ザ・ヒューマン「不屈のえん罪弁護士 マーク・ゴッドシー」 | Que amor con amor se paga

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元エリート連邦検察官、今冤罪専門弁護士

異色のキャリアに全米が注目する弁護士・マーク・ゴットシー(Mark Godsey)の7カ月を追ったドキュメンタリー。

『黒い司法』にも通じるんじゃないでしょうか。

NHS BSで今年冬に放映されたのを録画して観たのですが、感想を書くヒマがなかったので、今ごろ感想をUpしてみる。

ヒマな時に、飛ばし飛ばしでエエのでみておくれ。



え?
見るのめんどくさい?

そんな方は、以下のあらすじどうぞ。

マーク・ゴットシーは、'67年生まれの52歳
お写真こちら
デ〇とか禁句qqqq





元NY検事、エリート連邦検察官。

担当した事件は、大物ばかり。

NYの5大ファミリー、ガンビーノ・ファミリーの幹部を逮捕に追いやり、アルカイダテロ事件を担当。

警察、検察の犯人追及の手口の表裏全てを知り尽くし、クリントン政権時代に司法長官から表彰された。

若い時の写真がこちら。
ううむ、デ〇になる要素はあったかもしれん(←そこは注目すべきポイントでないqqqq)



地元のオハイオで法律を学ぶ正義感の強い青年だったというゴットシー。

彼は検察官として成功を収めた後、卒業校のシンシナティ大学の学部長から法学部の教授になってほしいと頼まれた。

エリート検察官でも教授としては新米、どんな言うことも聞かなきゃいけない。
で、この教授、ゴットシーに何を頼んだかというと

イノセンスプロジェクトやろうと思うんだけど興味ない?

頼まれた時のゴットシーの正直は感想は

嫌qqqqq

だったそうな。
そりゃーそうだ。

男が自分の輝かしき成功体験全否定された後に、前の給料の〇分の1で、新たなキャリア築いてください

…って言われたら、大抵の男は逆上するよqqqq


そこで男の力量が試されるのだろうし、ゴットシーはやってのけた

ので、全米のみならず世界の法曹界から注目される弁護士になったんだろうと思う。

ゴットシーがオハイオ州シンディナティ大学内に築いたオハイオ・イノセンス・プロジェクト(OIP)には、学生ボランティアと、地元の議員、弁護士たちがスタッフとして働く。

毎日20通を超える無罪を訴える手紙やメールが寄せられるが、既に1万件を超える無罪の訴えが壁一面のファイルボックスに埋め尽くされている。

これらはゴットシーとそのスタッフたちが、何等かの形で冤罪をかけられた人たちとして救うと決めた人たちのファイルだ。

ゴットシーは、警察官は目撃者にウソをつかせるから、現場は自分で確かめることを信条にしている。

警察、検察の捜査方法、犯罪追及手口、証拠隠滅方法を知り尽くした彼ならではの手法だ。
現場検証は彼の右腕であり弁護士のミシェルが同伴する。

彼が今担当している冤罪は '07年に現金800ドルを盗んだ罪で懲役20年以上の罪をかけられたクリストファー・スミスという黒人だ。

ドキュメンタリーは、ゴットシーとミシェルが、スミスが強盗を働いたとみられる雑貨店と目撃者の距離を測るための現場検証をするシーンから始まる。

目撃者を特定するにはあまりにも離れすぎている事を指摘し、さらに1000Pに及ぶ検察の資料を入手し読み込み、警察の調書の矛盾を突き止めた。

スミスが強盗犯と決めつけられたのは、目撃証言と共に、強盗の時に所有していた車がスミスのものと判明したからだった。

しかしこの点も矛盾していた。 事件発生から30分後に、 目撃者であるボスニア兵役のある警察官にスミスの写真をみせ、車がスミスのものと証言させている事が判明

検察側から資料だけでなく逮捕時にスミスが着用していたと思われる変装用のTシャツ、カツラ、ティアドロップのグラサンも借用し、ゴットシーは、DNA鑑定のエキスパート、ジョニー・ヘイニックに鑑定を依頼。

ヘイニックは、鑑定後
スミスのDNAではなくて違う人物のDNAが出たと言った。

DNAの鑑定結果はスミスではく、スミスの友人のチャールズ・アレン

スミスの友人で、よく車を貸していたことが判明。

ヘイニックは、事件当時気温25度、湿度90%で犯人が汗をかかないはずがないと、検察側の言い分を否定。

ではなぜスミスが警察から睨まれる事になったのか、逮捕歴があり仮釈放中だったからだ。

『私はあなたのニグロではない』は、いまも現実に米国で起こる話だという事をつきつけられる。

…ここまで証拠揃えたら、えん罪でも勝てると思うでしょ?

