客様K社長が、愚痴を言いにきた。
社員が事故をして病院に搬送されたのだが、「どこに連絡すればいいのかわからなかった」というのだ。
入社にあたり、用意してもらう書類には「いざという時の連絡先を記入する欄」があるのだが、書くことを強制はしていない。
この事故った社員は、記入がなされていなかった。
社員本人の口から親がいるところを聞けるまで、かなり時間がかかった。
連絡を受け、両親がかけつけたが、「なぜすぐに知らせてくれなかったのか」とK社長に対する不信感大アリだったのだという。
「この欄に記入がないと、何かあったときに迅速な連絡ができないことを承知しておいてください」と伝えてあるのだから、責任は書かなかった本人にある、とK社長は思っている。
かたや社員は、「親に連絡をとらなきゃいけないことなんて、ないだろう」と思ったか、あるいは「親には連絡してほしくない」と思っていたか。
K社長と話しているうちに、今朝読んだ新聞記事が頭に浮かんだ。
「奨学金を受ける際の保証人が、知らぬ間に自分になってた」と、母親が日本学生支援機構を提訴した旨の記事。
奨学金を受けたのは息子。勝手に親の名前を書き、印鑑を押したらしい。
息子とは現在、連絡が取れず、母親は返済を要求されている。
どちらの家庭も、当事者の1人1人も、きっとさまざまな事情や行き違いがあり、こんなことになってしまったのだろうが、なんとも複雑な思い。
家族とはなんなのか。
そこにあるべき「最低限のつながり」すらも意味のないものになりつつあるのかと、うすら寒く感じるのは私だけか。
しがらみを持たぬ女のひとりごと
鞠子