金田一耕助は「名探偵」と言われていますが、少なくとも横溝正史の原作においては、金田一さんが事件を未然に防いだ事は一度もありません。
見立て殺人、いわば予告なのに、犯人が目的を果たして(殺人をまんまと遂行して)から、ようやく「犯人はあなたですね!」「この事件の真相は....」とやる。
遅いやん(笑)
ところが、コレです。
片岡千恵蔵版・金田一耕助。
『犬神家の謎 悪魔は踊る』(1954年/東映京都)
監督:渡辺邦男
脚本:高岩肇
出演:片岡千恵蔵、千原しのぶ、喜多川千鶴、小夜福子
ポスターでわかる通り、さすが天下の千恵蔵、金田一(全部で6本も作られてます)は原作とはほど遠く、ソフト帽にスーツ姿でキメているダンディ。
そして何と、最後の殺人を防ぐんですよ!
原作と違うやん!!
金田一耕助にお姉さんの助手がいたり、犯人と警官隊との銃撃シーンもあったりしますが、信州の湖畔の旧家・犬神家の遺産をめぐって起きる連続殺人事件の設定はほぼ原作と同じ。
犬神家の3人、佐清、佐武、佐智は、それぞれ輔清、輔武、輔智になっていて、輔清はあの不気味な白い仮面ではなく頭巾を被って現れます。
ちなみに、"絶世の美女" という設定の野々宮珠世役は千原しのぶ。
同じ東映版『悪魔の手毬唄』で金田一耕助を演じた高倉健も同じくスーツ姿でスポーツカーを乗り回していまして(笑)、ポケットに手を突っ込みながら刑事とタメ口(さすが健さん!)
原作に出て来る "ボサボサ頭で着物+袴" の金田一は、石坂浩二の登場まで待たねばなりません。
そして千恵蔵金田一は、作品を重ねるごとにどんどん「多羅尾伴内」ものになってゆきます。