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刹那-the Everyday Messiah-

紡がれた言葉が、刹那でも皆様の心に残れば……

洋館の大きな窓から、朝日が射し込む。

俺は、目を開け、ゆっくり起き上がる、

いつも最後に起きるのは俺だった。

下の階から、おいしそうな匂いがしてくる。

姉が先に起きて、朝食の準備をしてくれているのだろう。


姉妹に引き取られてからもいうもの、俺の暮らしは見違えるように変わった


さっきまで寝ていたベッドも、孤児院の頃とは比べ物にならない位ふかふかだった。

姉が作る料理は非常においしく、レパートリーが豊富で、いつもお腹いっぱい食べることができた。

それに、小腹が空いてキッチンに降りていくと、姉がすぐにできたてのパイを作ってくれる。

なにより、俺と目が合うと、ニコッと笑ってくれる

思わず、こっちが赤くなるほどに。

孤児院のおばさん達は、子供達(特に俺達名前が無い子)を基本的に無視していた。

子供をほうっておいて話す内容と言えば、政府の助成金がまた上がったとかうちの孤児院は他より優遇されているとか、どうでもいい話題ばかりだった。

『そういえば、うちって政府のお偉いさんの訪問多くないかしら?』

『バカね、愚痴るよりチャンスだと思わなくちゃ。お役人様の前で愛想よく振る舞っていれば、あっという間に玉の輿に乗れるのよ』

『そうそう、前に来たお役人様も、ここは他とは違うっておっしゃられていたじゃない?きっと、私達は他の孤児院より優秀だってことなのよ!』

……なんてことを、目の前で例のカースト制度による暴力が行われているのに一切気付かずに話していた。

子供の喧嘩も、かなりエスカレートしない限りは止めようともしなかった。

それに比べて、姉は本当に優しかった。

いつも俺に微笑んでくれた。

あなたは独りじゃないと、そう言いたげに。


掃除と洗濯は、妹の仕事だった。

とはいえ、ただでさえ広い洋館の全てを1日で掃除するのは不可能なため、右半分と左半分で1日おきで掃除している。

それでもかなり大変そうだったため、俺が自分から名乗り出て掃除を手伝うことになった。

妹は、掃除や洗濯が終わると趣味である機織りをよくしていた。。

その時間を、大切にしてほしかった。

そして、妹も俺と目が合うと笑ってくれる。

普段はあまり感情を表には出さないけど、それでも時折見せる笑顔はとても綺麗だった。


そして、俺は――何もすることがなかった

ここに来た翌日、姉から言われたのだ。

『あなたはこれで自由。元々名前がない私達は誰よりも自由なんだから。だけど、絶対にこの洋館から出てはダメよ。とても危険だから』

大丈夫だよ今まで何回も外に出たこともあるからへっちゃらだよって言っても、姉は首を縦に振らなかった。

寧ろ、孤児院時代に外に出たことを怒られた。

あの時はただただ面食らっていたけど、よく考えてみると、さすがに過保護すぎではないだろうか。

それに、この洋館内なら何していてもいいと言われても、一緒に遊ぶ友達が誰もいない。

孤児院の友達を連れてくることを、姉妹は頑として頷かなかった。

遊びたい盛りの13歳が、ただ広いだけの洋館に飽きるのには1ヶ月もかからなかった。

それに、洋館の右半分は入ることを禁止されていた。

1度だけこっそり行ったこともあるが、恐いくらい静かな空間に耐えられなくてすぐに戻ってきた。

妹に掃除の手伝いを申し込んだのも、退屈な時間の使い方に困ったからだった。

そのため、俺の日常は、良くも悪くも見違えるように変わってしまったのだ。


ある日

午後の静かな時間に、ぶらぶらと洋館の中を歩いていた俺は偶然ある客間の前を通った。

すると、中から知らない誰かの声が聞こえた。

驚いて耳を扉に近づけると、姉の声が聞こえてきた。

「……その話は、無かったことにしてちょうだい」

「貴様、本気で言ってるのか?」これは、男の声だ。

「本当よ。私はあの子を一生かけて守るって誓ったの。そのためなら全てを犠牲にしてもかまわないって」

「……あの子の将来を決める権利は、俺にもあるはずだ!」

「いいえ、あなたにはないわ。あの子は私の……」

ダンッと、机を叩く音がする。

「何故貴様はそんなに非常になれるんだ!貴様のせいで、俺は……俺の家族は……名前を失ったんだぞ!!」


ゾクリと

背筋を何かが駆け上がったような気がした。

姉の冷たい声が響く。

