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ゆうママ@チーズのブログ

自分の記録用にゲームのレポ書いてます♪
のんびり更新しています(^^
ネタばれ注意です

偽シリウス海賊団の詳しい情報を得るため、私とナギさんは街で聞き込みをしながら、大きな公園へとたどり着いた。

ユウ「やっぱり…そう簡単にはいい情報は得られないですね」

ナギ「…すぐに見つかったら苦労はしないだろう」

ユウ「ですね…」

公園に足を踏み入れると、奥の方に一軒の屋台を見つけた。

ユウ「この香りは…」

ユウ「なんだか美味しそうですね」

ナギ「…ああ」

香りが漂う方向に思わず足が進んでしまう。

そこには『おでん』という文字が大きく書かれたのれんが見えた。

ユウ「わあ、おでんだ!」

ナギ「…なんだ、おでんって言うのは」

ユウ「ナギさん、知りませんか?」

ナギ「…ああ」

ユウ「あんまり有名ではありませんけど…」

ユウ「とってもおいしいお料理なんですよ」

ナギさんと話ながら、おでんの屋台へと近づいていく。

中を覗き込むと、美味しそうなおでんがぐつぐつと煮込まれていた。

ユウ「わあ!熱々で美味しそう!」

ナギ「…うまそうだな」

おじさん「なんだ?」

おじさん「お前ら、客じゃねーならさっさと失せろ」

ユウ「えっ?」

おじさん「商売の邪魔だ。食う気がねーなら出てけ」

ユウ「す、すみません…」

ユウ(客商売なのに、すごい言い方…)

ナギ「ユウ、この白いのはなんだ?」

ユウ「あ、それは、はんぺんですよ。こっちのはがんも、これはつくねです」

ナギ「材料はなんだ?」

ユウ「はんぺんはお魚のすり身が材料で、がんもは…」

私の話を熱心に聞くナギさんの横顔を眺めながら、ハッとする。

ユウ(早く屋台を出て行かないと またおじさんに怒られるよね……)

ユウ(しかも、見ていたら食べたくなってきたし……)

ユウ(でも今は、偽シリウス団の情報を集めないと…)

ユウ「ナギさん、そろそろ行きましょうか。お仕事の邪魔をしても悪いので……」

ナギ「…」

その時、ナギさんがふと何かに気づいたように視線を落とす。

すると、すぐ近くにあったイスに私を座らせた。

ユウ「えっ!ナギさん?」

ナギ「適当でいいか…」

ユウ「えっ?」

ナギ「俺の好みで頼むぞ」

ユウ「もしかして、食べていくんですか!?」

ナギ「ああ…腹減ってるんだろ」

ユウ「で、でも……今は偽物の情報を」

ナギ「ちょうど昼メシ時だ…あいつらもどこかで食ってる頃だろ」 

ナギ「親父、そのがんもとつくねと……」

私の心配をよそに、ナギさんが注文を始める。

おじさん「ほらよ」

ユウ「あ……」

ナギ「…」

ナギさんは、私の代わりにおじさんから熱々のおでんが入ったお皿を受け取ると、私の前に置いて、さらにお箸まで手渡 してくれた。

ユウ「…ありがとうございます」

ナギ「…熱いから気をつけろよ」

ユウ「はい!いただきます!」

ユウ(実は食べたかったこと)

ユウ(ナギさんが気づいてくれたんだよね…)

ユウ(なんだか嬉しいな)

ユウ「あふっ!」

ナギ「…!」

でも勢い込んで食べたせいか、おでんの熱さにむせてしまった。

あまりの熱さに、言葉を発することもできなくなる。

ユウ「……っ!」

ナギ「…だから言っただろ」

ナギさんは呆れた顔をしながらも、さりげなく水を手渡してくれた。

ユウ「あひがとうございまふ…」

ナギ「…」

ナギ「…喋るなら食ってからにしろ」

ユウ「…」

ナギさんの言葉に大きく首を縦に振ると、ナギさんはなぜか私のお皿を手元に寄せた。

ユウ(おでんなんて久しぶりに食べたから、熱いってこと忘れてた…)

