…ということで、ちょこっと出向いたわりにはあれこれ川越のことを書いておりますけれど、
そもそも川越に行こうと思い立ったのは川越市立美術館で開催中の
「ミロ 色踊る版画」展を見に行くためなのでありました。
ジョアン・ミロ
の作品展はここに記事を書き始めてからも何度か見ているのですけれど、
そうした数あるミロ展の中でも実に楽しい展覧会であったなと思うのですね。
楽しいと言って特別なアトラクションが用意されているわけでもありませけれど、
とにかく見ていて楽しい作品が集められた印象なのでありますよ。
傾向的には「いつものミロ」でありまして、ポップな色遣いとデザインといったふう。
されど、ままある展覧会では「硬軟取り混ぜて」ということでもないのでしょうけれど、
あくまで明るく楽しげにという画面ばかりでは済まないものでありましょう。
もちろん、ミロの作品が明るく楽しげなものばかりではありませんから「むべなるかな」ですが、
時には今回のように割り切って、陽の方に思い切り比重が置かれてもいいのかなと思ったりするわけです。
とはいえ、そのような雰囲気がありますとですね、
「何が描かれているのか」と分かろうとすると「わけ分からんなぁ」と思ってしまいそうになるところを
じぃっと見てみて勝手に絵解きをしてみるようなこともまた実に面白いものだったりするのですよ。
例えばこの「黄昏のセント・ジェームズ公園」なる一枚は、
妙に具体的に風景画風のタイトルが付いておりますけれど、
一見して「黄昏どきのセント・ジェームズ公園ね。いかにも、それらしいね」
なんつうことはちいとも思えないですよね。
ですが、見ているほどに「なるほどねえ」と思えてきたり、否ひとり合点できてきたりするのですね。
「お、いちばん星でてるじゃん」とか、
「街の灯も点り出したね、やっぱり都会らしくブルーライト だね」とか、
(勝手にロンドンのセント・ジェームズ・パークを思い出してますが)
「そういえば、夕間暮れの人影はやっぱりぼんやりしてくるものだぁね」とか。
そしてまたこちらの「反逆者」という一枚も、不穏なタイトルなわりには「色踊る版画だな」と。
反逆者らしく右腕を振り上げながらシュプレヒコールでも挙げているでしょうか。
その反対側で左手の方は「小さくガッツポーズ!」が可愛らしくもありますが、
眼は真赤で、顔つきは青くなったりピンクになったりいきり立っているようですし、
頭の周囲にもいろんな激情がスパークしとりますねえ。
という具合に、ひとしきりミロ展でもって想像力を逞しくした後、
ついでのように常設展示室、そして相原求一朗記念室とやらを覗いてみたのですね。
そして、この相原記念室の方で思いも寄らず「ぐお!」という盛り上がりを得たのでありますよ。
浅学にして相原求一朗さんという画家のことは全く知らなかったんですが、
荒涼とした大地を描いて、あたかもワイエス
を思わせる画面からは
自然の厳しさと同時に、そこではその風景を目の当たりにする自分しか存在しない
何ものの気配もない孤立した世界を思ってしまうのですね。
これには思わず見入ってしまいました。
以前「美術館はやっぱり所蔵作品展で勝負しなくては」みたいなことを書いておきながらなんですが、
ついつい常設展示のコーナーは「ついで感覚」でもって臨んでしまうところながら、
思わぬところでこうした波長の一致を体感することもありましょうから、
「侮ってはならぬなぁ」と思うのでありました。
川越生まれの相原さんは「ゆかりの作家」ということで市立美術館に展示されているのでしょうけれど、
相原求一朗美術館というのはどうやら北海道の帯広あたりにあるらしいのですね。
こりゃ、一度行かねばなぁと思いますねえ。


