テロの街の天使たち ~ブリュッセル6歳児日記~('18年フィンランド) | Que amor con amor se paga

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原題名:GODS OF MOLENBEEK

'15年に起きたパリ同時テロの主犯が逮捕され、テロリストを生む街として知られる、ベルギーのモレンビーク地区。

国連本部の御膝元ながら、移民が生み出す貧困と暴力、宗教対立やテロ事件が侵入していく様を、現地に住む6歳の子供、アトスと その友達の目を通して見るドキュメンタリー。

予告編はこちら、あらすじいってみる。



ベルギーの首都ブリュッセルの人口は100万人。

国連本部があるが労働者不足を10万人以上の移民に頼っているのが現状だ。

19あるブリュッセルの自治区の中で、モレンビークはイスラム系住民の割合は最も高く、低所得者、麻薬密売、違法武器摘発の温床となり、暴力とテロ多発地帯となっていた。

毎日の様にデモが起き、警察とデモ隊が衝突し、火炎瓶が建物に投げ込まれる事も日常茶飯事。

子供たちにとって、学校は開いていれば御の字、路上で遊ぶしかなかった。



アトス(写真左)はフィンランドから引っ越してきた6歳の男の子。

ギリシャ神話や神様の話に興味があり、ヒマがあれば、ギリシャ神話の神様のコスプレをして遊んでいる。

同じ集合住宅に住むモロッコ人でイスラム系の家庭に育つアミン(写真右)はイスラム系の神様の事や行ったことのないモロッコについて教えてくれるので、面白い友達だ。

『モロッコって大きい海があるの?』『そうだよ、ざっばーん!ってオレたちがのまれちゃうぐらいの波が来る海があるんだよ。』

北欧から来たアトスは海で泳いだ事がない。
海で泳いだ事があるアトスの話を聞いて興味深々だった。

そんなアミンもアトスも大人たちのやっている事はあまり理解できない。

アトスの親はイスラム教徒。
決まった時間にモスクに行き、アラーの神に礼拝を捧げるが、アミンはそれが理解出来ない。

『ボクらって生まれた時から豚肉たべられなかったのかなぁ?』イスラム教徒が豚肉を食べられない理由をアミンはアトスに聞く。
するとアトスは決まってるからじゃない?というが、 それでもアミンは理解できない。

アトスは『キリスト様も神様だと思うよ』というとアミンは

キリストは預言者であって神様じゃないよ、神様はアラーだけだよ

と言い返す。

アミンの親は『豚肉を何故たべてはいけないのかよりも神様の概念』を先に教えていた。

フィンランドから来たアトスは『神様はどれもこれも一緒で仲良くして敬うべきだよ』と思ってるから、そこら辺が理解出来ない。



そんな2人をシラけた目で見ているのが、オマセな女の子フロー(写真右)だ。

アトスが親の使いで売店で新聞を買うと、新聞に載ってるのは宗教対立やデモ、麻薬密売など暗いニュースばかり。

そんなニュースや街の景色をみて、神様のコスプレに夢中はアトスをみたフローはこんな事を言う。

神様に夢中になりすぎるから(大人は)おかしくなっちゃったんだわ

貴方もおかしくなる前に私に言ってよね


フローはアトスを川のせせらぎや木々の美しい自然の中に連れ出し『自然と戯れるのが一番』という。

アトスやアミン、フローは学年でいえば小学校2年生、今日も学校はなかった。

アトスは街まで出て、屋台できれいなターゴイズブルーの布きれを見つけ、海王ポセイドンのコスプレをして喜ぶ。



その帰り道、アトスは街でデモ隊が街を占拠するのを目の当たりにするのだが…。

以下ネタバレです。

ネタバレつーても、BS世界のドキュメンタリーで放映されていたモノなので、テロの温床となっている街を子供の目線から淡々と描くモノなのですが。

デモで学校や鉄道が機能しなくなれば子供たちは路上で遊んでいるのです。

たわいもない会話をして、オンボロな集合住宅を行き来して、路地裏で遊び、それでも悲壮感がないのは

『レミゼ』の様に、子供や青少年がスマホ片手に知らない間に犯罪に加担し、周りの前科者の大人たちがそれを擁護しているという悪循環が ないからだと思います。

それでも街に住む大人、特に母親たちは子供たちがいつ何時『レミゼ』のイッサにならないかと戦々恐々としているのです。

お金がたまったら明日にでもこの街を出よう

親たちはそう思っている。



そうとも知らずアトスやフローは夏になれば水鉄砲で水浴びをし、立ちシ○ンでアミンのキックボードでかけてしまった時に怒らせても翌日には

トイレットペーパー使ってミイラごっこしよqqqqq

…と仲直り。

アトスとアミンが『死んだら神話の世界じゃーミイラになるんだろー』と言い、体に家中のトイレットペーパーぐるぐるに巻き付けてバスタブを棺にみたててミイラごっこしてる所は、 まさに子供の考え。

親は『またこんな事してー(プギャー)』モノなんだけど。

映画のラストはアトスの親がアトスを連れて違う街に引っ越していく所で終わります。

ケンカして仲直りもして、一緒にしょうもない遊びもしたアトスとアミン、2人とも離れ離れになりたくないと、泣きじゃくるのです。

'60年代~'70年代、北アフリカ、トルコ、中部アフリカから移民がやってきたモレンビークは住民の殆どが日雇い労働者。

'00年まで社会主義者の活動拠点だった事もあり過激派が潜伏しやすい上、アトスのお母さんが心配したのは

'15年パリ同時テロの主犯が逮捕されたのはモレンビークで、モロッコ系フランス人だった事。

パリ同時テロの事件から10日後、フランスはシリアへの空爆を本格化させ、シリアに住む民間人の強制退去も始まったのは 『戦場の秘密図書館』を見ても明らか。

アトスにとってアミンはかけがえのない友達なのだけど、宗教はその友情でさえも奪ってしまう。

『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』とは違う穏健派になれないイスラムの裏側をみた映画でもありました。