以前に比べると、女性作家の本を読むことが多くなったなあと思っていたのですね。

前はとんと手にとることが無かったのですけれど、遡ってみると、角田光代 さんでしょ、

桐野夏生 さんでしょ、篠田節子 さんでしょ、唯川恵 さんでしょ、乾くるみ さんでしょ、

中島京子 さんでしょ…とまあ、あれこれ読んでいるなあという印象なのですね。


で「まただよ」と思いながら、読み終えた三崎亜記さんの「廃墟建築士」。

三崎さんの作品は、「となり町戦争」、「失われた町」と結構楽しみに読んでいたこともあり、

「はて、どんな人なのかいね?」と初めてネット検索してみて、

「どひゃー、男の人だったのねえ?!」とお恥ずかしい次第。

まあ、聞くはいっときの恥と言うわけですなぁ…


三崎亜記「廃墟建築士」

でもって、この「廃墟建築士」ですけれど、

これまた特段の予備知識を持たずに読み始めたんですが、

いずれもが「建物」に関係した内容のお話の、4つの中編が収まった一冊でありました。


とはいえ、4編ともになかなか毛色の異なる物語。

最初の「七階闘争」は、シュール。

続く「廃墟建築士」はデカダン、次の「図書館」は伝奇的、

そして最後の「蔵守」は「図書館」とおもて裏の対をなす雰囲気も醸しつつ、心理ドラマめいてもいます。


つかみとしての「七階闘争」は読み手の読書推進力を一気にシフトアップさせるものがありますね。

どうやら近頃、市内の犯罪は建物の7階で起こっていることから、

「7階を排除してしまえば、犯罪は減少するはず」という前提で進められる7階住民排除活動に

即座に「なるほど」と思える人はあまりいないのでは。


ミステリのように(まやかしでも何でも)合理的っぽい結果が提示されるわけでもなく、

またSFのようにこむずかしい理屈でねじ伏せられてしまうわけでもなく、

「終わりがこうくるか!」というものではありますけれど、読後感が悪いわけではないのですね。

まあ、これが三崎ワールドなのでありましょう。


表題作「廃墟建築士」のことは、先に「デカダン」と言いましたけれど、

そんなことあるわけないと思いつつも、「芸術」みたいなものが極まったところには

「あるかもねえ…」と思えてくるという。

工場萌え 」の親戚筋みたいなところに、廃墟を愛でる人たちの存在がすでにあるわけですから。


とにもかくにも、着想ですね。

次の「図書館」にしたって、夜間開館するにあたって調教師が必要ってどういうことよ?と。

動物園じゃあるまいし…ところが、動物園のようなのですからねえ。


とっつき日常的なところに、やおら非日常を持ち込む際の着想。

それが読ませる源ですよね。

ちょっとスティーヴン・ミルハウザーの「ナイフ投げ師」 を思い出したりもするところなのですね。

遅読なタイプのわりには、一気読みした一冊でありました。