コメダでコーヒーブレイクしていたときのこと。
背中側に、若いお父さんと小学校中学年くらいの息子2人がいた。
息子たちは夏休みの宿題をしているらしく、お父さんがそれを見ていた。
いまどきの親子に珍しく、誰もスマホを手にしていない。お父さんも、口やかましく言うわけではなく、じっと黙って子どもたちの手元を見ていた。
しばらくして、下の子がお手洗いに立った。
父子2人だけ。
すると、上の男の子が泣き出したのである。
それが、なんとも哀切な、胸に来るようなむせび泣きだった。
思わず振り返ってしまった。
彼は鉛筆を握りしめ、ノートを凝視しながら泣いているのである。
そして泣きながら「分からん。分からん。できん」と言っていた。
涙の理由は、私の全く想定外だった。
彼は、自分ができない悔しさで泣いているのだ。
そのうち、足をソファにバンバンぶつけだした。
悲しみに怒りが加わったらしい。
ようやくお父さんが「他の人の迷惑だから」と小声で彼をたしなめた。
いまどき、こんな子、いるんやなあ。
ますます胸が熱くなってしまった。
男の子のむせび泣きは止まらない。ソファを蹴る音も止まらない。
お父さんは「そんなに泣くなら、もう帰るぞ」と言った。
その一言で、彼のむせび泣きは、声も涙の量も増した。
お父さんと弟は、本当に帰ってしまった。
お兄ちゃん一人、取り残された。
ずっと泣きながら、ノートに向かっていた。
コメダの近所の子なのかなあ。
一人ぽっち、ノートを見つめて10分強。
ようやくリュックを背負って、帰っていった。
夏の一日。
切ないなあ。
空白の マス目埋まらぬ 涙声
鞠子