ナギ「ほら…こうやって小さく切って食え」

ユウ「あ、すみません…」

ユウ「私は大丈夫です。ナギさんも冷めないうちに食べて下さい」

ナギ「…ああ、分かってる」

ナギ「…ほら」

ユウ「えっ!?」

ナギさんは一口大にされたはんぺんに息を吹きかけると、私の口元へと差し出した。

ユウ「あっ!あの…」

ナギ「…また火傷したら大変だろ」

ユウ「す、すみません…」

ユウ(これ、『あーんしろ』ってことだよね…)

ユウ(ナギさんは全然意識してないみたいだけど…)

ユウ(目の前にはおじさんもいるし、ちょっと恥ずかしいな…)

それでもナギさんの好意を断るのも悪いと思い、思い切ってはんぺんを口に入れた。

ユウ「ん!おいしい!私が作ったのよりずっとおいしいです!」

おじさん「当たりめーだろ!こっちは商売でやってんだから」

ユウ「ナギさんも食べてみてください!」

ユウ「はい!」

ナギ「…」

ナギさんにしてもらったのと同じように、私も一口大のはんぺんをナギさんに差し出す。

ナギ「…俺のことはいいから、お前は自分のことだけやれ」

ユウ「え…は、はい」

ナギ「他のも食べるか?ほら、口開けろ」

ユウ「も、もう一人で食べれますから!」

慌てて首を振ると、テーブル越しにおじさんのため息が聞こえてきた。

おじさん「ったく…最近の男は軟弱になったもんだな」

ユウ「え?」

おじさん「女に気を遣って……みんなそんななのか?」

ナギ「…」

ユウ(た、確かに…私たち、今かなり恥ずかしいことしてた?)

ユウ(船の中とか、誰も見ていないところじゃないんだから…)

ユウ(おじさんの言うとおりだよね…)

顔を真っ赤にする私の横で、ナギさんはいつも通り、特に気に留めた様子もない。

でも、おでんを一口食べると、その表情がパッと変わった。

ナギ「…うまい」

ユウ「ですよね!」

ナギ「これは…出汁が違うのか?」

おじさん「いろんなの使ってるからな。それに、毎日煮込み続けてる」

おじさん「年季が違うんだよ」

ナギ「これ…作り方教えてもらえないか?」

ユウ(ナギさんが自分からそんなこと言うなんて珍しい…)

ユウ(それだけ、おでんが気に入ったのかな)

おじさん「はあ?バカなこと言うんじゃねーよ」

おじさん「そう簡単に教えられるわけねーだろうが」

ナギ「…なら、この出汁の取り方だけでも教えてもらえないか?」

おじさん「無理だって言ってんだろ! んなことしたら商売あがったりだ!」

ユウ(出汁の取り方、私でも基本的なことならわかるけど)

ユウ(でも、この屋台ならではの隠し味とかあるよね…)

ナギ「…親父、頼む」

ナギ「料理人として知っておきたい」

おじさん「お前、料理人か?」

おじさん「ならわかるだろ、他人に教えられるもんじゃねーってのは」

ナギ「…」

その時、ガタン!と大きな音がして誰かが屋台に入ってきた。

男「おい、金は用意しただろうな」

おじさん「メギ…!」

ユウ(な、なに、この人…)

