休日、久々に家のことをしていたら、24時間365日留守電になっている我が家の固定電話が鳴り(←ちなみに着信音は『展覧会の絵』)、つい、取ってしまった。
「中部電力の代理店(…と言ったか特約店と言ったか?)の株式会社なんとかかんとかです。本日は、電気料金がお安くなるプランについてお電話を差し上げました。奥さまでいらっしゃいますか?」
――この手の電話は、私、正直に答えることにしている。私は奥さまではない。
「違います」
すかさず敵はこう攻めてきた。
「娘さんでいらっしゃいますか?」
この問いは困る。「娘」にはさまざまな意味があり、とらえ方があるからだ。
結婚をしておらず、親と同居していれば「娘」は妥当だ。
しかし、70歳だったらどうなのか。たとえ70歳で孫があろうとも、世帯主が90歳の母ならば「娘」というのもあながち間違いではないではないか。
親元を離れ、独り暮しをしていたら、話はまたややこしい。
とりあえず私の場合、親はいないし世帯主だし、ということでどう拡大解釈しても「娘」は妥当ではない。
なので正直に答えた。
「違います」
そうしたら、敵は、信じられない攻め方で詰め寄ってきた。
「では、どういうご関係の方ですか?」
え? この個人情報ウンヌンとやかましいときに、見ず知らずの人がいきなり電話してきて関係を問うなんて。
ムカっときて、思わず言ってしまった。
「そのようなことを、お伝えしなければいけませんか?」
敵は一瞬、黙った後、「では…」と言ってガチャリと電話をお切りになった。
しまった…
どうせなら、「どういう関係の者だと思います?」とか「ええ、この家の主人の愛人です」とか「奥さんの姉の友だちのいとこの隣の家の角を曲がってすぐの路地を右に入った左手の家の者です」とか、意地悪な返答してやればよかった。
だがしかし…
電話をかけてきた人も「仕事」なのだ。会ったことも見たこともない人の家に、マニュアルを見ながら電話している。きっとどなり散らすお宅もあるだろう。私の想像したようなわけのわからない返答で、会話そのものが成り立たないお宅もあるだろう。
でも「仕事」なのだ。やらなければ食べていけない。
いろんな意味で、とっても不愉快だった。