「それが何?私は名前を失っても12年間ずっと顔を上げて生きてきた。この国が滅んでも、私はあの子と2人で生きていければそれでいいの」

「そんな自己満足のために…………!!」

「そろそろお帰りいただけないかしら?夕食の準備をしたいの」

有無を言わさない口調に、相手は押し黙ったようだ。

俺は、その隙をついて、急いでその場から逃げるように離れた。


「……どうしたの?」

妹の部屋。

俺は何も言わずに部屋に入ると、妹が何を言うのも聞かずに機織機の側でうずくまった。

機織機の前には、できかけの布。

きっと、今日完成させると決めていたのだろう。

とびら越しに聞こえた音が、とてもリズミカルだったから。

それを止めてまで、妹は俺を心配してくれる。

優しい。

……優しすぎる。

「…………ねぇ」

ポツリと、ふと思ったことを聞いてみた。

「なに?」

「それのは何?」

指さしたのは、機織機の上のできかけの布。

否、布になりきれてないもの。

それはとても長く、まるでマントでも織ってるみたいだった。

だけど、作りかけ。

糸とも布ともマントとも呼べないできかけのそれを、俺はなぜか気になった。

妹は、意外そうな顔をしたが、やがてゆっくり笑みを作る。

「あの布は……名の無い布なの。今は……まだね」

「……どういうこと?」

妹は、機織機をそっと撫でた。

「見ての通り、これはまだ完成していない。今のままだと、糸の塊とも布とも何とも呼べない状態になってる。未完成の何か、としか呼べない。

だけど、それでいいんだと思う。大事なのは名前に縛られることじゃなくて、どういう名前をつけたいかじゃないかな。未完成だからこそ、素敵に見えることもきっとある。それこそ、完成したものよりも、ずっと素敵に見えることだって。

この名前のないものは、いつかは絶対に完成されるもの。それは、名前がついてしまうから。だけど、もし未完成の頃に輝くことができたら、たとえ名前がついても色あせることはないと思うな。そして、それにもしまだ名前がなかったら、きっと……素敵な名前がつくんじゃない?」

陽が落ちてきた。

夕陽が、優しい笑みを浮かべる妹を包む。

後ろから抱きしめるように。

ろくに勉強もできない俺には、何を言いたいのかさっぱりだったけど、その言葉が、まるで妹が自分自身に言い聞かせているように見えた。

遠くの方で、姉が夕食を知らせる声がした。


何気ないまま過ぎていく日々に

僕達は何をしていたんだろう

ひとつひとつを汲み取ってみると

どうしてだろう?

逃げ出したくなるんだ


「優しいね」って笑いかけた人へ

「優しいね」って近寄ってきた人へ……


過ぎ去った日々を「過去」っていうなら

時々感じる虚無感は何ていうの?

モノクロフィルム かざしてみても

そこにあるのは白黒の現実


「優しいね」って笑いかけるみんなへ

「優しいね」って手を差し出すみんなへ……


ごめんね

僕はもう足が止まりそうだ

靴の底がいつの間にかすり減ってしまって

アスファルトの道が噛みついてくる

歩く理由を見失うほど……


「諦めること」できたらいいのに

何でもかんでも引きずる悪い癖

泣きたい時も

迷惑かけたくないからむりして笑ってる


「優しいね」って笑いかけるみんなへ

「優しいね」って手を差し出すみんなへ……


誰にでもきっとあるだろう 消えてしまいたくなる時が

泣いた方が楽だっていうけど

何故だろう……涙が流せないの


ごめんね

僕はもう息が止まりそうだ

思い出にずっと首を絞められている

甘えたいのに甘え方を知らない

独り寂しく踊るピエロ


ごめんね

僕はもう足が止まりそうだ

傷だらけなのに気付かないフリしてきた

それでも尚 誰かの傷を気にして

傷んだ心が泣いてる…………

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─

昼飯も終わり、成川先生が皿洗いをしている側で、俺はようやく鳳凰と面と向かって話す機会を得た。

「……俺はアンタの能力で殺されたんじゃなかったのか?」

「自分の躰を確認してみたか?」

他人の家だというのに、鳳凰はとってもリラックスしている。

「火傷の跡とかあったか?」

「いや……ないけど」

「それが答えだ。緑のアグニは人を別の場所に飛ばす力を持つ。蛍火から『灰しか残らなかった』って話を聞いただろう?あれは俺のアグニで家に帰しているんだ。俺達みたいなよく分からん奴らに関わったっことが知られても、何のプラスにのならないからな」

