私は中学受験のプロ家庭教師をしている。
指導歴2年の学生講師と比べれば、様々な面で優れた指導ができると自負している。
たとえば、6年の秋からの駆け込み受験で、時間がない場合は、過去問をチェックして「立体図形は捨てよう」とか、歴史は易しいから「基礎ドリ」(文英堂)というかなり易しい基礎テキストを使おう、といった思い切った対応を取る。
とはいえ、魔法使いではないから、特別な指導法を使うわけではない
平均点に届かない生徒には、基礎を繰り返すのが、成績向上の近道だ。
成績が上がらない最も多い原因は、基礎練習が足りないためだ。
【1】歩合の例
算数の歩合(割・分・厘)を勉強するなら、易しめの問題をテンポよくたくさん解くのが、定着させる近道だ。
たとえば、次のようなプリントを用意して、解いてもらう。
さほど難しくない問題だ。9問解くのに2分くらいで解けそうだ。うっかり間違えた問題は、すぐ隣に類題も載せているので、更に練習できる。余談だが、塾でのクラス指導の際には、「終わったら右の9問も解こう」という指示もできて、早い人も退屈させない効果もある。
私は、この種のプリントは、できる限りパソコンで打つようにしている。1度作れば、2週間経って忘れかけたころ、数字を変えてもう一度解いてもらうことができる。同じ数字でも、指導効果はほとんど同じだが、生徒が「また解くの?」と感じて、モチベーションが下がる可能性がある。
同じような基礎問題を何度か繰り返すのは、無駄と思う人もいるかもしれない。
でも、実際の問題は、もっと長い文で出題され、余裕がなくなるわけだから、「4割3厘は、0.43?えーと、あっそうか0.403だ」とギリギリ答えられるくらいならミスしてしまう。繰り返し、体にしみ込ませるのが大切なのである。ピアノを習っている人は、1日何時間も同じ曲を繰り返し、野球をする人は1日100回以上素振りをするのも、体にしみ込ませるからだ。
必要な時間も、このプリントなら3分かからない。
【2】速さの例
速さでは、様々なミスが出る。
代表的なミスは、「分速90mで30秒歩くと何m進みますか」だと、
分速90m×30秒=2700mというものだ。単位が違っているのに気が付かないものだ。
この種の基礎問題は、市販の問題集には、少ししか載っていない。
成績上位なら対応できるが、平均点と争っている人には、消化不良となって、ミスも増えるし、「何かよく分からん」「算数嫌い」という印象が強まってしまう。
【3】滑車の例
次の「滑車」のプリントも、同様だ。
易しめの問題を数多く解くのが必要になる。
1度解いて納得したら、次の機会に数字を変えて、再度解くと理解ができたかよく分かる。
プリントを作る側も、修正テープを使って、数字を直すだけでよい。
複雑な問題を10分粘る時間があれば、この滑車9問は余裕で解ける。
【4】レンズの例
レンズの屈折は、成績上位の生徒でも、基礎練習が圧倒的に足りない分野と思う。市川・東邦に合格できるレベルの生徒でも、結構ミスをする分野だ。
光の進み方は、理科が苦手な人は、自分で書くのは厳しい。記号で選ぶ問題を解いていくうちに、身についていく。
市販の問題集は、結構よく工夫されているのは事実だ。
しかし、理解が早い上位生向けに作られている面が強い。理解が遅い生徒には、もっと基礎練習が必要なのに、問題が無いわけだ。普通の先生は、ミスはするものの一応は納得しているとして、繰り返さずに素通りしてしまう。
成績が伸び悩んでいる生徒なら、やはり基礎的な易しい問題を繰り返す必要がある。ところが、適当な問題が、なかなか見当たらない。ならば、自分で作るしかないわけだ。
だから、正直言って、伸び悩んでいる生徒を、家庭教師として教えるのは、必要なプリント類を作る手間がかかる。市川・東邦狙いの生徒なら、テキストに沿うだけで、ほとんどプリント類は不要なのだけど。
逆に言えば、成績低迷している生徒に説明するだけで、プリント類を用意しない先生は、私の感覚では理解しがたい。