水蜜桃と毒林檎 -44ページ目

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翌日の新聞にもその記事が載っていた。記事の終わりに「告別式および献花式は七日に築地本願寺にて」という一文があった。

築地本願寺って何処だろう。でも、とりあえず行こう。

母にその旨を伝えた。七日は学校がある。あたしは当時短大受験を控えていて、受験の推薦枠に入るために勉強&無欠席を頑張っていた。学校は滅多に休めない。また、母とはXを巡って何回も対立した。Xは不良の音楽と思っていた古めかしくてカタイ人だから、許せなかったらしい。

しかし、ずっと無表情のままで食事も摂らず、憔悴しているあたしの姿を見たせいか、母は意外にも協力的だった。あたしを街に連れ出し、服を買ってくれた。築地本願寺に着て行く服を全身トータルで。ベビーピンクの柔らかいカーディガン、ベビーブルーのキャミソール。下は黒のシフォンスカート。

その後電気屋に行った。そして母がケイタイを買ってくれた。夜通し並ぶ事になるから、何かあったらいけないという理由で。実はそのちょうど一ヶ月前、武道館に某ライヴを観に行った帰りの電車が大雪でストップしてしまい、山梨の駅で一晩過ごす羽目になったからだ(極寒の待合室で一晩過ごした…)。野宿の連続なので、母が案じて買ってくれたのだった。まだ周りが誰もケイタイなんて持っていない時期に、一足早く持つきっかけになった。だから、それがケイタイライフの始まり。

ゴールデンウイークの連休が終わり、数日ぶりに学校へ行った。皆と普通に過ごした。帰る直前になり、友達に「明日、行って来るから」とだけ言った。主語が無いその言葉にも関わらず、皆が瞬時に理解してくれた。

後で聞いた話によると、皆すごく心配してくれていたらしい。どう接しようか考えていたとか、あたしがファンクラブの入会案内を嬉しそうに見せた姿を思い出して泣いてくれたとか。特にファンじゃない友達でも、いっぱい泣いたと言ってた。また、クラス中が気を使ってくれていたらしい。誰かが「そういえば!」って大声で話し始めようとすると、「naoちゃんに聞こえるから静かに!」って止めてくれてたんだって。あんまり仲良くない人達までもがそんな風にしていてくれたと聞いて有り難かった。

その日は帰宅すると、母に購入を頼んでおいた白いカーネーションの花束がちゃんと準備してくれてあった。母が花屋に買いに行ったら、店のおじさんが笑いながら「まさかhideとかいう人の分じゃないよね~」と冗談ぽく言って来たので、母は「…そのまさかです」と答えたらしい。

お風呂に入り、着替え、花束を抱え、あたしは夜8時に新宿行きの特急に乗った。

一路、築地本願寺へ。

青空、hide ①

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今年もまたこの日が来ました。
今日は晴れて、綺麗な青空が広がっています。

*********

1998年5月2日。
突然、我が最愛のロックスター、hideがいなくなった。

悲報を知ったのはバイト先にて、後輩から。当時私は高校生。
「先輩、ショック受けるかもしれませんが…」って切り出されたのが、その話だった。夜8時頃だった。

バイトを終え、家に向かって夜道を独り歩いた。「さっき言われた事は何だろう」と、ただぼんやり考えていた。

家に着くと、部屋にへたりこんで座っていた。何時間もそのままだった。

友達や先輩から電話が相次いでかかって来る。皆心配してくれていた。皆とはいつも通りに話をして切った。

正直、よくわからなかった。身近な人を亡くした経験が無かったから、それがとても虚しいとか悲しい事だというのが、その時はまだ理解出来なかった。何よりも信じられなかった。


「ファンクラブ・JETS発足!」

「いよいよZilch解禁!」

「hideのオールナイトニッポンRスタート!」

「今年のMLJは水着で参加して遊べる内容に!」

「PSYBORG ROCKと呼んでいる新しい音楽を極めて行く」


…いよいよフルに動き始めるhideちゃんに、ひたすらワクワクしていたんだ。Xは少し前に解散してしまったけれど、解散ライヴで泣き明かした日の翌朝に、新聞広告一面を使って「hide始動!」ってバーン!と打ち出して、悲しみから一転笑顔にしてくれたんだよ。

ファンクラブの案内が届いたら即申し込んで、帰国するって聞いてた4月の終わりは 東京方面の空をずっと眺めていた。同じ国内にいるかと思うだけで嬉しかった。


これからは思う存分hideちゃんを追いかけよう!短大受験が待っているけど、それを励みに頑張ろう!と思っていた。そして短大に行ったら勉強三昧の高校時代よりもhideちゃんに時間を費やそうと決めていた。

今思うと完全に依存だけど。あたしが生きる理由は全てhideちゃんにあった。好きで、好きで、たまらないから。音楽が最高で、カッコ良くて、面白くて、優しくて、たまにちょっとワルくて…最高のロックスター。



そんなhideちゃんが、あの日突然いなくなった。


5月2日 前日

今日は良い天気で、青空が綺麗でした。
ベビいちと二人で出掛けました。思い付きで隣街まで行ったんだけど、楽しいひと時でした。ベビいちと二人の外出にもすっかり慣れたなぁ。外出先でのおやつをスマートにあげられるようになりました。最近ベビいちはタマゴぼうろをひょいひょいつまんで食べるのが好きです。


今年もこの時期が来ました。明日はhideちゃんが 旅立ってしまった日。明日は築地本願寺で13回忌の献花式がありますが、あたしは不参加です。状況的に、やはり行けません。

この時期は悲しくなります。道ですれ違った霊柩車に震え、テレビに映った無関係のお葬式映像にも泣いてしまいます。


昨日の午後は、懐かしい物を観ていました。テレビ番組を録り溜めたビデオを、友達に頼んでDVDにダビングしてもらったもの。

久々に「Xwithオーケストラ」を観ました。ROSE OF PAIN ってやっぱりいい。

ワイドショーの映像に、こんなシーンがありました。
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おはようナイスディ。左からSUGIZOくん、HIDEちゃん、東海林さん。ルナシーの紹介をしてます。今やそのSUGIZOくんが、Xのメンバーなんだもんなあ。

あたしはやっぱり、この頃のHIDEちゃんがとても好き。ピンクでPOPなhideちゃんも好きだけど、ゴシックでMADなギタリストのHIDEちゃん。それが自分の初期衝動だし。会いたくて切ない。


その後、Mステ。Toshiくんソロ。ギターでHIDEちゃんも参加。
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見づらいけど、右がHIDEちゃん。
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この頃は良かったな。最近のToshiくんの姿が脳裏をよぎって、また切なくなる。複雑な気持ちで観ました。


最後に…

あたしは一つの友情を失ったみたい。ずっと続いていくと信じて疑わなかった友情。そんな物でも壊れるもんなんだなぁ。必要とされなくなったら仕方ないよね。原因はあたしにもあるし。言葉が足らなかったんだと自分を責める。でも、あたしなりに一生懸命だったんだよ。


色々悲しい。でも、涙が出ない。悲しみへの耐性が付いたんだな。