Sexy Zoneのシングル『麒麟の子』を聴いた時に、頭に浮かんだ物語です。
*【妄想Zone】は、毎回読み切りの超短編小説です。
「もし、こんなドラマをセクゾのメンバーが演じたら?」なんて思いながら書いてます♪
(佐藤勝利くん多め)
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【麒麟の子】①
「マジか…」
勝利の話を聞き終わった健人は絶句した。
勝利は、青ざめた顔で頷いた。
ここ『麒麟館』は、親をなくした子供たちが共同生活をする寮だ。
優しい寮母に、設備が整った施設。そして、外の学校と同じ単位が取れる充実したカリキュラム。
全てが揃ったここでの生活に、疑問を抱く者など誰もいなかった。
今日までは…
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今日の午後、授業の途中に頭が痛くなった勝利は、先生に保健室に行きたいと申し出た。
すると先生は、保健室ではなく寮の自室に戻るよう勝利に指示した。
こういう時、『生徒のサボリ防止』のため、本来なら手の空いた先生が生徒に付き添う。
しかし、普段から優等生の勝利は、「一人でも平気か?」と確認されただけで、誰も付き添うことはなかった。
勝利は、日中にカリキュラムをこなす『スクール棟』から、日常生活を過ごす『ホーム棟』へ一人で戻った。
昼間の『ホーム棟』の中は、生徒が誰もいないので静まり返っている。
勝利のスリッパの音だけが、ペタンペタンと廊下に響いた。
ふと見ると、いつもは鍵が掛けられている寮母の部屋のドアが、少し開いている。
それは、ほんのイタズラ心だった…
勝利は、コッソリと部屋に入って、後ろから寮母さんを驚かそうと考えた。
息を殺し、ソッとドアを開ける。
しかし、部屋の中に寮母の姿はなかった。
拍子抜けした勝利が部屋を出ようとすると、つけっぱなしのパソコン画面が目に入った。
ショッピングサイトらしき画面に表示された商品を見て、勝利は固まった。
商品の詳細を見てみると、【大きさ】には勝利の身長が、そして【重さ】には勝利の体重が記されている。
そして、商品の【製造年月日】は、自分の生年月日と同じだ。
これはきっと、人形ではなく『生身の自分』が出品されていることを意味しているのだろう。
その証拠に、画面の中の自分には、おそろしくゼロの多い価格が設定されていた。
しかし、そんな高値にもかかわらず、既に『SOLD』の表示になっている。
勝利は、震える手で画面をスクロールした。
すると、寮の仲間も何人か『出品』されており、いずれも高値で買い手がついている。
勝利も含め、みな『出荷準備中』の状態だ。
購入者の中には、誰もが知るような芸能界の大物や、有名な起業家、さらには官僚の名前まである。
そして、信じたくはないが、全ての出品元は『麒麟館』 だ。
しかし、意思のある人間の売買なんて可能なのか?
その疑問は、《出荷のご案内》の中に書かれていた注意書によって解消された。
【商品は、《お客様に絶対服従なタイプへのプログラミング》を終えてからの出荷となります】
『プログラミング』とは、いったい何をするのか?
それを想像した勝利は、背筋が凍った。
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「ヤバイな。何か手を打たないと…」
健人は、何かを考え込むようにじっと空(くう)を見つめた。
「…オレの話、信じてくれんの?」
勝利は、不安げに健人に尋ねた。
麒麟館では、生徒たちにスマホは支給されていない。
だから勝利には、見てきた事を記録として残す術はなかった。
「ばーか、当たり前だろ」
健人は、フッと鼻で笑った。
「とりあえず、この事実を外部に知らせるのが一番だと思う。でも、問題はどうやって外に出るかだな…」
健人の言葉に、勝利は頷いた。
『麒麟館』の生徒たちは、施設の外の世界を知らない。
養子縁組や就職が決まった者だけが、卒業前に『外での生活』を学ぶシステムだ。
だから、『麒麟館』の生徒たちは、誰も外に出ることが出来ない。
建物を取り囲んでいる高い塀は、『子供たちを守るためのセキュリティ』らしいが、今となっては脱獄防止の檻としか思えない。
健人と勝利が意見を出しあっていると、突然、ノックもなく部屋のドアが開いた。
「聞~ちゃった、聞~ちゃった。先生に言ってやろ♪」
節をつけて歌うように、隣の部屋の菊池風磨が入ってきた。
「……」
健人も勝利も、驚きで言葉を失った。
しかし、バタンとドアが閉まる音で、健人はハッと我にかえった。
「頼む、菊池!今の話、誰にも言わないでくれ」
「それは条件次第だ」
間髪を入れず、風磨が答えた。
「…条件って?」
おそるおそる勝利が尋ねると、風磨はニッと笑って言った。
「俺も仲間に入れること」
風磨のその言葉に、健人と勝利は顔を見合わせて笑顔で頷いた。
そして、誰からともなく手を出し合った3人は、互いの手を強く握りあった。
( ⇒ 「麒麟の子」②へ続く)
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以上です。
この話は、『約束のネバーランド』というマンガの世界観に影響されて書きました( ̄▽ ̄)
そのマンガは、優しい「ママ」の元に育った子供たちがいる幸せな孤児院は、実は恐ろしい「鬼」の食用として子供を育てている「人間飼育場」だった。
真実を知った子供たちは、施設からの脱出を試みる…
という、結構ヘヴィーな内容なんだけど
さすがに食われちゃうのは怖いから、「人身売買」という設定にしてみました。
(それも十分怖いけど…(^^ゞ)
本当は、まだ(考えた話の)半分なんだけど、長くなったので〆ました。
気が向いたら、「続編」を書く…かも
《追記》
続きを書きました( ⇒「麒麟の子」② )
★【妄想Zone】(物語)の一覧を貼るので、よかったら他の話も読んでみてください(^_-)-☆