驚愕した。

つまり、失格だった暗躍者がG・O・Hに来たという跡を残さないためなのか。

なら、何故そんなよく分からん組織のボスである鳳凰が、失格したはずの俺の家に来たのだろうか。

「なぁ……なんで失格だった俺の家に来たんだ?」

すると、鳳凰は不思議そうに言った。


「ん?何言ってるんだ。お前は合格だぞ」


「…………は?」

理解するのに数分かかった。

「あの時、失格って……」

「それはジョークだ」

「ジョーク!?」

「お前の精神は強い。それは二次暗躍しても性格がぶれてないことから確かだ。それに、面談で分かったが、君は自分が進むべき道が――暗躍者としての道が定まっている。他の人は、自分が置かれている立場が全く理解できていなかった。その場合は、他の組織を紹介している。G・O・Hは以前聞いたように、俺が気に入るかどうかが唯一の判断基準だ。俺の直感で決まるから、今まで面接で合格したのはお前だけだ」

現実味が全く湧かなかった。

鳳凰の言うことが本当なら、俺は本当に合格したらしい。

水崎や成川先生など、暗躍する前から様々な暗躍者と関わってきたおかげで、自然と覚悟がついていたのかもしれない。

暗躍者として生きていく覚悟が。

「だが、ひとつだけ言わせてもらおう」

突然、鳳凰の眼が凄みを増した。

「お前は面接の時、暗躍者は人間離れした存在だといったな?」

「……あぁ」

「よく肝に銘じておけ、少年」

ゾクリと

躰中の毛が逆立った気がした。

歪みを展開していないのに、鳳凰からは強烈な威圧感があった。


暗躍者だって人間だ


立ったわけでも、身を乗り出したわけでもない。

なのに、今の鳳凰からは凄みがあった。

まるで、子供に説教する父親のような。

知らない間に、躰が震えている。

鳳凰は、フッと威圧を消すと、俺の後ろの方に声をかけた。

「華麗、皿洗いは終わったか?」

「皿どころか、鍋まで綺麗に洗い終わったわよ」

成川先生が答えた。

「出かけようか、少年」

鳳凰が椅子にかけてあったコートを羽織る。


二次試験の始まりだ」

大っ嫌い!!」

叫び声が岸ノ巻中に響いた。


「喧嘩したって、本当?」

ここは、岸ノ荘 露樹梓の部屋。

その部屋の隅で、綾瀬たつきはひたすら沈み込んでいた。

そんなたつきを見ながら、露樹梓は大きくため息をついた。

「なんで結衣といいアンタといい、彼氏と何かあると私のところにくるかな……」

「だって……あず姉経験豊富そうだし……」

「私は隼人一筋だって、アンタ半年前に聞いたでしょ」

ジト目でのろけてくる辺り、さすがあず姉だなと思う。

「で、なんで喧嘩しちゃったわけ?」

「うん……」

たつきは暗い声で事情を話す。

まわりくどっかたけど、要するに――

「待ち時間に30分も遅れて来たから、それで口論になった……と」

「うん……」

「さっさと謝ってこいよ」

あず姉がバッサリと切り捨てる。

「ちょっと待って酷いよあず姉!!」

「わああちょっと待てズボン引っ張るな破れる!!」

瞬間、ちょっとした乱闘になる。

「だってついさっき喧嘩したばかりなんだよ!!そんなすぐに謝りに行ったらまるで私が軽い女みたいじゃん!!」

「そんなことで喧嘩するアンタが悪い」

「そんなバッサリしなくても!!」

「それに、アンタは早めに謝らないとヤバいんじゃない?」

うっと、たつきが口ごもる。

そうだ

今年の2月14日、たつき達の1周年を迎える。

そして、今日は2月13日。

あと、数時間しかない。

それに……

「……もう無理だよ」

ボソッと呟く。

彼氏は、2歳上の大学生。

同時に、たつきの父が経営する和風レストラン・燕ノ巣の常連でもあった。

通うには少しばかり値が張る燕ノ巣に何回も食べに来ている彼に、次第に惹かれていった。

高校に入って、初めて彼の年齢を知った。

卒業直前のバレンタインに、チョコと一緒に気持ちを伝えた。

大好きです」と。

彼は、その場で頷いてくれた。

それから、私達は付き合い始めた。

お父さんに知られたら、何が起きるか分からないため、彼が燕ノ巣に来たときは頑張って平静を装った。

その彼が、来年から岸ノ巻を離れる。

彼がかねてより希望していた海外のホームステイ先が、先週ようやく決まったのだ。

出国は3月に入ってからだが、諸々の準備が田舎でもある岸ノ巻では難しいため、早いうちに都会に住んでいる従兄弟の家に移るのだという。

それが、2月14日。

奇しくも、記念日と全く一緒だった。

出発してしまったら、何ヶ月もの間会うことができない。

