Bチームメンバー外選手から関東リーガーへ。中央大学サッカー部のシンデレラボーイとなった蓮見。しかしその後も訪れる数々の試練。栄光も困難も、全てを乗り越え蓮見は走り続ける。
蓮見がサッカーを始めたのは5歳のとき。当時通っていた幼稚園にサッカースクールがあったのがきっかけだった。指定校推薦で中央大学附属高校に進学した蓮見。
「元々サッカーでの高校進学を考えていた」というほどサッカーに打ち込んでいた蓮見はその熱意のままに中大附属高校サッカー部の一員となった。
しかし、周りの部員は必ずしも蓮見と同じ熱量でサッカーに取り組んでいたわけではない。
「中学が強いチームだったのでそれに比べると都大会にも出られないレベルだったから葛藤はあった」
高校3年次、キャプテンに任命された蓮見の「勝ちたい」という気持ちは後輩にも伝わっていた。蓮見の高校時のチームメイトだった2個下の後輩藤本(現中央大学サッカー部1年)は当時の蓮見について、
「高校時代の蓮見さんはとにかく怖いというイメージしかなく、ピッチ外でも笑ったところを自分は見たことがありませんでした。でも、どうやったらチームが良くなるか、チームをどう盛り上げようかなどを常に考えているようでした」と語る。
周囲も巻き込みながらストイックにサッカーに取り組み続けた蓮見。附属高校に入り中央大学への進学が見通せていたため、既に高校2年次からコーチ、先輩に大学でもサッカーを続けることを勧められていたという。
大学入学後セレクションを受けサッカー部に入部した蓮見は最も下のカテゴリー、B2チームの登録となる。そのB2チームが戦うリーグ戦のメンバーにも絡めない日々が続いた。そんな状況の中でも蓮見は「日々頑張るしかない」と自主練を続けた。
「常にボールに触るように意識していた。周りにも選手がいたので好きで一緒にボールを蹴っていた感じ」
結局1年間ほとんどリーグ戦に出場できなかった蓮見だが、続けていた努力は本人にも想定外の形で実を結ぶことになる。
新チームが始動した2016年2月,たまたまAチームの紅白戦の人数が足りず蓮見がその中に加わった。そこでのプレーが評価され蓮見はAチームの練習に参加するように監督から言われた。
「緊張というよりもワクワクが大きかった」
名だたる強豪校やJリーグの下部組織出身者と共に練習を行う日々。蓮見は訪れたチャンスを楽しんでいた。
「周りの選手と比べて実績も無かったから怖いものなしという感じ。1年の頃から声をかけてくれていた新井コーチもいたので教えてもらったことを意識して取り組んでいた」
突然訪れたチャンスにも臆することなくプレーし続けた蓮見。開幕戦のメンバー入りは直前まで分からなかったという。メンバーの中に自分の名前があっても蓮見の心は「ワクワク」だった。
試合は0−0のまま過ぎていき、ついにベンチの蓮見に監督から声がかかり応援していた部員は一番の歓声をあげた。
後半22分、蓮見投入。試しに使われたのではない。得点が必要な場面での新たな戦力としての起用だった。蓮見はシンデレラボーイになった。
しかし、その後は再び中々試合に出られない日々が続く。悔しい。そんな感情が蓮見の心を覆う。もちろん前年よりカテゴリーが2つも上がった中で試合に出続けることは簡単ではない。蓮見は初めてサッカーをするのが怖くなった。思うようなプレーができない自分に腹が立った。そんな中でも蓮見は腐ることなく練習に励み続けた。
「悔しさはあった。でもやめたら終わりだと思っていた。今までやってきたことは無駄になっていないし、やっていればいつか報われる日が来ると。出られない状況でも自分が頑張れば出ている選手も頑張ると思ってやっていた。」
努力を続けていても報われるとは限らない厳しい環境。その中でも自分を失うことなくサッカーに取り組み続けた蓮見。2016年は彼にとって飛躍、そして苦悩、様々な経験をした一年となった。
2017年1月24日、新チーム始動。昨年末のスランプを振り切るように蓮見は軽快なスタートを切る・・・はずだった。2月に入りチームの新しいタクティクスへの理解を深めた蓮見はトップに上がって練習を行っていた。当時について蓮見は「調子は良かった」と振り返る。
しかし、痛みを隠してのプレー継続に体は悲鳴をあげていた。内転筋群をかばった疲労が恥骨に蓄積し、加えて足首の捻挫がのしかかった。これにより蓮見は3ヶ月の長期離脱を余儀なくされたのだ。蓮見にとって初めての怪我による長期離脱。ショックは大きかった。しかし蓮見はこの出来事にも「意味はあった」と前向きに捉えている。
「こんなに(長い期間)離脱したことはなくて、初めてサッカーをできない辛さっていうか、できなくて怖くなる、怪我をして怖くなるって人の気持ちがわかった」
今まで自分とは無縁だった怪我による離脱を経験し、怪我をした選手の気持ちを知ることができたと話す。また蓮見自身自分を振り返る良いきっかけになったという。
「怪我を防ぐために自分の体の管理も考えるようになった」
地道なリハビリ生活を終えた6月蓮見はグラウンドに帰ってきた。また一つ苦難を乗り越え大きくなった男の姿がそこにはあった。どんな状況でも前に進み続ける力が蓮見にはある。
思えば決して強くなかった高校時代も、誰よりも自分を追い込んで自主練を行っていた。Bチームの試合に出ていないときもボールに触れ続けた。自分に降りかかる困難や災難からも意味を見出し成長の糧とする。蓮見の向上心はどんな逆境でも揺るがない。
中央大学附属高校から関東リーグへ、そして怪我。苦難を乗り越え栄光を掴み、また苦難を乗り越える。そうして躍進をしてきた蓮見、現状A2チームに所属している彼は今後の目標について「自分のやらなきゃいけないプレーは走ってみんなより頑張って、みんなの良さを引き出さなきゃいけないと思っているから、Iリーグで自分の良さを出してA1チームの人たちに刺激を与えられたらいい」と話し「日々、毎日全力でやる、を目標にします」と締めくくった。
成長し続ける蓮見。これから先どんな困難が訪れても必ず乗り越え突き進んでいく。
◎プロフィール◎
蓮見 謙介(はすみ けんすけ)
MF3年 法学部
1996年7月8日生まれ
169cm/63kg
駒場サッカー少年団→埼玉市立原山中学校→中央大学附属高校