまだこれだけ残されているこの景観に感動しました。
最後は世界遺産、「五箇山 菅沼集落」。
ここは昔から一度は訪れたいと思っていた場所。
ようやく念願が叶いました!
この水田にはおたまじゃくしがいっぱいでした。
建物の前をきれいな水が流れていました。
富山は水が豊富な地域です。
まさに日本の原風景といった感じの景観です。
初めて来たのに「懐かしい」。
子供を連れてまた来たいと思いました。子供たちは果たして懐かしいと感じるでしょうか?
さすがに世界遺産、本当に美しい風景です。
しかし、これはおとぎ話ではありません。
このような生活は数十年前まで普通に行われていたわけです。
現代の生活をすべて失うことはできませんが、先人たちの知恵を学び、現代に活かしていかなければなりません。
地産地消であり、物を大切にする心。自然と寄り添いながら暮らしてきた日本人の姿。
この旅行で様々な事を学びました。
この気持ち、無駄にしないよう心掛けていきます・・・。