だからこそ、前日である今日に最後のデートをする予定だったのだ。

それを、たつきが台無しにした……。

自分でも、最低な人間だと思う。

このまま関係が戻らなかったら……

このまま終わってしまったら……

そう考えるだけで、涙が溢れてくる。

泣きじゃくるたつきを、あず姉が優しく撫でてくれた。

少し泣くと、落ち着いてきた。

それでも、あず姉は撫でる手を止めなかった。

たつきも、されるままになっていた。

「変えるなら、未来しかない

あず姉がふと呟いた。

「え?」

驚いて顔を上げると、苦笑するあず姉の顔が見えた。

「って、隣の部屋のアイツなら言うんじゃないかってね」

そう言われて、たつきもその人物を思い出す。

半年前に岸ノ巻に引っ越した青年。

親友と付き合っている青年。

その2人は、確か――

「そうか……」

あず姉がウインクしてくる。

それを見て、つい笑ってしまう。

(ヒントが遠回しすぎるよ、あず姉)

涙を拭って、立ち上がる。

マフラーを巻いて支度を済ませ、あず姉に言う。

「ありがとう、あず姉」

「うんにゃ、何のことやら」

あず姉はチューハイを片手に、ワハハと笑っている。

たつきはバイバイと手を振ると、家までの帰路を急いだ。


岸ノ荘から燕ノ巣までは自転車でも結構かかる。

その距離を、たつきは必死に走ってきた。

2月だけあって、外は凍えるほどに寒いが、たつきは一切感じなかった。

「はあ……はあ……」

周囲から「あれー?たつきちゃんどうしたの?」っていう常連さんの挨拶を無視し、一目散に厨房へ。

「工藤くん、いるっ!?」

息を切らして入ってきたたつきを、コックたちが驚いて振り返る。

普段なら「このバカやろう!!厨房に入ってくんな!!」って、父の怒号が飛ぶところだが、今は自宅スペースで療養中だ。

おかげで、たつきは何も怖がる必要なく、厨房に駆け込むことができる。

そして、そのコックの中に――

「……綾瀬?」

工藤柊作

たつきが求めてる人がちゃんといた。

「ごめん、ちょっと借ります!」

「えっちょ!?」

幸い包丁を持っていなかった柊作の手を掴むと、再び全速力で駆けだした。

来たのは、家のキッチン。

母は今、店に出て、父はおそらく昼寝だろう。

聞くなら今しかない。

「工藤くん」

「……なに?」

たつきは今までにない位勢いよく頭を下げた。

「おいしいチョコの作り方、教えてください!!」

「…………はい?」


「もうすぐ……」

寒空の下で、たつきは呟いた。

立っているのは、岸ノ巻駅の前。

半年前、柊作とたつきの親友が出逢った場所でもある。

もうすぐ、彼がここにやってくる。

たつきの右手には手提げ袋。

中には、溢れるばかりの想いが詰まっている。

目を閉じて、伝えてい言葉を思い浮かべる。

(ごめんなさい。……そして)

遠くから、足音が聞こえた。

しかも、ゆっくりと近づいてきている。

きっと、目を開けば、視界に彼の姿が入るだろう。

だけど、たつきは目を開けない。

ギリギリまで、伝えたい言葉に気持ちを集中させる。

そして、ちゃんと目を見て伝えるんだ。

2月14日だからこそ、伝えられる言葉を。


大好きだよ」って。

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

鏡を見てみよう

歪んだ顔が睨んでる

輝く昼間に 夜はただ潜むだけ


変わらない陰の位置

ずれることもできないの?

「貴女がいない世界」がいい

欲望と恨みが混ざり合った

夢はすぐ側に 届かない距離で浮かんでる

掴めなくて堕ちて行ってそして……『いただきます』


生まれた時からもう決まっていたこととでも言うの?

綺麗な満月に当てられ鏡を割る


一番望んでいた色欲が手招いてる

「貴女がいない世界」がいい

手を伸ばせば叶う気がしたんだ

「昼が夜になる」甘い話に乗せられて

振り向けば鏡の中が笑う……『いただきます』


欲望が闇に消える――


真っ暗な部屋へ片割れの手を引いていく

変貌への渇望 先も知らず前払いを済ませた……


歪んだ鏡に映るものはいない

「貴女がいない世界」がいい

これが「私」の望んだ結果よ

消えた昼の「貴女」 息絶えた夜の「私」

そして全て終わった世界「誰が望んだの?」


――貴女がいない世界がいい――

月の光が射し込む部屋に響く…………『ごちそうさま』

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いかがでしたか?

