ナミダのクッキングNo.2308 | 鞠子のブログ『ナミダのクッキング』

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今日、ちょっぴり悲しかったこと…

今、受けている文学講座4つ。
1つは夏目漱石。1つは芥川龍之介。あとの2つは、先生が「何らかの意図」で集めた複数の短編が課題となっている。

そのなかに、藤沢周平の作品がある。

私はテレビで時代劇を観るのが大好きだし、『鬼平犯科帳』など、たぶん全部観ている。それどころか、何回も繰り返して見たりしている。
だが、読むのは苦手。司馬遼太郎ですら、1冊も読んだことがない。
だから、藤沢周平はちょっと早めに読んでおかなければ…と思い、本日チャレンジ。
作品は『閉ざされた口』と『闇の穴』。

さささっと読めた。
最近、バイロンやドストエフスキーに四苦八苦していて、それに比べたらなんと読みやすいことか。
だけど…

全然物足りなかった。

5歳の女児が、殺人を目撃し、以後、口がきけなくなってしまう。
彼女の家は、胸を病んで寝たきりの父と料理茶屋で働く母。
当然の如く、母は身体も売っている。

『閉ざされた口』に出てくる家庭環境。優しい語り口で丹念に書かれたこの部分を読んだだけで、かつての私なら大号泣だったと思う。
でも今はもうダメ。それ以上の深みを感じない。
途中で、この母娘を「助けたい」(←お妾さんにして、ね)という商人・清兵衛が現れたあたりで、その先が想像できてしまった。
そして結末は…さらに軽かった。

こういう読後感を持つたびに、「知らぬが仏」を実感する。
余計な知識がなければ「大感動・大号泣」で楽しめたのに、と思う。
藤沢周平の作品ですら物足りないのに、今、流行りの作品など読めるわけがない。読む気にならない。
これは不幸ではないか。
ある意味、世界をせばめてしまっているとも思う。

だけどもう、後戻りはできないし。





荷風書く女の笑顔哀れなり
鞠子