上野千鶴子氏が東大入学式で、「頑張っても報われない社会があなたたちを待っている」とスピーチし話題になっている。
だが、私自身、報われるに値するほど頑張ったことがあるかと言われると、全く心もとない。
頑張ったってどうせできないし、やれるはずもないし。
…これが多分、フツーの人。しかし世の中には、こんな人もいる。
○「絶対無理だと言われるものを作るのが好き」ヴァージル・アブロー
この先生は、ファッションブランド『オフホワイト』を立ち上げ、『ルイ・ヴィトン』でデザインを手がけている。建築学の修士でもあり、建築家、アーティストの顔もお持ち。
こういうポリシーの人も、本当にいるんだ。
○「1万メートル走などの陸上種目の記録は長らく破られずに続くが、あるとき破られると、その後は次々と記録が更新される」長谷川眞理子
総合研究大学院大学学長の長谷川氏が、新聞にこう載せていた。
誰も破れないと思っていたのが破れるとわかると、みんなが挑戦するから、なんだそうだ。
では、最初に記録を破った人の心中はどうか。決して「頑張っても報われない」とは思ってなかったはずだ。
アブロー氏のように、「絶対無理だと言われるものにチャレンジするのが好き」か、あるいは「長年破られずにきている記録もしょせん人が打ち立てたもの。そいつにできたんだから、俺だって」、か。
いずれにしても、気持ち的に相当パワフルなのではないかと思うのだが。
○「ヒトデを海に投げ返して助けてあげるの」ローレン・アイズリー
自然科学者アイズリーのエッセイ『星を投げる人』より。
早朝、女の子がヒトデを海に投げている。
浜辺には多量のヒトデが打ち上げられており、いわゆる「焼け石に水」状態。
しかし女の子は、手の中にいる1匹のヒトデを見せて「でも、この1匹のヒトデにとっては大きな意味がある」と言う。
これこそいくら頑張っても報われない典型。
だが、報われないのは総体的に見ているからで、数匹のヒトデは生き残ると考えれば、狭義、報われているとも言える。
上野氏は、「あなたたちの頑張りは、恵まれない人々を助けるために使ってください」と呼びかけたが、なかには報われないからこそ頑張れる人や、見方を変えればちゃんと報われている人もいる…そう考えると、ちょっとだけ救われた気になる。