今回は藍雨さんの小説「花言葉シリーズ」から、シクラメンを書かせていただきました


シクラメンの花言葉は嫉妬だそうですが、今回は嫉妬というワードを使わずに表現できるかに挑戦しました

上手く出ていたらいいですけど(^_^;)


あと、タイトルの咀嚼なんですが……

最近タイトルを考えるのがすこぶる苦手な蘇芳がひたすら知恵を絞ってた時、突然浮かんだのがこれでした(・_・;)

意外と内容と喧嘩していないし、小説の狂気感が出ているので、よかったです


また、藍雨さんがいいなら、他の小説も書かせてもらいたいです!

大分好き勝手に書いてますけど(^_^;)


藍雨さんお疲れ様でした!!

「へぇ、綺麗なキッチンだな」


世の中で、こんなにシュールな光景があるだろうか。

「少し、冷蔵庫の中身、使っていいか?」

「はぁ……」

さっき自分を殺したはずの男が、今は俺の家のキッチンで昼飯を作っているのだ

「夢か、これは……」

「なら、覚ましてあげましょうか?」

成川先生が笑顔で言った。

「遠慮します」

キッチンで鼻歌混じりにフライパンを動かす鳳凰を、俺は複雑な思いで見ていた。

俺は……確かに殺されたはずだ

あの巨大な食堂で、殺意がこもった眼を向けられて。

意識が飛ぶ直前の記憶が何故か無いが、それも手伝って痛みも感じなかった。

その男が、今、俺の目の前で俺のために昼飯を作ってくれている。

こいつは一体、何を考えているのだろう。

「なぁ……アンタ、俺を殺したはずだよね?」

「ん?何の話だ?」

鳳凰はこちらを見ずに鍋をかき混ぜている。

その態度が俺を苛立たせる。

「しらばtくれるな!俺は確かにアンタに燃やされたんだ!あの大きな食堂で緑の火の玉で――あつっ」

鳳凰がさっきまで鍋をかき混ぜていたおたまを、俺の唇に押し付けてきた。

火傷するような熱さだ。

「食事の前にそんな物騒な話をするものじゃない。もうすぐ出来上がるから、座って待っていなさい」

有無を言わさぬ口調に、俺は従うしかなかった。


20分後

「少年、君に家族は?」

「…………みんな死んだ」

「何!?そうか……悪いことを聞いた。じゃあ、自分で料理とかするのか?」

「……まぁ、それなりに」

「彼の作るから揚げは絶品よ」

「本当か!?いやぁ、ぜひ食べてみたいなぁ!」

「…………」

何だ、この会話?

何だ、この状況?

眼の前にはおいしそうな和食。

そして、ニコニコと喋りながら食べる成川先生と鳳凰。

「ほら、早く食べてしまいなさい!冷めてしまうよ」

「……はい」

ここ、俺の家だよな?

あまりに場違いな気がして、自分の家なのに肩身が狭く感じる。

そういえば、こんな談笑する食事をずっとしていなかった。

明日花や竜太、水崎との食べるときでも、どこか淡々としていた。

今は、まるで家族のように…………

顔が紅くなるのを感じ、ごまかすために俺は料理に飛びついた。

料理は、どれも美味しかった。

6人が新境地


どーも新境地バトンです
1~6にキャラクター名をどうぞ

1→金
2→鳳凰
3→銀
4→水崎
5→蛍火
6→リン

キャラクター同士の会話や、想像した感想を書いてください。
もちろん描いても問題ないです








・(3銀)が石に躓いて転んだのを、目撃した(4水崎)
→銀「…………!」

水崎「危ない!!」


ゴンッ



銀「…………痛い」

水崎「あ……ごめん(間違えて手振っちゃった……。壁作っちゃった)」



・(5蛍火)の頭をポンポンする(2鳳凰)
→鳳凰「お前も随分と大きくなったな」

蛍火「あぁ?背格好は変わんねえだろ。鳳凰と出会うのそんなに前じゃないんだし」

鳳凰「そうじゃない、心が成長したんだ」

蛍火「……そうかよ」

鳳凰「強くなったな―お前」よしよし

蛍火「だあっ!?鳳凰てめぇ何しやがる!!」

鳳凰「可愛い息子を愛でて何が悪いんだ!」ハアハア

蛍火「うっさいわ!!


・(1金)(3銀)(6リン)で闇鍋
→金「おいしそうだねー♪」

銀「…………」

リン「あれ?明らかにヤバいの入ってない?あの詞色い物体は?」

金「きな粉もちだよ!」

リン「きな粉!?

