夕べ、夜散歩をしているとき、某薬局の前を通った。
もう閉店していたのだが、駐車場の看板の前で、思わず立ち止まってしまった。
「人生は60歳から」
と書かれている。
なるほど、これ、妙にリアリティある。
働かなくても普通に暮らしていける財力とそれなりの体力があれば、もう一度大学に行きたい。そして文学か音楽を学びたい……というのが、私の60歳以降の、つまり定年退職以降の夢だった。
だが、直面してみれば、まず「財力」の部分でアウト。持ち金をそのために使い尽くす勇気は毛頭ない。
じゃあ、それなりの体力の方はどうか。
歩きながら考えた。
体力以前の問題として、私が学生の時代には全くなかったと言っていい「IT」に順応する力がないだことが大問題だという気がしてきた。
コロナがあろうとなかろうと、今や何学だって「IT」なしには学べないのではないか、と思うのだ。
だとしたら、財力があっても体力があっても無理だ。
その便利さにどっぷりつかっていながら勝手な話なのだが、私は「ITと縁を切りたい」という思いがいつも頭の中をチラチラしている。
職場で起こる諸トラブルも、もとをただせばなにかしら「IT」がからんでいる。
なにより自分自身が、「IT」に頼りすぎてバカになる道一直線に進んでいる。
だったら勝手に縁を切ればいいのだが、そうしようと思ったら、人里離れた山の中で自給自足の生活をし、誰ともかかわらず、ひっそり生きてひっそり死ぬしかない……しかしそれも、簡単なことじゃない。そもそも私に、自給自足なんてできるはずがない。
「人生は60歳から」が重くのしかかってきた。
もうカウントダウン状態。
できる限り自由に、できる限りなにものにも縛られずに……と思ってはいるものの、実際どう生きたらいいのか、今のところ皆目見当がつかない。
人生を 迷えることこそ 幸せか
鞠子