新宿でやっていた時期は見逃して、柏まで行きました

あまり有名ではないですが、
それでも行ってよかった~、の一本です

以下、内容に触れています

主人公は、小学生の女の子ソウォン。
工場で働く父親ドンフンと、文具店を営む母親ミヒの一人娘。同級生のヨンソクと憎まれ口を叩きあったり、忙しい両親を気遣ったり…序盤はありふれた家族の日常が描かれます。ミヒとママ友?たち、父親と工場長、アニメ「ココモン」を観てにこにこのソウォン…。
ところがある雨の朝、ミヒの言いつけを守り大通りを使ってひとりで登校したソウォンは、ひとりの男に傘を貸してくれと頼まれる。怯えながらもつい傘をさしだすソウォンは、そのまま痛ましい暴行事件の被害者になってしまいます。ソウォンは忙しい両親でなく、警察に自力で通報、一命はなんとか取り留めるのですが…
事件後のソウォンと、家族やまわりの人たちの歩みを中心に描いた映画。
久しぶりに、映画館でめちゃくちゃ泣きました。
痛々しい話の中にも、光るものが。
人工肛門の手術までしたソウォン。マスコミにも追われるなか、事件後は精神的にも深く傷つき、父親さえも怖く感じるようになります。そこでドンフンは、ソウォンが大好きなソーセージとサル?のキャラクター「ココモン」の着ぐるみを着るんです。
ココモンとして振る舞い、病院で、学校で、懸命にソウォンをはげますドンフン。ココモンとしてはじめてソウォンと筆談するシーンは忘れられません。ソウォンはそんなココモンに心を開きはじめます。短い休み時間に走って学校の校庭に行く姿や職員室での姿…ドンフンが懸命にソウォンを笑わせようとする、なりふり構わない様子は、見ていて胸を締め付けられました。
人工肛門の音をカムフラージュする、アメ入りポシェットの贈り物も素敵だった。
ついにソウォンがココモンの着ぐるみを外すシーンは、涙が止まりませんでした。
そして裁判のシーンにつながっていきます。ソウォンの「帰ろう」の言葉にまた号泣。
未来へ向かうソウォンの力強さと、それを支えるたくさんのあたたかさ。ソウォンのまっすぐさは、ドンフンの支えでもあったんですね。「つかまえなきゃ」と言ったソウォンをとにかく信じたのもドンフンでしたね。
犯人は本当に憎く、やるせないですが…
そんな風に、
ドンフンとソウォンがメインで描かれるのですが、まわりの人たちが本当いい人で。事情を察し、中古のココモンを出してきた着ぐるみ屋さん、カウンセラーや工場長、
ヨンソクやそのおかあさん。
ミヒとヨンソクママの病院のシーンも号泣。あなたを待ってたのに、と泣くミヒが、甘え、本音で話せる相手がいたことに安心しましたね。ミヒは母親として、ドンフンとはまた違う感情もあったでしょうし、大通りを通れといった、ひとりで行かせた後悔もあったでしょう。
あの朝一緒に登校しなかった責任を感じるヨンソクをなぐさめる、ドンフンのシーンも言わずもがな。
ドンフンに当然とばかりにお金を貸す工場長もかっこいい。
病院から帰ってきたソウォンが、文具店一面に貼られた同級生の手紙や絵を見るシーンも素敵だった。
簡単ではない道のりを、たくさんの人の苦しみや優しさが導いてくれる。
新しくできた弟とソウォンの場面はやわらかい希望に満ちていました。それまでの過程を思い返すと、本当に尊く感じられました。
不気味な雨、空き瓶、空を舞う凧やソウォンがつくる飛行機…。引きこまれる画面がたくさんありました。
そしてソウォン役の子役さんもとてもよかったです。せりふ回しはわからないけれど、ひとつひとつの表情がきちんとソウォンの気持ちを語っていた。「親切にしたのに…」のくだりは、切なかったし、まっすぐ何かを突きつけられた気がしました。ドンフンももちろんよかった!
個人的には2014年で1、2を争うよかった映画です。
明るい話ではないけれど、おすすめ。
私もまた観たいです。
「幸せに生きていく それが最大の復讐」
がコピーとして使われていますが、そう思えることの強さ、思えるまでの葛藤、さらにはその中の、人と人とのかかわりあいを、丁寧に描いた作品でした。
あの一家が、しあわせでありますように!