中学受験のために、学習塾に通います。
でも順調に成績が推移する人は、あまりいません。
「塾通いが嫌になった」
「成績が急降下した」
「先生・友達とトラブった」
途中で、様々な困難にぶつかります。
そんな時に頭に浮かぶのは、「塾替え」です。
他の中学受験塾に移る選択肢があります。
今回は、この「塾替え」の話。
【その1】塾替えは「アリ」
中学受験の通塾は、明確な目的があって通うもの。成績を上げて、目標とする中学校に合格するのが目的です。
習い事というレベルではなく、必死に努力するものですから、他塾に移れば成績が上がるなら、移るのは悪いことではありません。
「自分のレベルに合った塾」や「丁寧に教えてくれる塾」があれば、転塾するのは、むしろ当然のこととも言えます。
【その2】転塾のリスク
転塾をする場合に、考えたいのは、転塾のリスクです。どんなリスクがあるかというと・・・
《1》進度がズレる
四谷大塚のテキストでは、5年の11月に理科の「水溶液の中和」、社会の「歴史・江戸時代」を勉強します。
他塾では、習う時期が3か月くらいずれることがあります。A塾で5年の1月に「水溶液の中和」を習う場合、四谷大塚からA塾に移ると、ほぼ同じ内容を2回習うことになります。2回習うならまだ良いのですが、A塾から四谷大塚に転塾したら、「水溶液の中和」は完全に抜けることになります。
《2》勉強の仕方が変わる
塾を変えると、勉強の仕方が大きく変わります。1週間の勉強のリズムも、変わります。
小規模塾だと、宿題の出来具合を細かくチェックされます。宿題をしないと叱られます。
大きい塾の中には、復習用の問題集を渡して解くよう指示しますが、チェック無しの塾もあります。チェックはしないものの、さぼるとテストで点が取れなくて、クラスが下がってしまいます。
サッカーやピアノにも時間を費やす生徒だと、試合や大会前の週は、勉強に十分な時間を使えません。チェック無しの大手塾なら点数が下がるだけで済みますが、細かいチェックアリの小規模塾だと、激しく叱られることもあります。時間の使い方も変わってきます。
(↑東邦大東邦入試当日)
【その3】すぐ塾替えすべき場合
塾替えをスムーズに進めるには、冬期講習などの短期講習会にとりあえず参加して、問題なければそのまま続けるという方法が無難です。
しかし、適切な時期を待たずに、すぐ塾を変えるほうが良い時があります。
「主力となる先生の人間性に大きな疑問がある場合」と、「塾の方針が許せない場合」です。
文章題を間違えたら往復ビンタ、なんて時代錯誤をしていたり、塾長が授業日を間違えて閉まった塾の前で生徒が長時間待ったのに謝らなかったり・・・。この種のことが2度あったら、すぐやめるレベルでしょう。(1回でも私が親ならやめるかな)
【その4】成績が低迷したら、転塾もあり
成績が偏差値50以下で伸び悩む場合は、転塾も選択肢に入れると良いと考えます。
中学受験は、目標が明確です。合格という目標に向かって必死に努力するのです。もっと言えば、合格のために「お金」と「時間」と「労力」を費やすのです。
ですから、現在通っている塾の先生は親切で、特に不満はないとしても、心機一転、新たな環境で受験勉強を進めるのもアリだと考えます。愛想が良いけど腕がイマイチのお医者さんより、他の腕の良いお医者さんに診てもらうのです。
ただし、転塾を決断する前にすることがあります。
現在通っている塾に、何度も勉強法を相談するのです。
「現在、1週間の勉強はこのようにしていますが、成績を上げるためには、どうしたら良いでしょうか」
「こちらも頑張りますけど、先生の方でも、何か対策を取ってもらえませんか」
転塾は、生徒に負担がかかります。伸び悩みによる転塾は、1回だけにすべきです。転塾しないで済むなら、それに越したことはありません。
なお、「偏差値50」と書きましたが、テストにもよりますが、いわゆる地頭が良くなければ偏差値55くらいが限度の場合もあります。
渋谷幕張が志望校なら、多くの人は「偏差値が大きく届かない」状態です。現在の塾は、もしかしたらできるところまで伸ばしてくれた状態なのかもしれません。限界近くまで伸ばしてくれた塾なら「変えましょう」とは言いにくく、見極めが難しいいのです。
(↑市川学園2回入試)
【その5】4年の初めから通っているなら、ちょっと待って
教えている先生は、全員が成績アップして、合格してくれることを望んでいるのは当然です。
