合掌行気法 〔野口晴哉(野口整体)〕 | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

・愉気法  「気を愉(おく)り、気を通して元気を呼び起こす」

 

 “先ず合掌して指から手掌(てのひら)へ息を吸い込んで吐く。その合掌した手で呼吸する。これをそろえる。やっていると手掌がだんだん温かくなり、熱くなり、ムズムズ蟻のはうような感じがしてきたり、涼風感があったりするが、そのまま呼吸を続けると手掌がだんだん拡がって室中一ぱいになり、「天地一指」という感じになって、自分がどこへ坐っているか、足も体もなくなって、ただフカフカした雲の中に合掌だけがあるというようになる。もっとも、初めから誰でもそうなるとは限りませんが、やっていると、いつかはそうなる。初めは、指から手掌へ呼吸をするということだって難しい。そういうつもりで息をしておればよい。

 やってみましょう。さあ、一緒に息を吸い込みます。ハイ。手掌に気が集まると手掌が呼吸していることが判ります。自分のだけではなく他人のも判ります。自分の手掌に他の人の指を向けてもらってごらんなさい。その指から息が出ていることが判ります。指を動かすと、その感じは指と一緒に動く。これが感じるようになれば胸でもお腹でも手掌を近づけると気を感じます。その気の熱いのは、その部分の体の働きすぎ、つまり過敏状態。温かさの強いのは緩んでいる部分。冷たいのは鈍っている部分。……感じますネ。そんなに近づけなくともよい。気が適えば離れていても感じるし、適わねば隣にいても感じない。気とはそういうものです。

 今度は合掌して、その両手を三センチほど離し、見ていると、両方の手から互いに吸いついて合わさってしまう。合わさったら目をつぶってもう一度呼吸する。

 この間、この実習が済んだトタン、「アッ、鰻だ」といった人がおりました。あとで室に運ばれた弁当は鰻でした。どうして判ったと聞いたら、「匂いですよ」と申しましたが、台所までは相当遠い。第一他の人には匂わない。私も感じなかったが、その人は感じた。お腹が余程空いていたのでしょう。要求がある場合、気が落ち着くと感覚がトタンに敏感になる。この人はそうだったのでしょう。しかし誰でも敏感になります。

 合掌行気法は正座、合掌、瞑目して行う。時間は五分前後、時間も精神集中度が大切です。気が散ったり乱れたりして行うのは無意義です。気の抜けたまま長時間坐っていても駄目です。”

 

 “疲労したり、体力の呼び起こしを必要とする時は、背骨へ気を通す。

 その方法は背骨で息をすること。背骨に息が通ると汗が出てくる。背骨の硬い所は通りにくいが、通ると「可動性」が出てくる。息を通すつもりだけでも、やっていると息が通ることが判る。その方法はただ背骨で息をすること。方法は簡単だが、精神が統一すると体の力は一せいに発動する。正坐でも椅坐でも、立姿でも臥姿でもよい。初めは瞑目してやる。出来るようになったら、眼を開いたままでもやれる。慣れれば歩行中でも、仕事をしながらでも出来ます。決断する事の遅い人、行動の鈍い人などは特に変わる。病気の経過の遅い人も、栄養物を食べても満ちない人も、これを行うと、それ迄と異なった活気のある体になる。しばらくすると体の中に勢いが湧いてくることがわかります。”

 

              (「野口はるちか・整体入門」講談社より)

 

*野口整体の創始者、野口晴哉先生については、既に多くの方がご存知でいらっしゃると思います。常人とは異なる特殊な感性をお持ちの方で、一目で相手の体の悪い所を見抜き、瞬時に治してしまった話など、伝説的な治療家として知られています。有名な「活元運動」は、普段自分では意識できない深層意識の発動によって引き起こされる無意識の運動であり、自分の体の悪い所を、自分の中の、もう一人の自分が治してくれているような奇妙な感覚を感じます。さらに直観力が高まり、スポーツや楽器の演奏などもより上手にできるようになるといいます。活元運動のやり方は、この本の他にも、市販されている野口整体に関する本に載っていますが、聞くところによると、本を読んで一人で実践してみて、それで発動したという人はほとんどいないようで、最初は先輩の方に愉気で誘導してもらわないと難しいようです。野口整体、愉気、活元運動については、私が今まで読んだ中では、松崎早苗著「活元運動のすすめ わたしと整体法」(七つ森書館)が体験談も多く、わかりやすいと思います。

 

*野口整体とは別に野口体操というのもありますが、これは野口三千三氏によって創始されたもので、野口整体とは別のものです。西欧のスウェーデン体操などとは全く異なる身体観に基づくもので、こちらも健康法、トレーニング法として優れたものです。また、過去には自彊術や真向法、西医学、長生医学など、日本には様々な健康法、治療術が存在していて、現在も伝えられており、いずれそれらについても紹介させていただきたいと思います。