栃木県の宇都宮に出かけておりました。
見逃してしまった展覧会が宇都宮に巡回してきたなあと思っておりましたら、
ちょうど同じタイミングで「これは見たいかも…」という企画展が
宇都宮の美術館・博物館で開催されることが分かり、出かけてみるかと思った次第。
そんな中のひとつが栃木県立美術館でして、
高橋由一 の特別展示があるということだったのですね。
宇都宮駅からレンタサイクル(1日100円!)で走ることしばし。
どこもそうかもですが、美術館の建物にはなかなか力が入っているといいいますか。
そして、高橋由一以外には特段の思いも無かったにも関わらず、
この予想がいい意味で裏切られることになるのは館内を廻ってみた後のお話。
とはいえ、訪ねたときに開催中の企画展は
「ゆく河の流れ-美術と旅と物語」というものでありました。
ところで、「ゆく河の流れ」とは何やら聞き覚えが…と思われる方がおいでかと思いますが、
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
鴨長明の「方丈記 」の語り起こしの部分でありますね。
今年2012年は方丈記が書かれたとされる年(1212年)から800周年ということで、
これに気付いた栃木県立美術館の学芸員さんがきっと腕まくりして作り上げた企画展なのでしょう。
(開館40周年でもあるとなれば、なおのことですかね)
しかしまあ、のっけの「ごあいさつ」に鴨長明云々とあるからといって、油断をするとさあ大変。
何しろ鴨長明、方丈記に関わるキーワードを拾い出し、そのキーワードをもとにして
展示作品を選びだしたと思われる構成をとっているという。
つまり、単に展示作品を通りすがるように見ていったとすれば、
「いったい『方丈記』と何のつながりがあるの?」と思えてしまいそうなくらい。
キーワードから拾い出す展示作品自体も、「自由なだぁ~、この選択!」というより
もしかすると「無茶してない?」と思えたりも。
ただ、ここですごいことだと感心しましたのは、
多くが同館の所蔵品でもって作り上げられているということなんですね。
ともすると有名作家の作品にばかり目を向けてしまいがち(自戒も込めて)な傾向がありましょうけれど、
今回のようなテーマに貫かれた展示であれば、関わる点を見出さんがためにも
知らない作家の作品だろうとやっぱり見てしまいますものねえ。
郷土の作家作品の収集・紹介は県立美術館の使命でもありましょうから、
「あまり知らないけど栃木県生まれの画家なのね」という方々の展示も多々ありますが、
関わりの中で見ていくと、例えば清水登之、古田土雅堂らの作品はもっと見てみたくなります。
ちなみに、郷土の作家という点では高橋由一も今の栃木県に含まれる佐野藩の藩士だそうで。
(江戸の藩邸生まれと聞いてしまうと、いささか微妙な気も…)
と、栃木県生まれの作家に俄か興味が生じたとしても、
「そればかりでは…」と思ってしまうのも詮無いことでありまして、そうした場合にどうかと言いますと、
かなりしっかり見せてくれますですよ。
むしろ、同館の所蔵品を語るということにして、コレクション展の方に目を向けてしまいますが、
何より瞠目すべき作品はターナー の「風景・タンバリンをもつ女」(1840-50年頃)です!
この光に満ち溢れ、朧に霞む風景を前にしては、
いささか誇張めくものの、それこそ何時間でも見ていられる作品ではないかと。
クロード・ロラン の歴史画の体を借りた風景画よろしく、
左側の人物たちはぼんやりした添え物ふうですけれど、
女性の打ち鳴らすタンバリンに、今にも踊りだしそうな子供の姿を捉えて、
これはこれで実に微笑ましいのですよ。
ターナーを中央に左右にコンスタブル とゲインズボロ を従えたコーナー、
栃木県立美術館の中でも至高の一画ではないでしょうかね。
そればかりではありませんですよ。
小杉放菴の洋画に日本画、コロー も見られるし、ポップ・アート の類まで。
当初の目的であった高橋由一の特別展示そっちのけになってますが、
思いのほか「持ってるねえ、栃木県立美術館」と思ってしまったものですから、
「コレクション展の展示替えは何度もあるんですか」と聞いてみますと、企画展の度ごとにとのこと。
毎度毎度は行けないですが、ちょっと気にかけてみたいなとは思ってしまったのでありました。


