しかし、特に何とかしたいと強い想いを持つ生徒がいます。
「真面目に努力を重ねる生徒」を、特に「ひいき」して、力を入れる傾向があるのは、理解されやすいと思います。(最上位の生徒を難関校に入れたいという気持ちも強いのは、もちろんあります)
他に案外あるのは、「3年から通っている、4年の初めから通っているのに、成績が低迷している生徒」です。
自分たちが長年教えてきて、本人も人一倍頑張っているのに、偏差値42に低迷していれば、現場の先生は特に何とかしたいという気持ちになるのです。これは「自分たちの指導力が低くはない」というプライドのためでもありますし、「合格させないと長年我々を信じて通わせてくれた保護者と生徒に申し訳ない」という気持ちも入り混じっています。ただし、先生が他の校舎に頻繁に移動する塾では、あまり見られない気持ちですが。
こういう気持ちがありますので、6年の入試間際には、特に受からせたい生徒が苦手な分野の問題を多く扱ったたり、補習をする際にはその生徒に都合の良い曜日にしたりするのです。そして入試当日には、その生徒だけしか受けなくても、受験する私立中の前に立って激励したくなるのです。
入試直前でなくても、相談すれば「計算ミスが多くて点を落としているから、毎週計算問題を解いて出してくれ!こちらで添削してミスをチェックするから」などと特に親身になってくれる可能性が高くなります。この条件(4年の初めから)に当てはまる場合は、「ずうずうしいかな」と思えても、何度も相談しましょう。
私も家庭教師をしていて、お姉さんが第一志望・第二志望とも不合格にしてしまったこともあります。それなのに妹の指導も依頼されたら、これは何としても・・・という気持ちになりますが、これと何となく似ています。
【その6】転塾のタイミング
最善なのは、冬期講習会などの講習会です。冬期講習会を他塾で受けて、問題なく馴染めたら、そのまま転塾というパターンが、リスクが少ないのは事実です。冬期講習を休む形なら、転塾先で馴染めなかったら元の塾に戻るのも、さほど不自然ではありません。
また冬期等の講習会は、今までの復習をすることが多く、進度の関係で抜けていた内容でも、最低限の復習ができます。料金的にも、入会金・教材費などの負担は少なめです。
ただし、塾側は転塾阻止のために、策を練ることがあります。
夏期講習の申し込みを5月中に行わせるのが、それです。5月中に申し込まないと、家庭に「申込期限が過ぎていますが・・・」と電話攻勢が来ます。生徒にも「おい、お前、夏期講習来ないのか?」と教室で友達にも聞こえるように声を掛けます。転塾が決まれば、たいていは取り消せるようですが、これがすごく面倒です。
ただし、思い立ったら吉日、必要と決めたら、講習会のタイミングに合わせる必要はありません。
そして、「転塾する」と決めた場合は、もう現在の塾には行かないほうが良いかもしれません。
新しい塾に相談すれば「来月入会ですが、今月も来て良いですよ、授業料は不要です」などと言ってくれることが珍しくありません。そして新たな塾に早く馴染むのです。
【その7】子どもに転塾を納得させる
初めにどこの塾に通うかは、親の一存で決めるのは当然のことです。
多くの子どもは柔軟ですから、塾で友達ができて「勉強はキツイけど、塾は結構楽しい」という状態になります。
しかし、転塾となると、せっかくできた友達と別れることになります。子どもは気分が重くなります。
ですから子どもに、しっかり説明して納得させなくてはいけません。
「お前は市川学園を目指して勉強しているんでしょう。でも今の塾は授業時間が短くて、市川学園には届く成績になるのは大変だよ。××塾なら、ついていくのは大変だけど、成績が上がるはず。転塾した方が目標に近づくのではないか」
このように説得するのです。
転塾後はしばらく、特に声掛けをして、励ましましょう。
「今日の国語の授業、どうだった?」
「国語の先生、ダジャレばかり言うんだよ」
「そう(^^♪、楽しく教えてるんだね。理解したら、あとは復習して忘れないようにね」
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まもなく12月1日の千葉県内私立中の第一志望入試が始まります。
11月中は、1日も休みなしで塾&家庭教師でした。
受かってくれることを祈るだけです。
運が良ければ、6年の受験生が3人とも合格を決めて、受験指導が終了します。
受かってくれ~っ!