金「お兄ちゃん頑張ってー!」

銀「…………」(席を立つ)

リン「……え?俺一人?」


・(1金)「良いではないか良いではないか」
(3銀)「あーれー」
(4水崎)の反応は?
→水崎「2人とも仲いいんだね」

金「ぶー!違うよお姉ちゃん!これはたたかいなの!わたしがこの人をやっつけるの!」

水崎「そうなんだ?じゃあ頑張って勝たないと!」

銀「…………」




・(2鳳凰)の声が小安または釘宮
→子安さんならともかく、釘宮さんは……合わな過ぎる


・(4水崎)の声が小野坂または安元
まず水崎女だし!!


・(5蛍火)の声が緑川または置鮎
→こいつそんなに若々しくないぞ?




・(1金)がツンデレ
→水崎「金ちゃん、朝ごはんできたよー」

金「いらない!」

水崎「え?どうして?」

蛍火「食べねぇと大きくなれねぇぞ」

金「いらないもん!」プイッ

水崎「……蛍火さん、どうしましょう」

蛍火「うーん、どうっすかなー」

金「…………でも」

水崎/蛍火「「え?」」

金「2人が……あ、あーんしてくれるのなら……食べてあげてもいい、かな」上目使い


水崎/蛍火「「ズッキューーーーーーーーーーーーーン!!!!」」


・(2鳳凰)がデレデレ
→鳳凰「なぁ蛍火」

蛍火「んだよ」

鳳凰「デレてもいいか」キリッ

蛍火「それは許可求めるものじゃねぇし今度俺に言ったら眉間を撃ち抜く!!」

鳳凰「冗談だ」


・(3銀)がクールデレ
→銀「…………構って」

リン「……うん、普段と変わらなさすぎて何も感じない」


・(4水崎)鬼畜
→リン「水崎っていつも水筒持ち歩いてるけど、何が入ってるんだ?」

水崎「えっ?これ公園の水だよ。お金かからないし、たくさん手に入るから。料理する時もペットボトルに一杯に水を入れておいたりしてるし、あとは……」

リン「……水崎、それはよくないぞ。あれは本当は雑菌が入ってるんだ。だから、よっぽどのことがない限り飲まない方がいい。それと、実は公園の水にはお金がかかあっていて……」

水崎「ご、ごめんなさい・・・・・・(全部冗談なのに~!)」



・(5蛍火)ヤンデレ
→蛍火「おい鳳凰」

鳳凰「ん?」

蛍火「(銃を自分に向けて)これ以上家族を増やすんじゃねぇ!!俺がお前と過ごす時間がもっと短くなっちまうだろうが!!それでもまだ家族を増やそうってんなら、俺は……俺は――!!」

鳳凰「……そうか」(銃を取り上げる)

蛍火「へ?」

鳳凰「(銃を自分に向けて)お前がそんなに寂しい思いをしていたなんて、それに気付けなかった俺は親失格だ。責任を取って、俺が…………」

蛍火「わあああああああごめん冗談だから頼む止めろ止めてくれーーーーーーーーー!!!!



・(6リン)ただの変態
→リン「水崎」

水崎「うん?」

リン「水崎のスリーサイズ教えて」

水崎「!!!!!!!?Σ(゚д゚;)」

リン(水崎一人暮らしであまり服を買うお金がないって言ってたし、普段守ってもらってるからな。何かお礼したいし、服でも作ってみようかな……)

水崎「⁻~~~~~~~~~!!!!!」

リン「で、水崎スリーサイズは……」

水崎「…………くんの」

リン「え?」

水崎「黒川くんのエッチ―――――――――――!!!!」


ガツーン


・(5蛍火)が山へ芝刈り、(3銀)が川へ洗濯に行く。
すると川から(6リン)が流れてくる
(3銀)が家に持ち帰り(6リン)を割ると、中から(2鳳凰)が出てきた
→銀「…………さて」

