歩いていつものパン屋さんC店へ。
レジで若いスタッフが、私の買ったパンを袋に詰めながら、
「申し訳ありませんが、2月から値上げします。すみません」
と言った。
材料も、燃料も、袋も、何もかも値上がりしている昨今、パンの値上げもいたしかたない。
でも買いに来ますから、と言って、店を出た。
歩きながら考えた。
この店で買うパンも、考えようによっては「贅沢品」なのである。
ここで買うクロワッサン1個分のお金で、ヤマザキやフジパンの6枚切り食パン1個買っておつりがくる。
その食パンなら、1個買えば6日間、朝食に使える。
対するクロワッサン1個は1日分にしかならない。
もうここでパンは買わず、スーパーでヤマザキやフジパンを買う。
そうすれば、かなり節約できる。
だが、一度、ここのパンの味を知ってしまった以上、ヤマザキやフジパンに戻るのは相当つらい。
ヤマザキもフジパンも、決してまずいわけじゃないのに。
一度、おいしいものを食べてしまうと、
一度、楽をしてしまうと、
一度、自由を知ってしまうと、
もう元には戻れない。戻るには、多大な苦痛を伴う。
C店、どのくらい値上げするんだろう。
「でも買いに来ますから」と言ってしまったが、週一から月一に、もしかしたら3か月に1回ぐらいに減らさなければならないかもしれない。
…切ないなあ。
帰り道、足取りがうんと重くなってしまった。
フランスパン 幸せの香を 噛みしめる
鞠子