ナギ「…」

ナギさんは私の腕を掴むと、無言で自分の後ろ側へと私を引き寄せた。

男「ふん、こんな時間に客か」

男「こんなしけた屋台で食うなんて、よっぽど暇なんだな」

おじさん「メギっ!」

ナギ「…」

男「ほら、さっさとしろ」

おじさん「……」

さっきまでのおじさんの勢いは消えて、おじさんは黙ってお店のお金を男に手渡した。

男「ちっ…これだけか。少なすぎんだろ」

おじさん「今はそれしかねえ」

男「まあいい、また来るから、そん時はもっと用意しとけよ」

私たちに目もくれず、男はそう吐き捨てると屋台から出て行った。

ユウ「おじさん、大丈夫ですか…?」

ナギ「…ショバ代、ってヤツか?」

おじさん「…そんなんじゃねえ」

ユウ(さっきまであんなに威勢のよかったおじさんが、黙ってお金を渡すなんて)

ユウ(それに、名前呼んでたよね…… 『メギ』って)

ユウ「もしかして……おじさんの息子さん、とか?」

おじさん「……ふん」

ナギ「息子……」

ナギ「…だからって、稼いだお金を簡単に渡すのは間違ってるだろ」

おじさん「…仕方ねーんだよ。 これも自分でまいた種だ」

おじさん「ずっと店が忙しくて、あいつには構ってやれなかったからな」

ユウ「でもそれは、おじさんのせいじゃ……」

おじさん「母親が生きてたうちは、まだよかったんだ」

おじさん「数年前に病気で死んでから、悪い仲間とつるむようになった」

ナギ「それで、あんたに金をせびりに来てるのか」

おじさん「…お前らには関係ねえ。食ったならさっさと帰れ」

ナギさんと私は、思わず顔を見合わせる。

私たちは、ひとまずお代を置いて、その屋台をあとにした。


おなかはいっぱいになったけれど、何となく胸がもやもやしていた。

ユウ「なんだか悲しいですね。 実の親子なのに、あんな…」

ナギ「…あの親父が言ったように、俺達には関係ない」

ユウ「そうですけど…」

ユウ(でもナギさんだって、なんだか難しい顔してる)

ユウ(関係ないし、私たちにはどうすることもできないって)

ユウ(わかってるけど…)

ナギ「…おい」

ユウ「え?」

ナギ「あれ…さっきの息子じゃないか」

ナギさんが指した方を見ると、おじさんが『メギ』と呼んだ あの男が歩いてる。

ユウ「ほんとだ…どこに行くんですかね」

ナギ「あのホテルに入るみたいだな」

ナギさんが言ったように、メギさんは近くの怪しげなホテルへと消えた。



(選択してください)

A:追いかける


ユウ「ど、どうしましょう、追いかけますか?」

ナギ「別に、あいつは俺たちが追ってる偽物じゃない」

ナギ「追う必要もないだろ」

ユウ「そうですよね…」

ユウ(でも、気になんだかなって… おじさんに教えなくてもいいのかな)



