赤ちゃんを授かるヒント、第6回目は「妊娠と漢方薬③」です。

前回と今回2回に分けて、東洋医学的に見て「妊娠しにくい」4つのタイプとそれぞれに使われる漢方薬のお話をしています。

前回は全体的なお話と「脾虚タイプ」を取り上げました。

今回は4つの中の残り3つ、「肝虚タイプ」・「腎虚タイプ」・「瘀血(おけつ)タイプ」のお話です。


○肝虚タイプ

体の不調の原因が肝臓の働きの低下である場合を「肝虚」といいます。

この肝虚によって妊娠しにくくなっている場合をここでは「肝虚タイプ」と呼ぶことにします。

東洋医学では、「肝臓」は主に自律神経をととのえるなどの作用をつかさどり、体全体の調和やバランスをとる働きをすると考えます。

また肝臓の働きはストレスの影響を受けやすいです。

ですから、処方される漢方薬には神経を沈静させる「柴胡(サイコ)」という生薬を含むことがあります。

以下、肝虚タイプに処方される漢方薬名と効能、含まれる生薬を列記します。

・加味逍遙散(カミショウヨウサン)24番
上半身の緊張を和らげ、からだを温め、血の巡りを良くし、余分な水分を排出しむくみを取ります。
加味逍遙散には、血流をよくして体をあたためるもの、上半身の熱をさますもの、痛みをやわらげるもの、無駄な水分を取り除くもの、あるいは滋養作用をもつ生薬などがいろいろと配合されています。

・加味帰脾湯(カミキヒトウ)137番
胃の調子を整え、余分な水分を排出させてむくみを取り、からだの調子を整え、上半身の凝りやのぼせを取ります。
加味帰脾湯には、胃腸を丈夫にし貧血症状を改善する生薬、滋養強壮作用のあるもの、さらに、“酸棗仁”や“竜眼”、“遠志”など気分を落ち着かせる生薬が配合されています。


○腎虚タイプ

体の不調の原因が腎臓の働きの低下である場合を「腎虚」といいます。

この腎虚によって妊娠しにくくなっている場合をここでは「腎虚タイプ」と呼ぶことにします。

東洋医学では、「腎臓」は生まれ持った生命エネルギー(これを「先天の精」といいます)や食べ物の中から取り出した生命エネルギー(これを「後天の精」といいます)を貯蔵しておく場所と考えます。

人間はこの腎臓から必要に応じてエネルギーを取り出して生活をしているのですが、腎臓が弱くなると十分なエネルギーが得られずいろいろな不調が起こってくるのです。

腎虚タイプに処方される漢方薬には虚弱体質や貧血を改善する「地黄(ジオウ)」という生薬を含んだものがあります。

以下、腎虚タイプに処方される漢方薬名と効能、含まれる生薬を列記します。

・八味地黄丸(ハチミジオウガン) 7番
からだを温め、血液の循環を良くし、むくみを取ります。
八味地黄丸の主薬、“地黄”には、貧血症状を改善し元気をつける作用があります。 “山茱萸”や“山薬”にも滋養強壮作用があり、“地黄”の働きを高めます。“茯苓”と“沢瀉”は、水分循環をよくする生薬です。“牡丹皮”は漢方でいう 「お血(おけつ)」を治す生薬で、血行障害を改善し血のめぐりをよくします。さらに、体をあたため痛みをとる“桂皮”と“附子”が加わります。

・六味丸(ロクミガン) 87番
血液の循環を良くし、むくみを取ります。
六味丸は、その名が示すよう、下記の6種類の生薬からなります。主薬の“地黄”には、貧血症状を改善し元気をつける作用があります。“山茱萸”や“山薬” にも滋養強壮作用があり、“地黄”の働きを高めます。“茯苓”と“沢瀉”は、水分循環をよくする生薬です。“牡丹皮”は漢方でいう「お血(おけつ)」を治す生薬で、血行障害を改善し血のめぐりをよくします。


○瘀血(おけつ)タイプ

瘀血とは、血の巡りが悪く、停滞して老廃物が体内にたまり、血液の質が低下している状態です。

4つのタイプの中で最も妊娠しにくい状態と密接に関わっていて、不妊や婦人病の女性には大なり小なりこの症状が見られます。

瘀血を治療するには血の巡りをよくしたり不足している血を作り出したりするのに有効な漢方薬が処方されます。

補血(血の生産・質の向上のこと)効果に優れた「当帰(トウキ)」や冷え性や月経不順などを解消する「川キュウ」などの生薬を含むことが多いです。

以下、瘀血タイプに処方される漢方薬名と効能、含まれる生薬を列記します。

・当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)23番
からだを温め血の巡りを良くし、余分な水分を排出しむくみを取ります。
当帰芍薬散は、主薬の“当帰”と“芍薬”をふくめ、下記の6種類からなります。“当帰”と“川きゅう”には、血行をよくして貧血症状を改善し、体をあたた める作用があります。“芍薬”は生理痛や肩こりなどの痛みをやわらげる生薬です。また、“蒼朮”と“沢瀉”、“茯苓”は、漢方の代表的な利尿薬で、むくみ 症状を改善したりします。

・桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)25番
からだを温め、血の巡りを良くし、余分な水分を排出しむくみを取り、痛みを取ります。
桂枝茯苓丸の構成生薬は下記の5種類です。“桂枝(桂皮)”には健胃作用のほか発散作用があり、のぼせや頭痛によいとされます。芍薬は痛みをとる代表的な 生薬です。そのほか、気分を落ち着け余分な水分を取り除く“茯苓”、血液循環をよくする“桃仁”や“牡丹皮”などが配合されています。

