司法に携わるエリートの太郎。
底辺の水商売をしている花子。
二人は知り合ってすぐ恋に落ちた。
花子が暮らす安アパートの隣室には、ヤク中の母とその息子・二郎が住んでいる。
母は育児放棄、二郎はダウン症だ。
この母が、薬物使用で逮捕された。
花子は、施設に送られる二郎が不憫でならない。
そして二郎は施設を抜け出し、安アパートに戻ってきてしまう。
花子は二郎に「母」としての愛情を持った。
そして二人は太郎の家に同居する。
最初は抵抗があったものの、無垢な二郎の姿に太郎にも「父」としての愛情が芽生える。
だが、このままでは「拉致監禁」と見なされてしまう。
そこで刑務所にいる実の母から、「服役中は太郎と花子に二郎の養育を任せる」旨の正式書面をとりつけた。
だが実は、太郎と花子には、「養育を許可されない事情」があった。
それで、太郎はこの事情を糊塗してしまう。
そうして太郎と花子と二郎に幸せな日々が訪れたが、それはつかの間。
「事情」は露見、二人は二郎を失い、太郎は失職した。
二人は二郎を取り戻すためにすべてをかける…
しばらく映画を観ておらずイライラしていたので、今日は仕事帰りに映画館に直行。
観たのは『チョコレートドーナツ』。
それがこのよなストーリーだったのである。
いろんな賞をもらった優秀作品らしいが、
私は最初から最後まで気になって仕方がないことがあった。
「太郎」の心情だ。
好きになった女が、全く他人の隣室の子、それも障害を抱えた子を連れてきたら、こんなふうに受け入れられるだろうか。
それも、
花子たちが強引に押しかけてきたわけではない。
正式に養育権を得るための必須条件である「環境の整った家」を提供すべく、自分から同居を提案するのである。
結果、太郎はキャリアも名声もすべて失ってしまった。
こんな決断、できる人がいるのか。
決断できるほど、人を愛することができるのか。
残念ながら私の意見は「No」だ。
ウソくさく思えてしまう。
だから、
たとえ血がつながってなくても、母以上に母らしい他人がいることに心が暖まったが、感動して泣く…ということにはならなかった。
ちなみに「養育を許可されない事情」とは、花子は男、つまり太郎と花子はゲイカップルであること、花子の職業が、酒場のステージで女装して歌うアブノーマルな仕事だからだ。
それでもかなり重い気分になる映画であった。
次は『パガニーニ』を観ると決めている。