朝、出勤時の国道が異様に混んでいた。
緩いカーブの部分までようやくたどり着いたとき、この渋滞が交通事故によるものであると初めて分かった。
反対車線。
2車線ある真ん中に、軽自動車が斜めに止まっている。運転席のドアが開けっぱなし。その軽の前方に、黒いフロントバンパーが転がっていた。
そのフロントバンパー、軽自動車のものではない。だけど、事故ったらしき相手の車、つまり黒いフロントバンパーを装着していたはずの車は、前後左右、どこにも止まっていなかった。
警察が何人かいて、見物しているみたくな人も大勢いて、コーンで通行止めの表示がなされたよくある交通事故現場。だが、事故の状況は、全く想像できない。
それよりなにより、一種異様な光景だったのは、警察以外全員「スマホを操作している」ことだった。
事故の当事者が、保険会社や職場、家などに連絡しているのだろう、とは思うが、人数が多すぎて、全員が当事者とは思えない。
当事者以外の人、スマホでいったい何をしているのだろう。
これも想像できなかった。
だが、自動車事故に限らず、現在の「現場」は、どこもかしこもこんな光景なのだろうなと思った。
今どき、これが普通なのだ。
…って、なんか私、ムリ…
手のひらの 機械に運命 握られる
鞠子