【妄想Zone】「麒麟の子」③ | ☆つっこのオモチャ箱☆

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★前回までの話は↓コチラ
(⇒ 『麒麟の子』①)
(⇒ 『麒麟の子』②)


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【麒麟の子③】


「麒麟館は、盗聴機だらけだ」

風磨のその言葉に、勝利は部屋の中を素早く見回した。


「安心しろ、ここは平気だ。ヤバイのは、寮の部屋だ」

「盗聴機?オレらの部屋に?…あっ!」


「そう、夕べのお前らの話も聞かれてたんだよ。かーちゃんにな」


風磨は、いつものように『ママ』のことを『かーちゃん』と言った。


「なんで風磨くんは、そんなこと知ってんの?」

「いい質問だ」


風磨は、軽く頷くと説明を始めた。


昨年の春、風磨は偶然 部屋に仕掛けられていた盗聴機を見つけた。


しかし、そのことを誰にも告げず、風磨は一人で色々と調べた。

そして、勝利が『ママ』の部屋で目にした事と同じ情報を手にした。


そこで風磨は、『ママ』に駆け引きを持ちかけた。

・風磨のことは『出品』しないこと。

・風磨の行動には、多少の規則違反も目をつぶる。

・その代わり、風磨は誰にもこの秘密を話さず、『ママ』のスパイとして生徒の動向を見張る。




「スパイ…?」

勝利は、怯えた目で風磨を見た。


「ビビってんじゃねーよ」

風磨は笑いながら勝利の頭を小突き、話を続けた。


風磨は、寮生が売られていくシステムをどうにか壊したいと考えた。

そこで、表向きはママの味方になる『フリ』をすることにした。


そのおかげで多少の自由を手に入れた風磨は、少しずつ準備を進めていった。


「準備って…、なんの?」

「目的はお前らと一緒さ。麒麟館がやってることを外にバラすことだ」



健人は既に全てを聞いているらしく、さっきから風磨の話に何度も頷いている。


「まず俺は、佐々木のオッサンを丸め込んだ」

そう言って、風磨はニヤッと笑った。


麒麟館の職員は、みんな『訳あり』で雇ってもらってるので、誰もママに逆らえない。


帰る家もない職員たちは、生徒と同様に外に出ることは禁じられている。

だから、酒・タバコをはじめ全ての娯楽を禁じられている職員たちの中には不満を抱えている者もいる。


「佐々木さんもその一人?」

「そーいうこと」



施設内で自由に振る舞える風磨は、出入りの業者たちとも仲良くなり、色々とコッソリもらっているらしい。


「あ、俺は酒もタバコもやんねーよ。あれは大事な『エサ』だからな」

勝利は、さっき風磨が佐々木さんにタバコの箱を投げ渡していた光景を思い出した。


「でも、なんで佐々木さんなの?」

勝利が尋ねると、風磨は『出荷』の流れを説明し始めた。


『出品』によって買い手のついた者は、麒麟館から「ある施設」へ送られる。

その施設で、商品となった生徒は『プログラミング』という名の洗脳を受ける。


その後、自分の意思などない『人形』として、買い手に送り届けられるというシステムだ。


「そん時の運転を任されてるのが、いつも佐々木のオッサンなんだ」

「ふーん…」


「明日、勝利を運搬するのもそうだ」

「…えっ?オレの運搬?」


「お前は明日、出荷される」

「ちょっ…、明日?オレが?なにそれ?意味わかんないんだけど…」


「落ち着けって」


風磨は、勝利の肩を両手で押さえた。

その力強さと風磨の微笑みに、勝利は落ち着きを取り戻した。


「出荷と言っても、実際の行き先は洗脳施設じゃない。オッサンには、別の行き先を言ってある」

「…警察?」


「いや、警察だと色んな圧力で揉み消されるかもしんねーから…」


風磨は、勝利の前に雑誌を差し出した。


「行くのは、コレの出版社だ」

その《週刊文秋》という雑誌の表紙には、「汚職」や「不倫」という文字が大きく書かれている。


「ここに、麒麟館の情報を売る」


風磨は、佐々木さんのスマホを借りて、既に出版社には連絡済みだという。

そして明日、実際に出品されている『商品』と共に、出版社へ行くアポも取ってあるとのことだった。


「その『商品』がオレ…ってこと?」

「そうだ。出来たら、先方にも実際のサイトを見てもらえりゃいいんだけど…、URLとか覚えてるか?」


風磨が勝利に問いかけた。


すると勝利は頷き、「http://www.……」とスラスラと答えた。

風磨は、ヒュ~♪と口笛を吹いて、勝利の頭をクシャクシャと撫でた。

 