リン「さてって何!?待ってなんか無表情の中にも別の楽しげな感情が見えるんだけど!?」

銀「…………気のせい」

リン「ちょっと待って!!――」

ブンッ

鳳凰「それは幻影だぞ」

銀「…………知ってなかったら割ってない」




・(2鳳凰)は鬼退治するため(1金)(4水崎)(6リン)を仲間にした
→鳳凰「俺が鬼退治?」

銀「…………」コクッ

鳳凰「よし、じゃあ鬼退治に向かうぞ。行きたい奴は名乗り出ろー」

金「はいっ!」

水崎「はい!」

鳳凰「あとは少年だな。命を助けた恩もあるんだ素直に従え」

リン「まず桃の代わりに俺って段階でおかしいからな!?」

銀「…………そこは触れちゃいけない」


・鬼ヶ島に辿り着いた4人。なんと鬼は山へ芝刈りへ行った(5蛍火)だった
→『まもなく、終点・鬼ヶ島ー』

リン「電車かよ……」

鳳凰「さーて着いたぞ。……あ」

蛍火「んだぁ?客人か?……あ」

金/水崎/リン「「「…………」」」

蛍火「お、お前ら何できやがった!?俺の秘密基地がなんでバレ……」

鳳凰「お前鬼の大将似合うなぁ!」

リン「うんうん」

水崎「写真撮ってもいいですか?」

金「わぁーごちそうだぁー!」

蛍火「お前らちったぁ話聞けよ!!



・4対1という何とも卑怯な戦いで鬼(5蛍火)を倒した4人。奪った宝箱を開けると、中には(3銀)が入っていた。
→鳳凰「思ったより簡単だったな」

金「うん」

水崎「そう・・・・・・ですね」

蛍火「当たり前だ!!てめぇらバカじゃねえの!?なんで4人全員歪み解放してもろに能力使ってくるんだよ!!」

鳳凰「この小説がそういう話だから」

蛍火「クーデター起こしてやりてぇぜ……!」

水崎「ところで黒川くん、何か見つかったー?…………え」

リン「何故かいたんだけど……」

銀「…………どうも」

鳳凰「ラスボスか……」

リン「え?」

水崎「黒川くんひどい・・・・・・私達みんなを騙してたのね」

蛍火「救いようのねぇ悪だな」

リン「え?え?」

鳳凰「みんな、最終決戦だ!!」

金「いくぞー!食らえ魔王ー!!」

リン「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!??



・(2鳳凰)さん、回す人をどうぞ
→鳳凰「くっ……今魔王との未来をかけた決戦の最中だというのに……!!やりたいやつは持っていけ!以上だ!いくぞ魔王!!姫は返してもらうぞおおおおおおお!!!!」

