家庭教師の指導スタイル | 中学受験講師ブンブンのブログ

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中学受験の塾講師とプロ家庭教師をしています。指導のあり方、入試情勢、教えて思うことなどについて、書いていきます。

私は中学入試のプロ家庭教師をしています。

1回2時間の指導で、1万円をいただく家庭教師ですから、『安いとは言えない』指導です。

その代わり、御家庭側は、理由に関わらず、前日までの連絡で、指導を一方的に打ち切れる条件になっています。

 

【1】先生の交代が増加

ここ数年、私への依頼と問い合わせの内容に、変化が出ています。

家庭教師の指導を現在も受けているご家庭からの依頼と問い合わせが目立つのです。

現在指導を受けている家庭教師に不満があり、他の先生に交代を考えているという方が目立つようになりました。

プロ家庭教師は、「成績を上げてナンボ」ですから、半年で成績を上げられなかったら「クビ」になるのは、仕方ない世界です。高い料金払っているわけですから、打ち切られるのは当然とも言えます。

私も満足させられなくて「クビ」になったこともあります。

 

【2】昔は力量の無い先生が目立った。

実は、20年前と最近では、プロ家庭教師の交代の状況が、大きく違ってきたように思えます。

20年以上前は、明らかに実力不足の先生から交代して、前の先生の力量の低さに唖然としたことが頻繁にありました。

『時給1万円取っているトッププロが、四谷大塚の毎週のテストで得点アップを目指している生徒に、つるかめ算を塾で習ってきた面積図を使わずに教えていました。ではどんな教え方かというと、XとYを使って連立方程式を使っていました』

『やさしい1行問題を教えるのに、全部解答を見て説明していました。私が解答を全く見ないで1行問題を説明したら、生徒から「すごーい!」と驚かれました』

『経験豊富なベテランと自称しているのに、「麻布と武蔵を両方受験してはどうですか」などと保護者に話して唖然とさせたそうです(今と同じく入試日は共に2月1日で併願不可)』

指導経験3年の学生講師の方が、よほど実力あるのでは?と思えたものです。

 

【3】近頃は、自分のスタイルを曲げない先生

近頃(この5年くらい)は昔のように、指導力が無い「とんでもないプロ家庭教師」の話を、ほとんど聞かなくなりました。

難しい入試問題も難なく解けますし、併願プランの組み立てや校風などの情報にも詳しい先生が、大多数になりました。

ところが、最近目立ってきたのが、こんな先生です。

「自分の指導スタイルに生徒を合わせよう」というプロ家庭教師です。

大手塾で20人を相手に授業をする場合は、授業内容を定着させるために、問題の解き方を指定することがあります。

たとえば、穴埋めの計算問題を解くときには、写真のように印刷された式の下に線を書かせて、途中の数字を書き込みなさいと指定します。

書き方を指定するのは、きちんと書く習慣をつけさせるためです。

やや強引ながらも、「こう解こう!」という方針を示すのは、塾講師として必要なことです。

 

【4】こんな困ることが

ところが、家庭教師・個別指導塾で、先生独特のポリシー・信念を曲げない先生が目立つのです。

毎週4回、プロ家庭教師が指導するのでしたら別ですが、大半の中学受験の家庭教師・個別塾は、大手塾で週4回くらい授業をうけたうえで、週1~2回の追加指導を受けるのです。

ポリシーを曲げない先生だと、どうなるかといいますと・・・

「食塩水の混合計算を、塾では面積図で習ったのに、家庭教師は教え慣れている『てんびん』で教える」

→→上位生ならともかく、平均点を取れていない生徒には、2つの解き方を混ぜたら、混乱のもとになる

「吸収力のある上位生なのに、『地理の基本は白地図だ』として、余裕で理解しているのに何枚も白地図を書かせる」

→→基礎が不安で覚えにくい生徒には有効な方法だけど、上位生には時間が無駄になる。

「『おまえの塾の先生、こんなふざけた教え方で説明してんの?』と生徒の前で批判を始める。」

→→生徒に迷いが生じたり、塾の先生への信用が低下し指導が徹底しなくなります

「基礎学力がなくて算数嫌いな生徒にも、ミスしたら怒鳴るスパルタ指導」

→→〈頭いいけどサボりがちな男子〉には問題ないのでしょうが、〈コツコツ努力している真面目な女子〉にも同じ対応。

「保護者が『週5回大手塾に通ってるので2時間以上の宿題は無理です』と説明しても、6時間以上かかる宿題を出す」

→→無茶な宿題を出す先生に限って、できないと怒鳴りつける傾向にあります。

 

実はこのような確固たるポリシー・信念を持つ先生は、生徒の性格・成績と指導スタイルが合った場合は、絶大なる指導効果が得られます。

私も若手講師のころ、6年の夏に算数が苦手な生徒を担当して、半年で算数の偏差値を15も上げて、市川・東邦に合格させたことがあります。生徒が素直で保護者からの信頼もあったため、生徒の文章題の無茶苦茶な解き方を徹底的に修正し、思いっきり指導したら、バッチリはまって一気に成績が上がったのです。

でも、1人の生徒に効果があったからといって、同じ指導を他の生徒にするのは、無謀でしょう。生徒の性格、成績、入試までの期間など条件が揃うのが、欠かせません。

 

【5】塾を活かすのがプロ家庭教師

プロ家庭教師の多くは、指導経験が結構あり、並みの大手塾の先生より腕が良いと自負している先生が目立ちます。

仮にプロ家庭教師の指導力が塾の先生より上でも、指導時間は塾の方が圧倒的に長いのです。塾の指導を最大限活かすのが、学力アップの近道と考えます。

塾の指導に問題がある場合でも、たとえばこんな対処をすべきです。

「塾の先生は、難問も宿題に出すけど、受験予定の中学には、こんな難問は出ない。だから、12問のうちの最後の2問の難問には手を出すな。塾の先生は、他の難問を出す中学を受ける人もいるから難問を解かせない訳にはいかないけど、初めの10問丁寧に解けば文句は言われないでしょう。時間を難問にかけすぎないようにしよう」

「塾の指導で一通り勉強はできるけど、足りない部分がある。『国語の記述』と『立体図形』が弱いから対策が必要だ。9月からは『過去問』もどんどん解こう」

プロ家庭教師のやり方に、生徒の状況を無視して合わせるのには疑問があります。とりわけ、塾の指導とプロ家庭教師の指導が矛盾する方針の場合は、良い結果になりはしないでしょう。

 

異論ある先生もいると思います。ただ、先生独特の信念・ポリシーが生徒に合わないのに、曲げようとしないため、生徒を苦しめている現実があるのは事実です。