(1)両腕ガラ入りのパパ
某店で夕食をとっていたら、遠くの方の席から、突如子どもの泣き声が響いてきた。
子どもといっても、生まれたばかりの赤ちゃんのような泣き声。何があったのか、相当、大泣きしている様子。
しばらく後、私の横を、さもいとおしそうに赤ちゃんを横抱きにした半袖Tシャツ姿の男性が通り過ぎた。
音源はこのチビちゃんらしい。まだ泣いている。
ほほえましい、と思ったが、次の瞬間、男性の両腕にびっしりガラが入っているのを見てギョッとした。
腕以外のところから拝察するに「ごく普通の人」。
腕だけ見ると、まさに「頬にキズのある人」。
実際はわからない。
ただ、「意外なパパ」もいるものだと複雑な気持ちになった。
(2)徹底ポイ活のおじいちゃん
ここ数年行ったことのないドラッグストアに行った。
レジ、超コミ。
私は次の予定が迫っており焦っているのだが、進み方が遅くてイライラしていた。
私の前で並んでいるおじいちゃんのカゴの中には、ボックスティシュや箱入りのドリンク剤などかさばるものがたくさん入っており、年齢から察するに現金で払うに違いなく、さぞもたもたするだろうなと想像できて、余計にイラついていた。
さて、ようやくおじいちゃんまでレジの番がまわってきた。
おじいちゃんはカゴを台に乗せ、そのあと財布から、なにやら次々と折りたたんだ紙片を出し始めた。
なんだ、それは……
どうやら商品ごとに一番得をする割引券やらポイントやらを熟知しているらしく、レジスタッフに、「これはこのポイントで、これはこのクーポンで……」といちいち指示をし始めた。
いやあ、なんともあっぱれ。
よくそこまで徹底した下調べをしてきたものだ。全く「意外な老人」を見た思い。
私はポイ活する自分がいじましくてみっともないなと思っていたが、この老人のレベルまで突き詰めるなら、もう感嘆するしかない。
そもそも私は、ここまで根気よくポイ活できない。
このおじいちゃんにとって、ポイ活は頭の体操になっている、とみた。
だがしかし、こういう人が夫だったりしたらたまらないな、とも思った。
(3)言い張るおばあちゃん
こちらはスーパーのレジで出会ったおばあちゃん。
カゴのなかに『ハッピーターン』が2袋入っていた。
レジスタッフが2つ目の『ハッピーターン』のバーコードをスキャンしたとき、金額表示の電光板をながめていたおばあちゃん、突如、大きな声で、「2袋買ったら割引のはずや」と言い出した。
対するスタッフ曰く「いえ、この商品はそういう割引はないですよ」
するとおばあちゃん、ポケットからこれ以上折れないくらい小さく折りたたんだチラシを出して、広げ始めた。
間違いない。あの色合いの折り込みチラシ、この店のものだ。だけどなあ、いまやオールコンピュータ管理だから、レジで割引をし損なうわけがない、と思うのだが。
スタッフ、チラシをざっと見て言い放った。
「お客様、これ、3月31日までのサービスです」
そうかぁ、おばあちゃん、古いチラシを見たのか。なるほど。いや待て、それにしても3月末って、3か月以上前のチラシじゃないの。
3か月も前のチラシを後生大事に持っている意外なおばあちゃん。この間、この店で何度『ハッピーターン』を2袋、買ったのだろうか。あるいは3か月待って、初めて買ったのだろうか。
「チラシは永遠」だと思っていたのなら、それもある意味、「意外な人」だ。
なんだか笑えるやら悲しいやら。
PS.私って、なんか買い物する先々とか銀行とかで、変わった人に会う頻度が高い気がする。
もしかして、私の方が変わった人なんだろうか。
バツ悪し 出したクーポン 期限切れ(←これから気をつけよ)
鞠子