B:ナギを見る



ユウ「ナギさん…」

どうしようかとナギさんを見ると、静かに首を振った。

ナギ「どうしようもない。あの親父に頼まれたわけでもないし」

ユウ「ですよね…」





C:待ち伏せする



ユウ「ここで待ち伏せしましょうか」

ナギ「いつ出てくるかもわからないし、そんなことする必要もない」

ナギ「あの親父に頼まれたっていうなら別だけどな」

ユウ「そっか…そうですよね」



何となく後ろ髪を引かれつつ、私たちは皆との待ち合わせ場所へ向かった。

みんなと落ち合うと、今日一日調べた結果の報告をし合う。

ソウシ「結局、誰も有力な情報はつかめなかったみたいだね」

トワ「みんな、偽シリウスがどこから来て」

トワ「どこを根城にしてるのかも知らないみたいですね」

ハヤテ「つーか…お前ら、大事なこと忘れてねーか?」

ユウ「大事なこと?」

ハヤテ「メシだよメシ!俺はもう腹減って死にそうだ!」

シン「報告が済むまで待てないのか…」

ハヤテ「待てねーよ!もう限界だ!」

シン「…まったく、どうしようもない奴だ…」

リュウガ「ハヤテ…」

リュウガ「俺もだ!」

ソウシ「船長…」

ナギ「これから帰って夕飯の支度となると、かなり遅くなる…」

ハヤテ「ダメだ!ナギ兄、なんとかしてくれよ!」

リュウガ「そりゃ、待ってらんねーな!」

シン「ガキですか…」

ユウ「あ、そうだ!ナギさん、あの屋台に行きませんか?」

ナギ「…」

ソウシ「屋台?」

ユウ「昼間、ナギさんといい屋台を見つけたんですよ」

ナギ「俺はそれでいいが、お前、飽きないのか?」

ユウ「全然です!だってすごくおいしいおでんでしたから」

ハヤテ「おでん?なんだよ、それ」

トワ「おでんなんて聞いたことないですね」

トワ「僕も食べてみたいです!」

リュウガ「おい、酒はあんのか?」

ナギ「…たぶん」

リュウガ「よし!そうと決まれば今すぐ行くぞ!」

リュウガ船長の掛け声で、私たちはおじさんの屋台がある公園へと向かった。

公園に戻ると、おじさんの屋台はまだ営業しているようだった。

ユウ「あの…こんばんは」

おじさん「なんだ、お前ら!また来たのか」

リュウガ「親父!酒をくれ!」

ハヤテ「すげーいい匂いだな!」

トワ「ユウさん、これ、なんですか!?」

ユウ「これはおでんって言って…」

みんなで大きなテーブルを囲むと、おじさんに適当によそってもらったおでんをつつく。

ソウシ「これは……おいしいね」

リュウガ「ああ、酒にもよく合う」

ハヤテ「親父、おかわり!」

トワ「僕、次は違うネタ食べてみたいです!」

シン「…確かに悪くない。これは船でも作れるのか?」

ナギ「作り方が分かればな」

リュウガ「よし、親父!ナギに作り方を伝授してやってくれ!」

おじさん「お前もか……昼間も言ったが」

おじさん「見ず知らずの奴に教えられるかってんだ」

リュウガ「まあ、そう言うな!タダでとは言わねえ!」

リュウガ「何か欲しいもんはねーか?」

リュウガ「俺たちがそれを手に入れてやる!それと引き換えだ!」

おじさん「欲しいもん、か……?」

みんなにおかわりをよそおいながら、おじさんが考えるしぐさを見せる。

おじさん「そこまで言うなら……俺の息子のメギを更生させてみろ」

リュウガ「メギ?」

ナギ「…昼間の男か」

おじさん「…ああ」

ユウ「それって…」

おじさん「それができたら、喜んで教えてやる。隠し味付きでな」

リュウガ「乗った!」

ユウ「ええ!?」

ナギ「…」

ユウ「ナ、ナギさん…」

ナギ「…今回ばかりは船長に同意見だ」

ナギ「…あいつらにもそうだが」

ナギ「…お前に、船の中でも おでんを食わせてやりたいからな…」

ユウ「ナギさん…」

ユウ(確かに、おでんの作り方は教えて欲しいけど……)

ユウ(あの息子さんを更生させるって、そんなことできるの!?)

リュウガ「おい、こりゃぁ、どうなってるんだ?」


宝の地図を手掛かりに降り立った島は、ひどく荒らされていた。


店の扉は破壊され、道端には、へし折られた看板や空き缶の破片が散らばっている。


ユウ(ひどい…一体、誰が…)


