高校時代の同級生と所用があってLINEしているとき、驚いたのは美容整形医・K君のことだけではない。
今度は別の高校時代の同級生からやっぱり所用連絡があり、話のついでに彼女が別のK君の名前を出してきた。
こっちのK君は、とっても覚えている。
同じクラスになったことは一度もないが、それこそ、いつも学年1、2を争う成績で有名だった。
並々ならぬ頭のよさ。いわゆる天才。
そう、天才。すなわち、凡人ではなかった。こんなふうに言ったら叱られそうだが、見た目も言動も頭が良すぎてヘン、何もかもが常識外、そんな感じだった。
彼女も美容整形医K君もザ・天才K君も、今は東京に住んでいる。
何年か前、東京在住の同級生ばかりで飲む会があったのだそうだ。
彼女曰く、「天才K君が、突然鞠子さんの名前を出してきた」。
その理由が、「応援団をやっていたときのことがずっと印象に残っていて」。
応援団?
思わず、吹いてしまった。
彼女と話すまで、応援団をやっていたことなど、私は全く忘れていた。
言われて思い出した。
体育祭の応援団。誰もやりたがらず、くじだかじゃんけんだかで当たってしまったのだ。
なのでやらざるを得なくなったのだが、自分の団の団長になった子がカッコいい子で、俄然張り切りだした。衣装とか振付とか凝りに凝り、放課後遅くまで練習し、大きなマスコットオブジェまでつくったんだった。
天才K君も、応援団を割りふられた一人だったという。
だが、K君も一緒だったことなど、全く思い出せない。
あるいは、彼のことだから、名前だけ参加で何もしなかったのかもしれない。
それでも、K君は、あの頃の私を見ていたのだ。
もちろん、そんなこと、全く知らずに過ぎた。今も、どれだけ記憶をたどっても、欠片も覚えていない。
もう過ぎた昔のことだし、これは笑い話の範疇だが、昨日も今日も今も、気づいてないだけで誰かが見ている可能性はなくはないのだ。そう思ったら、ちょっと怖くなった。
見ているのは、コメダ珈琲店の中の人だけではない。
そして、私が見ているのもコメダ珈琲店の中の人だけではない。
今ならば 話せる笑える 飲める夜
鞠子