わが家の向かいのお宅に若いご夫婦が越してきて3か月ほどが経った。
もともと年配の女性が一人で住んでいたのだが、施設に入られ、結局亡くなられ、しばらく空き家になっていた。いわゆる「豪邸」。土地も大きいが家も大きい。庭も広く、芝生が敷いてあって、松やらハナミズキやらが植わっている。
この家を、20代の若夫婦が購入、半年くらいかけてリフォームした。
おそらく、購入代とリフォーム代を合わせたら、新築の建売が買えるほどの金額に違いない。
おまけに、スーパーもない、コンビニもない、学校も遠い、裏にがけ崩れするかもしれない山を抱えている高齢化した住民ばかりの住宅街に越してくるとは、いったいどんな人たちなのか……と不安だったのだが、実際は、実に穏やかでおとなしい感じの2人だった。工事に入る前、入居する前、二人そろって菓子箱持参であいさつにいらした。顔を見れば普通にあいさつし、ゴミ出しのルールなんかもちゃんと守るし、友人が来て大騒ぎ、などということも一度もない。
…というよりこの2人、「基本的に家にいない」のである。少なくとも、夜といい朝といい、土日といい祝祭日といい、特に2人そろって家にいる(←つまり、車が2台駐車場に入っている)ことなどめったにない。
別々に「家に寝に帰ってきているだけ」。
2人とも「定時に出勤し、定時に帰る」という一般的なサラリーマンではなく、夜勤や早朝の仕事もあるんだろうと思う。
だから、他人様のことながら痛切に思っちゃうのだ。
そういう生活スタイルなら、こんな大きな家が必要だろうか、と。
いや、そういう生活スタイルだからこそ、夜中に帰っても早朝に車を出しても気を遣わなくていいからこの家を選んだのかもしれないとも思うが、それにしても大きな買い物すぎて、余りにも負担大のような気がしてならない。
他の人がどんな生き方をしようと、どんな家を購入しようと勝手だけど、今もまるで「空き家もどき」のような家を見つつ、私はこのご夫婦が「なぜこの家を選んだのか」を知りたくて仕方がない。
雑草が 人の背を越す 塀向こう
鞠子