シン「どう見ても、人の手によるものだな」


ソウシ「なんてひどい事を…」


ハヤテ「荒くれ者でも出たのか?」


ハヤテ「それとも盗賊か!?」


辺りを見渡すと、壊された町を人々が必死で直していた。


トワ「もう見ていられません!」


トワ「僕たちも手伝いましょう!」


ハヤテ「そうだな!」


ハヤテ「おい、俺たちも手伝うぞ!」


ユウ「あっ、私も手伝います!」


私たちは、一番近くにいた街の人たちの傍へと向かった。


ユウ「私たちにも何か手伝わせてください」


街の人1「お前ら手伝ってくれるのか!? ありがてぇ!」


街の人1「まったく、なんで俺らがこんな目に…」


リュウガ「いったい誰にやられたんだ?」


街の人2「海賊だ」


シン「海賊?」


街の人1「ああ、あの有名なシリウス海賊団だ」


街の人1「最近この近辺では」


街の人1「シリウス海賊団が島を襲い宝を奪ってるって噂があったが」


街の人1「まさかこんな島にまで来るとは…」


ハヤテ「はあ!? 嘘つくんじゃねーよ!」


街の人1「嘘じゃねえ!」


ナギ「そいつらが名乗ったのか…?」


街の人2「ああ! シリウス海賊団参上ってな!」


街の人2「あいつら、何度もやって来てはそのたびに街を荒らしやがって…!」


ハヤテ「ふざけるな、俺たちはそんな――」


リュウガ「ハヤテ、待て」


リュウガ船長がハヤテさんを止める。


リュウガ「お前ら、そいつらの顔は見たか?」


街の人1「いや、はっきりとは… でも、確か…6人組で…」


街の人2「そういえば、姿恰好が 全員あんたたちに似てるような…」


街の人たちが、私たちをじっと見つめる。


トワ「えっ!」


トワ「僕たちは違います! 僕たちは街を襲ったりなんてしません!」


街の人1「…あんたら、余所者だな? この島に何しにきた…?」


ユウ(どうしよう、町を襲われて警戒心が強くなってるんだ…)


ユウ(もしシリウス海賊団だってバレたら…)


ソウシ「船長、ここは一度船に戻ったほうが…」


リュウガ「ああ、そうだな…」


疑いの目を向けられると、私たちは急いでシリウス号へと戻った。




ハヤテ「どーいうことだよ!」


ハヤテさんが食堂のテーブルを叩く。


トワ「これって、偽のシリウス海賊団ってことですよね」


シン「俺たちの名を騙るとはな…」


ソウシ「どうしますか? 船長」


リュウガ「……」


ハヤテ「そんなの決まってるだろ!」


ハヤテ「俺たちの名前を勝手に使って、好き勝手してるのを」


ハヤテ「放っておけるかよ!!」


リュウガ「ハヤテの言うとおりだ」


リュウガ「町を襲う偽物を、黙って見過ごすわけにはいかねぇな」


リュウガ「まずは、偽物の情報を集めろ」


リュウガ「話はそれからだ!」


こうして、みんなは情報収集へと向かった。



――数日後。


ソウシ「――という事です」


甲板から街を見下ろしながら、ソウシさんが報告を終える。


リュウガ「それで全部か…」


リュウガ「なんだ、いくつもあるんだな…」


ソウシ「はい。隠れる気がないのか、情報だけは多いですね」


ユウ(偽物が目撃された場所、方角がバラバラなんだ)


ユウ(みんなで確認してたら、時間がかかりそう…)


リュウガ「よし、手分けして、偽シリウスを追う!」


リュウガ「それぞれ、情報を得た場所へ向かえ!」


リュウガ「何か分かったら、他の奴らに報告しろよ!」


リュウガ船長の言葉に みんなが頷く。


ユウ(私も足を引っ張らないように頑張らないと…!)


