夜明けのすべて | ちょんぺいのブログ(映画へん)

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その年に日本公開された映画を中心に感想を書いてます。備忘録としてサクッと書いちゃってますが、良ければ気軽に覗いて下さい。誤字脱字は申し訳




夜明けのすべて


ここ最近気付いた事は、上映時間、体調、金銭的余裕、身だしなみは整ってるか、集中出来るか空いてるか否か、これらが噛み合わないと映画館に行けないと気付いた。


別にいつどんな状況で行けた人なはずなのに、いつからかこうなってた。

昔は今以上に人の気持ちを考えれない人だったし、自信過剰で汚い言葉を使い、遅刻も寝坊も当たり前だった。


ある時から自分がベストなコンディションで生きるコツを見つけた。


8時間以上寝る、予定は1〜2つまで。

常にバッファを持つ様になってから生きるのが楽になってきた。


その分、沢山稼げなくもなければ人付き合いも減り、楽しい思い出も減る。

でも迷惑をかける率も減ればトラブルも無くなり、適切な距離感で生きる事が出来た。

物足りない日々だが20代まで好き勝手やってたのでもうこれくらいでいいだろうと。


この作品をそんな事を思い返してしまった。


パニック障害とPMSを患う男女と社会生活を描いた本作品。

題材が難しいだけに構えてしまったが、どの映画よりも喉越しが良く優しい一本でした。


回想もなく、大変だと訴える描写も無く、乗り越えようと言う挑戦もない。

そもそも本人が何より全て分かった上で悩んで生きて常に向き合ってるのだから、いたって普通に生きてる。

症状を訴え、それを作品的起伏として映画的に作ってないところが最高に美しい。


なおかつ、彼らの時間を共有したかのような穏やかでゆっくりな描写で作り込んだところもすごい。

藤沢さんのやらかしが回想ではなく、録画されたもので進行するリアルタイム思考から始まる。

そして雨で始まり天気雨で終わる。


職場の関係性も、後半は同じ立ち位置なのに振る舞いやその時の服装が違ったりと、小さな変化でホロリと来てしまう。


一瞬映る部屋の隅に映る本のタイトルの一覧で、藤沢さんが拾う薬とその後の躊躇いのない行動に整合性が生まれるさりげないシーンとかも良き。


決して恋人関係にはならないだろうなぁという距離感を貫くからこそ、ズバっと言っちゃう自虐めいた会話もお菓子を雑に食べるシークエンスも些細なシーンの積み重ねによる技。

徐々に気を張ってた人生が全部曝け出してもいいか、となるリラックスゾーンもたまらない。


ズバっと踏み込みすぎてピリッとするとこもそこはすんなり答えるんだっていうONOFFの激しさもなんか心地よかった。


大親友とはいかないけど、その人がいないと自分が一番自分らしくいれる状況になれない環境の美しさ、でも移り変わりによって離れ離れになる切なさ(ここは登場人物ではなく鑑賞者にだけ伝わる構造)

そういったバランスが完璧で尊い作品でした。


何も起こらないけど楽しい美しい、そんな邦画の「静」なる真骨頂を見た気がします。

逆にこれが苦手な人は合わないレベル。


嫌な人も出てこないし、良い人によるあざとくなく目線と気にならなくする様な細かい気遣いが勉強になる。


こんな優しい世界だったらいいのになぁ…と現実と乖離しすぎてて閉塞感を抱く人もいるかも知れないが、「移り変わり」が人を誘うし、その空間は確かに存在するはずです。


解決しなくとも克服出来なくとも、苦しむ中で行動する何かは必ず誰かの為になっている。


人に見せつけるエアロバイクが自由に坂や風を感じる自転車に変化する美しさや、各モブキャラが展開的に関与しなくとも記録を刻んでる良さが沁みました。


そんな小難しい事を自然に積み重ねて夜空で落とし込む本作、恐ろしいほどに練り込まれてて美しかった。


省エネ感想なので雑ですがこのへんで。