ロックフェラーとスワミ・ヴィヴェーカナンダ | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

 ”マダム・カルヴェは彼女の友人であるマダム・ポール・ヴェーディアーにスワーミージーとアメリカの億万長者ジョン・D・ロックフェラーとの次のような出会いを説明した。

 マダム・ヴェーディアーのメモによると、ロックフェラー氏は友だちからスワーミージーのことは聞いていた。彼らは彼をこの並外れたインドの僧に会わせたいと思ったが、彼は何かと口実を見つけてそれをことわっていた。彼は非常に意志の強い性格で、彼の決意を変えさせることは誰にもできなかった。しかしある日、ロックフェラーは衝動的にスワーミージーが滞在していたシカゴの友だちの家に行った。ドアを開けた執事を無視して、彼はヒンドゥの僧に会うことを要求した。

 執事は彼を居間へ案内したが、到来を告げるのを待たずにロックフェラーは隣にあるスワーミージーの書斎に入った。彼は誰が入って来たのか見るために視線を上げることさえしないで書き物机の前に座っているスワーミージーを見て、非常に驚いた。カルヴェの話によると、しばらくしてスワーミージーはロックフェラーに、本人しか知らない彼の過去について多くのことを話し、彼が今までに集めてきた金は彼のものではないこと、彼は単なるチャネルであって彼の義務は世の中に善を為すこと、人々を助けるというチャンスを持つために神が富を与えたのだということを彼に理解させた。ロックフェラーはこのように大胆な口をきかれてイライラした。彼はいらだって挨拶もせずに部屋を出た。しかし一週間ほど過ぎたころ、彼は予告なしにスワーミージーの部屋に来た。そして彼がこの前と同じように座っているのを見て、公共施設に資金を融資するために巨額の金を寄付するという計画を書いた紙をスワーミージーの机の上に投げつけた。

 彼は「さあ、どうぞ。あなたは今満足しているに違いない、あなたは私にこのことで感謝すべきでしょう!」と言った。スワーミージーは目を上げることすらせず、動かなかった。それからその紙をとって静かに読み「私に感謝するのはあなたです」と言った。

 これが公共の福祉のために行ったロックフェラーの最初の寄付だった。後に彼は慈善事業の分野で広く知られるようになった。”

 

         (「ヴィヴェーカーナンダの物語」日本ヴェーダーンタ協会より)

 

 “チャンドギャ・ウパニシャッドは次のように言っている。

 「限られた利益をめざす生活では、至福は得られない。幾百万の人々に仕えるために、無限者のために、生きたときにはじめて、至福は得られる」

 アメリカ人の富豪ロックフェラーがヴィヴェーカーナンダに会いに来たとき、スワミは「あなたが蓄えた富はすべて、あなたのものではなく、神のものである。あなたは神の通路にすぎない。あなたがさまざまなところで苦しんでいる神の子どもたちを助けることができるように、神があなたにその富を下さったのである」と言った。それから七日以内に、ロックフェラーは最初の莫大な寄付を計画し、その計画をヴィヴェーカーナンダのもとにたずさえてきた。後年、ロックフェラーは次のように告白している。「人生には金をためるよりももっと多くの大事なことがある。お金は人の手に委託されたものにすぎない。それを不適切に使用することは大きな罪である。死に対する最善の準備は、他者のために生きることである。それだから私は、そのように努めているのだ」。私たちはヴィヴェーカーナンダの言葉がロックフェラーに霊感を与えたと考える。「文明とは人間の内なる神性の顕現である」と、ヴィヴェーカーナンダはハーヴァード大学で講演した。「最高の真理が実践されるようになった社会が最も文明化された社会である」とヴィヴェーカーナンダは言った。すべての仕事の目的は他者の内なる神に奉仕することによって自分の内なる神を引き出すことである。

 ヴィヴェーカーナンダは経営であれ、管理であれ、最も卑しい仕事であれ、すべて仕事は、霊化され、人の内につねにやどる神への礼拝、というレベルにまで高められねばならない、と主張している。「将来、商人の実務能力が、行政者の行政能力、労働者の仕事への献身、および信仰者の霊的な生活理念と結合された、新しい社会が現われるであろう」と思い描いた最初の人は彼である。東洋においても西洋においても、最近まで、雇用者の利益のために労働者階級を搾取することとみられていた企業が、今や次第に、労働のための新しい科学と倫理にむすびつけられはじめている。長い間、物質的な繁栄をもたらすことだけに成功してきたこれまでの経営術は、実践的ヴェーダーンタ、すなわちあらゆるものの内なる真の自己を見、それに奉仕するというインドの精神を学ぶことによって、物質的な繁栄をもたらすことだけでなく、グループのメンバーたちに確実に、霊的満足と、働くことへの喜びを与えるであろう。”

 

(日本ヴェーダーンタ協会発行「不滅の言葉」スワミ・ヴィヴェーカーナンダ訪日100年特集号 スワミ・ジタトーマーナンダ『実践的ヴェーダーンタ スワミ・ヴィヴェーカーナンダの新しい経営哲学』より)

 

*リブログ先にあるように、以前、鉄鋼王カーネギーとスウェーデンボルグの関係について紹介させていただきましたが、ロックフェラーもカーネギーも、ともに世界的な大富豪であると共に、数多くの慈善事業を行ったことで知られています。彼らは、神への信仰と共に、他者への奉仕の精神があったからこそ、物質的にも成功することが出来たのだと思います。

 

*既に紹介した通り、カーネギーはスウェーデンボルグ派の教会と関係がありました。そして、あまり知られていませんが、ロックフェラーは、熱心なホメオパシーの信奉者でした。実はホメオパシーの創始者サミュエル・ハーネマンはスウェーデンボルグのことを知っており、その影響を受けていたことが、19世紀の高名なホメオパスであったジェームス・タイラー・ケントによって指摘されています(参考:エリナ・ピーブルズ『同種療法と新教会』(ロビン・ラーセン著「エマヌエル・スウェーデンボルグ 持続するヴィジョン」春秋社より))。ロックフェラーがホメオパシーを信奉していたのであれば、当然その理論も学んでいたはずであり、彼もまたスウェーデンボルグの影響を受けていたといえるかもしれません。ちなみに、スワミ・ヴィヴェーカーナンダの師であった聖者ラーマ・クリシュナは晩年喉頭ガンにかかり、サルカル博士というホメオパシー医師の治療を受けていました。ゆえにスワミジーもまたホメオパシーについての知識があったのではないかと思われます。

 

*日本ではホメオパシーはまだ認められていませんが、エドガー・ケイシーやルドルフ・シュタイナーもその効果を認めています。現在、日本のホメオパシーは、クラシカル派とプラクティカル派とに分裂しているようですが、スウェーデンボルグの宇宙観・自然観から考えてみると、私にはクラシカル派の方が正当であるように思えます(一度に複数のレメディを処方することもあるプラクティカル派には安全性の面で不安を感じます)。

 

*スワミ・ヴィヴェーカーナンダは、この世を去るまさにその日に「私は日本のために何かをしたい」と語っています。ラーマクリシュナ・ミッションの日本支部である日本ヴェーダーンタ協会では、1893年の彼の訪日を記念して、毎年祝賀会を開催しています。