そう意気込んだ時、私の目の前に手が差し伸べられた。

険しい山道をナギさんと手を繋いで歩く。

遺跡を離れてからずっとナギさんは私を離そうとはしなかった。

ユウ「ナ、ナギさん?」

ユウ「あの…皆もう行っちゃいましたけど」

ナギ「ああ、そうだな」

ユウ「私たちも、もっと急がないと…」

ユウ「わっ!」

転びそうになった所を、腰を持ち上げられ支えられる。

平らな場所へ下ろされると、また手を握られた。

ナギ「気をつけろ、余所見してると転ぶぞ」

ユウ「だ、大丈夫です…!」

ナギ「いつもは転ぶだろ」

ユウ「それは…そうですけど」

ナギ「そんな事じゃ、いつまでたっても俺は守れねえぞ?」

ナギさんは私を見て楽しそうに笑う。

ユウ「…守ります」

ユウ「いつかきっと私がナギさんを守ってみせますから」

ナギ「そうか…」

ユウ「はい、そうですよ」

繋がれた手をギュッと握り返す。

ユウ「手、離しませんから…」

ユウ「覚悟してくださいね」

ナギ「な…」

顔を覗きこむと、ナギさんは頬を赤らめて空を見上げた。

その瞬間――

ナギ「!!!」

足を取られたナギさんが斜面を一瞬すべる。

ユウ「あ、危ない!!」

グイッと引っ張り、間一髪のところで転ぶのを免れた。

ユウ「危なかった…」

ユウ「ふふ、ナギさんこそ、余所見してると転びますよ?」

ナギ「……」

ナギさんは体勢を立て直すと真剣な表情で私を見つめる。

ナギ「…俺はお前を離さない」

ナギ「たとえ今後どんな事が起こっても、絶対にお前を離さない」

ユウ「え…」

ポンッと頭を撫でられると、ナギさんはそれ以上、何も言わずに歩き出す。

(私も…もう絶対ナギさんのそばを離れません…)

一緒にいられることの幸せを感じながら、ナギさんの手を強く握り返した。

シリウス号に戻ると、私たちは宴の準備に追われていた。

ナギ「ユウ、野菜は切り終わったか?」

ユウ「すみません、まだです」

(仕事になるとナギさんは厳しいからな…)

(よし、頑張らなくちゃ!)