「ところで、健人くんはいつから知ってたの?」

勝利が健人の方へ向き直った。


「俺も、夕べ聞いたばかりだ。…な?」

健人は、風磨に視線を送った。


風磨は頷くと、昨日の夜、風磨と健人が部屋を出た後のことを教えてくれた。


『サユリ先生が健人を探してた』というのは、健人を通じてサユリ先生へ頼みごとをしに行くための嘘だった。

その「頼みごと」というのは、睡眠薬を入手すること。
 

 

『商品』となった生徒は、『出荷』の日に睡眠薬で眠らされた状態で運ばれるので、その効き目を試す必要があったのだ。


「昨日の睡眠薬だけでいいんだよな?俺は彼女を巻き込みたくない…」

「ああ、じゅうぶんだ」



ここの職員たちは、みんな『訳あり』だと風磨は言っていた。

『サユリ先生には、どんな事情があるの?』

そう聞こうかと思ったけれど、健人の辛そうな顔を見て、勝利は言葉をのみ込んだ。



「明日の朝、ビタミン剤とか言われて睡眠薬を飲まされるはずだ」

「それを、飲むフリしてごまかせばいいんでしょ?」

「分かってんじゃん」

 


勝利の察しの良さに、風磨は気をよくした様子だ。


「でもオレ、うまく出来るかな?寝たフリもすんでしょ?」

「余裕余裕。夕べの感覚、覚えてんだろ?」


「夕べ…?え?昨日の頭痛薬ってもしかして…」

「ビンゴ!あれは睡眠薬だ」



確かに、夕べは薬を飲んだ直後、気絶するように眠りに落ちた。

あれを演技で再現すればいいなら、なんとかなりそうだ。


「夕べお前が寝てる間に、金も仕込んでおきたかったしな」

その言葉で、勝利は自分が窃盗犯にされたことを思い出した。


「あれ、なんだったの?オレ、マジで凹んだんだけど」

「わりーな。『勝利を問題児にすれば、更生施設に送るって名目でソッコー出荷できるぜ』って言ったら、かあちゃんが乗ってきたからさ」


それに、俺たちの計画にも好都合だったし…と、風磨は付け加えた。


「でもさ、健人くんは全部知ってたんでしょ?オレにも話しといてくれればよかったのに…」

勝利が恨めしげに健人の方を見ると、健人は右手で小さく拝むような仕草をした。


「まあ、そう言うなって。迫真の演技のおかげで、俺らが仲間だってこと、かあちゃんにはバレてねーし」

「オレにとっては演技じゃなかったからね」

勝利は口を尖らせて不満そうな顔をした。


「とにかく、決行は明日だ!俺は、勝利が積み込まれる前に車ん中に隠れとく。中島は?」

「…俺は、ここに残るよ」


「健人くん、行かないの?」

「ごめんな…。やっぱ、彼女を置いてけないわ」


「そっか…」


「お前らは、事実を明るみにして戻ってきてくれるんだろ?」

健人は、試すような目でニッと笑った。


風磨と勝利は、大きく頷いた。


「だけど、本当にうまくいくかな?」

事の大きさに、勝利は身震いをした。


「『麒麟児』って言葉の意味、知ってるか?」

風磨が言うと、健人が『Wonder Child』と滑らかな英語で続けた。


「えっと…、確か『すぐれた才能を持つ若者』とか、そんな感じだっけ?」
 

 

「麒麟館で育ってきた俺たちに、ピッタリだと思わないか?」

 

「確かに」

「うん」

 

 

力強い6つの瞳に、もう迷いはなかった。

 

 

 

 

♪ついて来い たてがみを隠さずに

  勇気ある はみ出し者よ

  こんなにも 広い空の下で

  お前はもう自由だ We're Wonder Child!

 

 

 

(fin.)

 

 

******************

 

 

以上です。

 

 

3話で完結したかったので、今回は詰め込んでしまいました(^^ゞ

 

「説明が多い」&「セリフの文字で画面がカラフル」…などなど、読みづらいところもあったかと思いますが、最後までお付き合いありがとうございました♪

 

 

この話を説明するならば…

 

『とにかく賢い風磨』

 

その一言に尽きます( ̄▽ ̄)

 

 

 

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