トゥルク行きフェリー


バルト海 というところは、それにしても静かな海でありますねえ。

外洋から大波やうねりはデンマークとスウェーデンの間の海峡でせき止められるせいか、

まるで湖のようです。

この分なら船旅に付き物の「揺れてる感」を引き摺るようなことは全くないなと思いつつ、
到着間際の時間にもう一度デッキに上がって見たのですね。


ほどなくトゥルク到着

いい天気です。
ストックホルムでもウプサラ でも結構雨に煩わされたので、こりゃあ幸先いいなと思ったのですよ。
(実は、ヘルシンキでまた降られますが…)


トゥルク(Turku)という街は、もしかしていちばんスウェーデンに近いのではないかと。
地続きのところは距離的に隣合わせというのもありましょうけれど、人の行き来の感覚の点でです。


実際、フィンランドがスウェーデンの統治下にあったときには、
オーボ(Åbo)と言われたこのトゥルクの街こそがフィンランド側の首都のようなものであったとか。
今でも、トゥルクを含めた沿岸あたりにはスウェーデン系フィンランド人が多いようですし。


ということで、スウェーデンから移動してまずトゥルクに立ち寄るというのは、
歴史的にも理に適ったことであるなぁと思ったりしながら、フェリー・ターミナルから外へ。
フィンランドに上陸であります。


トゥルクのヴァイキング・ターミナル


この日はトゥルクとナーンタリをささっと巡って

夕刻にはヘルシンキへ向かう列車に乗ろうと考えてましたので、
フェリー・ターミナルからまず一番に目指したのは鉄道の駅。
荷物をコイン・ロッカーに放り込んでいざ参らんというわけです。


フェリー・ターミナルには隣接して鉄道駅もあるのですけれど、
ターミナル前のホテルを回り込むとバスが停まってましたので

「駅へ行くか」という問いに頷かれたものですから、
取りあえずバスに乗り込んだのですね。


ところが、前にストックホルムのバスは使い勝手が良いと言いましたけれど、
それとは正反対にバスはどんどん進んでいけども、一向に何のアナウンスもなければ、
車内に次のバス停を案内する表示もない。


だもんで、船の中で入手しておいたトゥルクの市街図を片手に車窓の景色と見比べながら、
走っているあたりを特定することにしたわけです。
(ちなみに日本のガイドブックでトゥルクの地図は載ってても本当に小さい…)


やがて街中の賑やかな一角に出たなと思えば、これがマーケット広場だなと分かり、
ほどなく駅だと思ったところがですね、どうも走る方向は駅から離れていくのですね。
街中のごちゃっとしたところから広い道に出ると、

地図で見る限りその道はどんどん駅から離れていくとしか思えない。


ドライバーは「駅にいくか」の問いに頷いたわけですから

、トゥルク駅でない駅がこの先にあるのかもしれませんが、
後々のことを考えたら絶対的にトゥルク駅でなくては具合が悪い。


そこで手にした地図で見る限り、ここで降りねば取り返しが付かなくなりそうというところで
意を決して下車に及んだのでありました。


ちょうど鉄道の線路が見えているところでしたので、地図に照らして駅の方角と思しき方へ歩く歩く。
結果的に何とかたどりつくことができましたけれど、おそらくフェリー・ターミナルから駅へ行くためには
素直に鉄道を待つか、でなければバス・ターミナルにもなっているマーケット広場で乗り換えるというのが正解なんでしょう。


トゥルク駅


とにもかくにも駅に着いたので、ひと安心。
予定どおりに荷物をコイン・ロッカーに預け、コーヒーとサンドイッチで軽く朝食を取り、
列車の切符は何時の列車に乗るか決めていないので後から買うことにして、

いざ改めてトゥルクの街へ。


地図によれば駅から数ブロック先にさきほどのバスが寄ったマーケット広場があるのですけれど、
単純に考えれば一番賑やかな場所から直線で進めば駅に出られるのに

なぜバスがそういう経路を通らないのか。


歩いてみてよおくわかりました。

駅とマーケット広場の間、その数ブロックの昼間に

やおらこんもりと丘が立ちはだかっているではありませんか。


うんしょうんしょと登っていくと、丘のてっぺんにはなかなか立派な建物が。
果たしてこれがトゥルク美術館であったのですが、

開館時刻はまだまだ先なので後から寄ることにして、
こんどはマーケット広場めがけて下って行ったのですね。


マーケット広場に向けて


トゥルクでいちばん賑やかな場所…だと思うんですが、
ストックホルム といわずウプサラと比べても「う~ん、垢抜けないなぁ」と。

それが「フィンランドらしい」のでもありましょうけれど。


トゥルクのマーケット広場①



でも、これがきっとフィンランドなんだろうなあと、

回りを見てスウェーデン語以上にとっつきようのないフィンランドの表示に

囲まれながら思ったのでありますよ。


トゥルクのマーケット広場②

おっと、これもちなみにですが、マーケット広場はフィンランド語で「Kauppatori」。

広場に相当するのが「tori」ですけれど、スウェーデン語の広場は「torg」でして、

いずれも発音的には「トリ(トーリ)」てな感じ。


言語的にフィンランド語(フィン語というべきなのか)とスウェーデン語は全く近くないのですから、

(縁もゆかりもなく、音的に近い言葉ってのがあっても不思議はないものの)

想像するに「tori」は「torg」からの音の借用なんではなかろうかと。

こう考えると、やっぱりスウェーデン統治600年の歴史はあるなぁ…と思うところでありますよ。