鍋でお湯を沸かしながら、野菜を切り始める。

と、その時――

???「あっ、ユウさん!」

???「ここにいたんですね!」

廊下を走ってくる音が聞こえ振り向くと、トワくんが慌てた様子で厨房に顔を出した。

トワ「予備のランプってどこに片付けましたっけ?」

トワ「数が足りないんですよ」

ユウ「えっと、あれは確か…」

ユウ「倉庫の棚、上から二段目だよ」

トワ「ありがとうございます!」

トワ「じゃあ、酒樽を運んだ後に…」

ユウ「大丈夫?」

ユウ「もし急ぎだったら私が代わりに…」

ナギ「待て」

ユウ「え…わっ!」

突然、後ろからナギさんに腕を引かれ抱き寄せられる。

ナギ「トワ、ハヤテを使え」

ナギ「あいつはどうせ暇してるだろ」

トワ「た、確かにそうかもしれませんけど…」

ナギ「こいつは俺の手伝いがある」

ナギ「そっちはそっちでやってろ」

ユウ「え、でも…」

ユウ「ハヤテさんが手伝ってくれるわけ…」

ハヤテ「おーい、ナギ兄!」

ハヤテ「何か食うもん…」

ハヤテ「って…あ?」

ハヤテ「な、何だよ…皆でこっち見て…」

厨房に顔を出したハヤテさんが、怪訝そうな顔でこちらを見る。

ナギ「いい所に来たな」

ナギ「ハヤテ、お前はトワを手伝え」

ハヤテ「は?」

ハヤテ「何で俺が…」

ナギ「やらなきゃメシ抜きだ」

ハヤテ「!!!」

トワ「す、すみません、ハヤテさん!」

トワ「点検の途中なのに…」

ハヤテ「トワ!行くぞ!」

ハヤテ「メシ抜きなんて、ぜってー無理だからな!」

ハヤテ「すぐに片付けてやる!」

トワ「あっ!」

トワ「ハヤテさん、待ってくださいよー!」

ハヤテさんが走り出すと、トワくんもそれを追いかける様に慌てて厨房から出て行った。

ナギ「……」

ユウ「あ、あの…」

ナギさんは私を抱き寄せたまま動かない。

ナギ「…お前はここにいろ」

ナギ「今日だけは俺の目の届くところにいてくれ」

ユウ「ナギさん…」

ぎゅっと抱きしめられると、ナギさんの不安が伝わってきた。

ユウ「…はい」

ユウ「今日はずっとここにいますね」

ナギ「……」

ユウ「野菜、切りますね?」

ユウ「早く準備しないとリュウガ船長がうるさそうですし…」

ナギ「船長は、こんなのお見通しだ」

ナギ「少しくらい遅れたって、今日は何も言わないだろ…」

ナギ「いや、それどころか、からかってくるかもな」

ユウ「……」

ナギ「……」

一瞬、ふたりで考え込む。

ユウ「それはそれで…」

ナギ「嫌だな」

ユウ「ふふ、ですよね」

ナギ「さっさと始めるか」

ユウ「はい」

ナギさんは私を抱き締める腕を緩めると、料理を作り始めた。



その夜。


シリウス号の甲板では盛大な宴が開かれた。

私とナギさんは宴の賑やかさを耳にしながら早々に部屋に戻る。

ユウ「ふう…」

ユウ「まだ終わりそうもありませんね」

ベッドに腰を下ろすと聞こえてくる賑やかな声に微笑む。

ナギ「静かになったら片付けに行けばいい」

ユウ「そうですね」

ユウ「そういえば…」

ユウ「私、ナギさんのお弁当を食べ損なっちゃったんですよね」

ユウ「もったいないことしたな…」

ナギ「…仕方ないだろ」

ナギ「あの時は持って出る余裕なんてなかったからな」

ナギさんはバンダナを外すとベッドに腰を下ろした。

ユウ「私のために色々作ってくれたって聞きました」

ナギ「心を落ち着かせようと、必死に作った」

ナギ「美味いかどうかはわからねえな……」

ユウ「ナギさんの料理は何でも美味しいですよ」

ユウ「ついつい食べ過ぎちゃうくらいに」

ナギ「……」

ユウ「今日の料理もすごく美味しかったです」

ユウ「…なんか思い出したら、また食べたくなってきちゃいました」

ユウ「まだ、残ってるかな?」

ベッドから立ち上がろうとするとナギさんに手をつかまれる。

ユウ「冗談ですよ」

ユウ「もうお腹いっぱいで食べられませんから」

ナギ「俺はまだだ…」

ユウ「えっ」

グイッと引っ張られたかと思うと、勢いよくベッドに押し倒される。

覆いかぶさるようにナギさんが私を見つめ、そっと唇を重ねた。

ナギ「…もう、こうしてお前を抱きしめられないかと思った…」

ユウ「本当にごめんなさい」

ユウ「ナギさんにひどい事を言ってしまって…」

ユウ「あの時は、ナギさんを守る事に必死だったんです」

ナギ「ああ…」

ナギ「お前が船を降りると言い出す前の事を必死で思い返した」

ナギ「何故かお前の泣いている顔が思い浮かんで…」

ナギ「名前を呼ばれた気がした」

ユウ「名前を…」

ナギさんの手が私の頬を優しく撫でる。

ナギ「夢だったのかもしれない」

ナギ「泣きそうな声で、俺の名を呼んでいた気がしたんだ…」

(もしかして、あの時…)

(私の声はナギさんに届いていたの…?)

ナギ「ユウ…俺はお前を離さない」

ナギ「何があってもだ」

ナギ「だから、もうひとりで泣かないでくれ」

ユウ「…ナギさん…っ」

小さく名前を呼ぶと、そっと唇が重なる。

繋いだ手に力を込めたのが合図の様に、キスは深くなった。

(この先もずっと一緒に…もう絶対にこの手を離さない…)

(だからナギさんも私の事を離さないでください…約束ですよ…)

言葉にならない想いを伝えるように、私はぎゅっとナギさんに抱きついた