リン「てかキャラブレすぎだよ鳳凰!!」


とりあえず、楽しかったんだね分かります♪



お疲れ様でした

「さぁ、新しい家族ですよ」

孤児院のおばさんがニコニコと言った。

「幸せになってちょうだいね」

だけど、その眼にヒラリと一瞬よぎったものを、俺は見逃さなかった。


少年0021


それは、名前のない俺に対する、侮蔑だった。


俺は、物心つく前に親に捨てられた。

生まれてすぐに孤児院の前に置かれていたらしい。

だが、とりたててニュースになることもなかった。

この国の財政は厳しく、市民はとても貧しかった。

おかげで、たとえ子宝に恵まれたとしても、大半が捨ててしまう。

捨てられる場所がほぼ全て孤児院の前というのは、子供へのせめてもの情だろうか。

おかげで、孤児院の前は子供が巣食う場所とまで言われている。

そのせいで、子供が新しく捨てられようと、国民は今更気にもとめない。

富裕層の人間はそんな子供を憐れに思い、捨てた親を嘲笑う。

貧困層の人間は、同情しながらも、どうしようもない状況に絶望して目を逸らす。

これが、この国の現状だった。


さて、そんな孤児院の厄介となった子供たちの中でも、差別は受ける。

年功や、先に孤児院にいた先輩といった生易しいものではない。

名前があるかどうか

それが最も重要だった。

例えどれだけ先に生まれても、孤児院にいても、名前がないだけで一瞬で子供たちの不要なカースト制度の底辺に突き落とされる。

名前は、捨てられた時に親がその子供の名前、もしくは名前の代わりに成りうるものを持たせているかどうかで決まる。

捨てられて何もない子供たちにとって、名前こそが唯一のアドバンテージだった。

それはつまり、捨てられても尚、親に愛されていたになるのだから。

だから、たとえ富裕層の子供が名前を持たない状態で捨てられた場合、貧困層の名前を持った子供の上にはどうやっても登ることができない。

後で名前が発覚したとしても、それはジャンケンと一緒で後出し扱い。

階級が上がるどころか、名前がない頃よりも何倍も酷い待遇がまっている。

そんな、ある意味外の世界よりも切迫した孤児院の中で、俺は名前のない0021として育てられた。

名前はおろか、自分の出生に関するものは一切持っていなかった。

例に漏れず、俺はカーストの最底辺として12年間を過ごした。

このまま特に幸せを感じることなく、使い捨てとして戦争の斥候兵に起用され、独りで死んでいくんだろうな……

なんて、考えていた矢先だった。


「初めまして」

俺を訪ねに、若い2人組の女性が孤児院にやってきた。

1人が俺の手を握り、にっこりと微笑んだ。

私達が、あなたを産んであげる

勿論、何を言っているか分からなかった。

こうやって、孤児院の子供を訪ねに、大人が姿を見せる理由はひとつしかない。

使えそうな兵士を探しに来たからだ

実際、俺の前に何人も大人に手を引かれて孤児院を去り、その後行方不明になった子供は大勢いる。

大人による外への誘いは、地獄の門をくぐるに等しかった。

それを分かっていたからこそ、名前を持つ子供たちは俺を指さして笑い、同じように名前のない友達は顔を伏せながら「おめでとう」と、絞り出すように呟くだけだった。

孤児院の年寄り達が急に優しくなるのも、むしろ恐怖をあおるだけだった。

そして、今日俺は2人の女性に連れられて、12年間の孤児院生活から卒業した。


「わぁ…………」

車と呼ばれるものの中から、外の世界を初めて見る。

空を穿つほどの巨大なビル群が俺を見下ろしている。

俺達が乗っている車の横を、色んな大きさの車が追い抜いて行く。

歩道を歩いている人たちも、綺麗な服に身を包んでいる。

「外の世界は気に入った?」

女性の1人が聞いてきた。

俺は興奮して何度も首を振った。

女性がおかしそうに笑う。

仕草のひとつひとつがとても上品だった。

「…………」

もう1人の女性は何も喋らず、ただ俺と同じように外の景色を眺めている。

ただ、時折こっちを見つめてきて、目が合うとニッコリ笑う。

とても不思議な空間だった。

とりあえず、今すぐ兵役につかされる心配はなさそうで安心した。


やがて、車は町はずれの古びた洋館の前で止まった。

俺と女性2人を置いて、車は走り去っていく。

「…………」

俺はその洋館をゆっくり見上げた。

敷地もとても広く、洋館自体も孤児院の倍の大きさを誇っていた。

「ようこそ、新しい家へ」

女性の1人が笑いながら玄関を開けた。

「自己紹介したいところだけど、私達には名前がないんだ

お揃いだねと笑いながら、女性はサラリと言った。


「今日からここが、あなたの家だよ」


新年、明けましておめでとうございます

年末に髪を染めました銀城蘇芳です。


2015年になりましたね~


…………

はい←


さて、本日1月1日をもって、このブログを初めて3年目になります(≧▽≦)

ここ最近全く更新できてませんが、地味に3年やってます(^_^;)


最近は本当に小説や詞ばかりになっていますが、理由は単純にブログのためにキーボード叩くのが面倒くさいんです←

作品やブログネタなら構わないんですけどね……

不思議なものです


ということで、今年一年またよろしくお願いします



銀城蘇芳

「乾杯!!」

あちこちで、グラスがぶつかり合う音がする。


ここは、小さな居酒屋。

中には大勢のサラリーマン。

みんな、12/31の22時まで働いた人たちである。

ようやく仕事が終わり、部署のまんなで忘年会をすることになった。

磯崎拓真もそのひとりだ。

彼は企業の開発部に所属している。

新製品の開発が間近に迫った中での追い込みが終わり、ほっとしている。

なにせ、今回の企画の発案は磯崎なのだから。

今は、隅によって同級生の同僚2人と飲んでいる。

「しかし、無事に終わってよかったですね」

同僚の一人が言った。

「今のうちに安心しておこうぜ。何せ、年明けてすぐに新しいプロジェクトが始まるんだから」

磯崎がそう言うと、飲んでいた2人がげんなりした。

無理もない。今回は、その同僚が中心になって動かすのだから。

そして、つまみを食べながら、今年あったことをたわいもなく話していた。


やがて、もうすぐ時計の針が12を指す頃になり、やっと解散になる。

他の2人と違い、38にもなって未だに独身の磯崎はそのまま小さなアパートに帰る。

(今年ももう終わりか……)

ぼんやりと空を見ながらそんなことを思う。

思えば、絶対にビックになってやると決めて、なりふり構わずに東京に出てきて、もう20年になる。

あのころに比べて、ビックになったのは脳筋位だろうか。

そう考えると、ちょっと悲しくなる。

例年通りに近くのコンビニによって年越しそばを買い、部屋に入る。

お湯をいれ、テレビを見ながら、独り寂しくそばをすする。

そうしてテレビでカウントダウンをしている頃、遠くで、除夜の鐘が鳴り響いた。

新年の始まりである。

結局、いつも通りの年越しをした。

(まぁ、今年も何事もなく、ほどほどに幸せになれればいいさ)


鐘の音を聴きながら、磯崎はそっと笑った。

今年もいい年になりますようにと――