過去に 「ニオイ」 に関する記事をいくつか書きました。
これらの記事では、主に 「MHC の遺伝子タイプ」 や株式会社ライオンが行った 「洗濯物のニオイに関する意識調査」 で、女性が 「アンドロステノン」 に対してのみ、「明らかに不快」 という反応を示したことについていろいろと考察しています。
この 「アンドロステノン」 という物質は、オス豚の唾液に大量に含まれており、豚の 「雄フェロモン」 ろして知られていますが、人の汗にも含まれており、「ヒトフェロモン」 としての可能性が一番強い物質です。
しかし 「ヒトフェロモン」 の研究は、「フェロモン」 が発見されてまだ50年しか経っておらず、順風満帆とは言えないようです。
ちなみにこの TED の講演で、講演者であるワイアット氏は、実証実験の重要性を説いています。
ごもっともな話ではあるのですが、ここで 「アンドロステノン」 が 「ヒトフェロモン」 であると仮定すると、株式会社ライオンが 「洗濯物のニオイに関する意識調査」 で行った結果は、新たな疑問を投げ掛けて来るのです。
動物であれば、その 「フェロモン」 の嗅覚の信号となって、直接的に相手の 「性欲」 を炊き付けるのかも知れません。
しかしヒトは、想像力ひとつで 「性欲」 を炊き付けることが出来るほどに 「知性」 が発達しています。そのために、「フェロモン」 による嗅覚の信号も、そこから欲情するに至るまでには、「感情」 や 「知性」 といったものが介在しているのではないか、という仮説です。
これは、株式会社ライオンが行った 「意識調査」 において、
「夫の洗濯物のニオイを ”不快” に感じる」 妻の割合は、夫とのコミュニケーションが良好な場合は、5.6% であるのに対し、夫婦間のコミュニケーションが取れておらず、夫に魅力を感じなくなり、夫との会話や一緒の外出も疲れると感じる 「結婚生活ネガティブ型」 の妻の場合は、60.6%と6割にも達していること。
そして
この実験とは別に、株式会社ライオンは、「揮発性ステロイド」 の中で、「アンドロステノン」 に対してのみ、女性は 「明らかに不快」 という反応を示すことを確認していること
があげられます。
ここで何故、女性は 「不快」 に感じるのかを考えると、夫とのコミュニケーションがうまくいっているか否かによって、結果が大きく異なっていることから、明らかにそのニオイの感じ方に 「感情」 や 「知性」 が働いているであろうことが、推測されます。
では、その 「アンドロステノン」 に対して、何故多くの女性が 「明らかな不快」 を示したのか。
それは、「アンドロステノン」 のニオイは、脳波的に、女性を 「覚醒」 させる効果があるということ。もし、「アンドロステノン」 が 「ヒトフェロモン」 であるならば、それは 「性欲丸出しの男」 を意識させている可能性があるわけです。
女性は、嗅覚で無意識にこの 「性欲丸出し男」 の存在を知ったとき、果たして 「欲情」 するものでしょうか?
あらかじめ、そのニオイの持ち主が、自分の好きな男性であることを知っていれば、「不快」 なニオイとは感じなかったかも知れません。
しかし、通常の感覚で言えば、そのニオイが誰のものかもわからないのに、その男が出す 「欲情臭」 を嗅がされたとしたら、「キモ!」 と感じるのが普通でしょう。
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猫に 「マタタビ臭」 を嗅がせたら、猫科の動物は陶酔し始めますが、これは 「マタタビ」 に含まれる 「マタタビラクトン」 という成分によるものだそうです。
動物の場合は、このように 「フェロモン」 が直接その動物の行動に働き掛けますが、ヒトの場合は、「知性」 が発達したことで、「フェロモン」 の直接的な働き掛けが 「知性」 によってブロックされているのかも知れません。
これはあくまでも、個人的な推測であり、そのような学説があるわけではありません。
女性のオーガズムも、動物の場合は、そのオーガズムがメスの 「排卵」 を誘発していたのではないかという説があります。
そのためか、豚などの場合は、「ク/リトリス」 は膣内に存在するのだそうです。
ヒトの場合は直立歩行をすることで、「ク/リトリス」 が膣外に押し出されたのか、あるいは、月経周期で排卵するようになり、オーガズムで排卵する必要がなくなったことで後退したのかは分かりませんが、いずれにせよ、ヒトの場合は、オーガズムと排卵の関係が断ち切られた状態にあるので、女性の 「オーガズム」 は動物だったときの名残りに過ぎないと主張する学者もいます。
もしかしたら、「フェロモン」 に対する感受性も、動物では 「生殖」 に関わる大切な機能ですが、ヒトの場合は、「脳」 そして 「知性」 の発達によって、発情期といった枠組みから解放され、自由に交尾できるように発達してきたのかも知れません。
(つづく)
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