そんなに簡単に逆転→再審出来ないんですよqqqq

も~、ありえない難癖つけて反論する検察。

目撃証言が間違っている事に関して言えば、検察側はボスニア兵役のある警察官が目撃者なんだから間違いないと一蹴。

DNAはスミスのモノではない別人のモノが付着してるじゃないかと言えば、カツラにDNAが付着してないのは髪の毛がジャマをした(ありえない)

…で州裁判で『二度』も、ありえない理由で負けて、戦えないと判断したゴットシーは連邦裁判所に話を持っていく事にします。

連邦裁判所に持ち込んでも、やはり同じで、ゴットシーは、かつて自分が勤めていた所としりながら、カメラに向かって連邦裁判官の醜さを吐露するのです。

Procecutor always win(検察は必ず勝つ)

それが悪い意味である事も。

検察が『空が緑だ』と言えばそれが通ってしまう。
とんでもない空は青なんだ、ばかげている。

連邦裁判所で敗訴した後、控訴裁判所に持ち込んだゴットシーは、やっとここで、女性裁判官によりDNA鑑定を取り上げて貰います。

いじましくも検察側は『DNAなんかどうでもええわーqqq目撃証言の方が大事じゃー!』とあるまじき暴言を法廷で吐いてしまうのです。

さすがの裁判官もブチブチブチッ!とキレて、検察にこう言います。

じゃぁアナタ、他の事件じゃぁDNA鑑定重要視しますけど、この事件だけ目撃証言目撃って言うのなんですか?

このおかげで、この事件の再審(差し戻し)が決まります。

…差し戻しが決まっても安心はできません…州裁判所は『煙のない所に火つけやがって』と、いったん有罪にした人物の無罪を認める裁判手続きは、やろうとはしないのです。
ダダコネ状態の裁判所に、ゴットシーは、こういいます。

トランプが30ページ分ツイートしたようなモノだなqqqq

…こんな事件でも彼にとってみれば『序の口』

彼が冤罪事件を手掛けるきっかけとなった、最初の事件に比べたら屁でもなかったのです。

ゴットシーが最初に手掛けた冤罪は、20代半ばで冤罪をかけられ逮捕された家具職人、ディーン・ガレスビー。

逮捕された当時は、いかにも'80年代風のパーマ+甘いマスクのアイドル風だったんすが、20年以上たって出てきた時は、こんな感じ。
'19年現在54って事は、ゴットシーより2つ年上。



彼の両親はありとあらゆる弁護士に頼んだ結果、当時新米だったゴットシーだけが弁護を引き受けたのだそうな。

そしてゴットシーは、捜査資料を取り寄せすぐに捜査の矛盾点に気付いたという。

犯人のモンタージュで、犯人像は顔が幅広でグラサンとかいてあり、容疑者6人の顔写真の中で、ガレスピーの写真だけが

意図的にクローズアップしてデカく映るようになっていた。

先程のスミスの車じゃぁないけれど

捕まる前から犯人にしたてている

さらにゴットシーは、当時の捜査資料から、捜査を担当した刑事が2人いて、もう1人の捜査レポートによるとガレスピーはシロだと判明していた事が発覚。

真犯人は肌が浅黒く喫煙者でガレスピーとは似ても似つかなかったのに捕まらなかった。

だがそのレポートは破棄され、もう1人が書いた捜査レポートが通り、ガレスピーが捕まった、何故か。

ギレスピーは、捕まる前に、上司と賃金の件でモメていた上、上司は地元警察に知り合いがいた事から、ガレスピーが意図的に犯人に仕立てられたのでは、という事だった。

冤罪がとけることに僅かな望みを託し、ガレスピーは、刑務所の中でミニカーや建物のミニチュアを作り続け
心の平穏を保っていた。
中でも一番の思い入れがあるのは、これだ。



