私は生まれてこの方、大家族の中で暮らしたことがない。
我が家はMAXでも4人だった。
職場も、客様は何百人といるが、普段、一緒に仕事をしているのは5人。こちらもかつてMAXのときでさえ、10人はいなかった。
大学時代の友だちが、結婚して一年目の今時分、耐えきれず電話してきたことがある。
彼女は私と真逆で、生まれたときから家族+住み込みの職人さんが何人もいて、家のなかは常時、人だらけだった。ところが嫁ぎ先は、母一人息子一人。その息子は年末年始も仕事の人で、家には彼女と義母しかいない。義母さんは悪い人ではないのだが、物静かでおとなしい。なので「家のなか、まるでお通夜。この静かさに耐えられない。気が狂いそうだ」と半泣きだった。
…でも私には、彼女の苦しみを実感として受け止めることはできなかった。
一人で淋しくない? ―― 強がりでも何でもない。淋しいと思ったことがない。例えば台風や大雪のときや体調が悪いときには、心細くはあるが、次の瞬間、「でも、誰にも気兼ねしなくていい」と思ってしまう。
大人数で暮らした経験がないのだから比較しようがなく、淋しさがわからないと言った方が正しいのかもしれないが。ただ、最近、なぜか好奇心にかられる。今、コロナ禍で帰省を控えたり、ということはあるだろうが、一年に一度、家族が一堂に会し、家のなかに二ケタ以上の人がいる、ってどんな感じなんだろう、と。
今、ここに、家族と言われる人たちが大勢いたら…… ビールを飲んだりお菓子を食べたりしながら、何の話をするんだろう。誰かがお風呂に入っているとき、私は何をしているんだろう。歌やピアノの練習は、いつするんだろう …… そんなことを想像すればするほど、未知な感じがして不思議な感覚にとらわれる。
ネコでさえ 共に暮らせぬ 予感する
鞠子