タバコの銀紙と、お茶のティーバックで作ったミニチュアのキャンピングカー『Soulshine』

刑務所から出ることが出来たなら、これの実物を作って全米を旅する。

家具職人でありながら、整備士でもあったガレスビーの夢。

ギレスピーは、釈放後、ゴットシーのイノセンス・プロジェクトを手伝うことで生計を立てている。

釈放された人々を雇う事に決めたきっかけをくれたのは、ガレスピーだとゴットシーは語る。

ゴットシーは、実生活では5人の子供の父親。
その内の2人は大人で3人は子供だ。

ガレスピーの面会に行く間は、イノセント・プロジェクトの立ち上げや、子供の教育の両立で頭がパンク状態となり、年が近く同性のガレスピーにあたってしまった。

ガレスピーは我慢の限界に来て、ゴットシーに、こういったという。

僕の前で子供の世話や家族の愚痴はやめてくれ。

 僕にとって、君の生活は当たり前じゃない


ガレスピーの時間は、逮捕される前で止まっている。

今も彼は昔の馴染みの整備工場に、昔と同じ様に顔を出す。

彼の若い頃の友達には妻や子供が居て、子供も大きくなっている
それが生きがいだ。

だが、ガレスピーにはそれがない。

それでも『逮捕される前』に顔を合わせた整備士仲間たちは言う
『こいつが来ると和むからさ』

ゴットシーはガレスピーとの出逢いで、えん罪をかけられた人々の就職先だけでなく精神的ケア、自立にも時間を割くようになった。

そんなガレスピーの人生の第一歩がこれだった。
夢のキャンピングカーの実物が完成したのだ。
『マジかよ、作ってしまった』
聞けば内装も全部手作りだという。



最初に担当したガレスピーの事件でゴットシーが考えさせられた事がある。

直感を信じるな、客観を大事にしろ

弁護する上で大事なのは、依頼者を客観的にみながら結びつきを大事にすることだ。

依頼人は人間としての尊厳を奪われている。

我々弁護側が出来るのは、それを取り戻す事。

逮捕容疑はドラッグ売人殺害だったチャールズ・ジャクソン。
40年の刑だったが冤罪が判明、27年で釈放された。


彼は、ありとあらゆる断崖に弁護依頼を書いたが引き受けたのはゴットシーだけだったという。



ゴットシーの調査の結果、目撃証言をした人が

犯人の顔は判らない

…と言っていたことが判明したのだった。

ゴットシーの活躍ぶりには、かつての同僚である連邦検察官を目を見張る。

ベテラン検察官のロン・オブライエンは。冤罪事件でゴットシーと対決した事がある検察官の1人。

信頼に足る男

他の弁護士になら言わない

判決に間違いがある事を思い知った、目を見開く事を教えられたと言うオブライエン。

ゴットシーの活躍は同僚の弁護士たちから『不屈の男、不可能を可能にする男』と言われる。

司法制度は間違いを犯す事があると厳しく批難するゴットシーは、世界各国ではじまったイノセンスプロジェクトで、

冤罪の要因は世界各国共通している部分があり

一番多いのは間違った証言や告発、二番目に多いのが検察や警察の不正行為


…という。

これらが、残りの冤罪を生み出す原因となる、犯人識別の誤り、科学的証拠の誤り、虚偽自白に結びつくと言う。

ドキュメンタリーは、スミスの冤罪が'19年11月の再審で無罪になる所で終わっている。

現在のスミスと、ゴットシーの妻、ミシェルの写真がこちら。
スミスはイノセント・プロジェクトの手伝いをしている。

ドキュメンタリーの中で、ゴットシーは無罪を証明する為の裁判が棄却され希望を失いそうになるスミスを励ます為、
オンラインチャットの場に、スミスの息子、クーロンを呼び出した。

クーロンは撮影当時20歳。
事件があった当時はあまり記憶になく幼い頃から父が獄中にいたため祖父母の手により育てられ奨学金で大学に行った

クーロンはオンラインカメラ越しに見る父親に語り掛ける

『僕なら大丈夫、周りの人のおかげで道を踏み外す事はなかったから』

だが、こんな例は稀ではないだろうか。

ゴットシーは、スミスの様な冤罪を生み出さない第一歩としてオハイオ州で『DNAの保管期間』の改定を求め認めさせた。

それまでは犯人のDNA保管期間の設定はいい加減で、極論

警察側が、いつ破棄してもよい様になっていた。

ゴットシーは、受刑者が釈放されるまで保管する事というように改定した。

が、警察側が素直に応じるはずもない。

現在もゴットシーは別の事件で終身刑になっている男性が使ったとされる拳銃から別人の指紋がでて冤罪と分かったものの、 オハイオ州警察が証拠品のDNAを破棄していた為、捜査が打ち切られてしまったのだ。
これでは冤罪を解く事ができない。

ゴットシーは言う。

警察も検察も。やり方を変えない。
自分たちのやり方から抜け出せないからだ。

自分は常に正しいから一歩ぬけだし、

挑戦し続ける事、不可能と思う事を可能にする事が、イノセンス・プロジェクトを続ける意味なのだというゴットシー。

彼に学ぶ事が多かったドキュメンタリーだったと思う。