・温経湯(ウンケイトウ)106番
乾燥を潤しながらからだを温め血の巡りを良くし、胃の調子を整えます。
温経湯には、半夏(ハンゲ)・当帰( トウキ)・甘草(カンゾウ)・桂皮(ケイヒ)など、血流をよくして体をあたためるもの、水分を保持するもの、あるいは滋養作用をもつ生薬などがいろいろと配合されています。

以上、3回にわたって妊娠と漢方薬についてお話してきました。

最初にお話したように、漢方薬は一人一人違う不調の原因を正しく捉えることが重要です。

ここが間違ってしまうと効果は上がりません。

それどころか合っていない漢方薬を飲むとお腹の調子が悪くなったりもします。

もしそのようなことが起こったら、処方されたものであればお医者さんや薬剤師さんに相談してください。

市販のものを自分の判断で飲んでいるのならば、中止したほうが良いかもしれませんね。


次回は妊娠とサプリメントについてお話したいと思います。


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赤ちゃんを授かるヒント、第5回目は「妊娠と漢方薬②」です。

前回は漢方薬を飲むと何がよいのかについてお話しました。

今回と次回は2回に分けて、東洋医学的に見て「妊娠しにくい」4つのタイプとそれぞれに使われる漢方薬のお話をしたいと思います。

その4つのタイプの名前をここでは「脾虚タイプ」・「肝虚タイプ」・「腎虚タイプ」・「瘀血(おけつ)タイプ」と呼ぶことにします。

今回は全体的なお話と「脾虚タイプ」を取り上げます。


まずは前回のおさらい。

「妊娠しにくい」というのは東洋医学的に見て

1.虚証か実証か

2.うまく働いていない内臓は「脾臓」か「肝臓」か「腎臓」か

3.体を動かす物質の1つである「血」は不足あるいは過剰になっていないか

の3つの項目で考えます。

東洋医学的な問診や検査でこの3つの点から、その人の原因をさぐりそれに対する対策を立てます。

漢方薬なら、どの漢方薬を処方するかということですね。

原因が脾臓がうまく働いていない場合を「脾虚」といいます。

「脾虚」タイプの場合、当然脾臓(この場合は西洋医学で言う脾臓とは概念が異なります)をうまく働かせることが必要ですね。

東洋医学でいう脾臓は胃で消化された食べ物から栄養分を取り入れ、気・血・水を作り出す働きをすると考えます。

ですから脾虚である場合、胃腸の働きを良くする漢方薬が処方されます。

出される漢方薬には強壮作用を持ち貧血を改善する「人参」、筋肉の緊張を解く「芍薬」などの生薬※を含んだものが多く使われます。

※生薬:天然に存在する薬効を持つ産物から有効成分を精製することなく体質の改善を目的として用いる薬の総称です。複数の生薬を混ぜ合わせたものを「漢方薬」といいます。

以下、具体的に処方される漢方薬名と効能、含まれる生薬を列記します。

・六君子湯(リックンシトウ) 43番 
からだを温め、胃酸の分泌を抑えて胃腸の調子を整え、むくみを取ります。
六君子湯は、無駄な水分を取り除く“蒼朮”と“茯苓”、滋養作用のある“人参”、吐き気をおさえる“半夏”、健胃薬の“陳皮”、緩和作用の“甘草”などが配合されています。

・補中益気湯(ホチュウエッキトウ)41番 
気力の高まるオウギ・ニンジンを中心として、からだを温め、内臓の機能を高めるソウジュツ・サイコなどの生薬で構成。
補中益気湯は、滋養強壮作用のある“人参”と“黄耆”、水分循環をよくする“蒼朮”、炎症をひく“柴胡”、血行を よくして貧血症状を改善する“当帰”、のどの痛みや痔を治す“升麻”、胃腸の働きをよくする“陳皮”や“生姜”などが配合されています。

・人参湯(ニンジントウ) 32番 
からだを温め、胃の調子を整えます。
人参湯は、主薬の“人参”をはじめ胃腸によい下記の4種類です。滋養強壮薬でもある“人参”は、胃腸機能を高め体力や気力の回復を助けます。 “蒼朮”には無駄な水分を取り除く作用があり、もたれや下痢に効果的です。これに、健胃作用のある“乾姜”、緩和作用の“甘草”が加わります。

・小建中湯(ショウケンチュウトウ)99番 
からだを温め、胃腸の調子を整えます。
小建中湯は、おだやかな発汗・発散作用のある“桂皮”、痛みをやわらげる“芍薬”、体をあたためる“生姜”、緩和作用のある “甘草”などが配合されています。そのほか、膠飴(麦芽糖)と呼ばれる“あめ”もたくさん入っていて、これも栄養分の補給になります。

半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ) 14番 
胸のつかえを取り、胃腸の調子を整えます。
半夏瀉心湯の主薬、“半夏”は吐き気をおさえるための重要な生薬です。瀉心湯類に特徴的な“黄ごん”と“黄連” の組み合わせは、みぞおちの張りやつかえをとり、また、熱や炎症をさまします。“人参”にも滋養強壮作用のほか、みぞおちのつかえを治す作用があります。これに、健胃作用や緩和作用のある“乾姜”と“大棗”、“甘草”などが加わります。

・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ) 48番 
からだを温め、血の巡りを良くし、体調を整えます。
十全大補湯は、血行をよくして貧血症状を改善する“当帰”や“川きゅう”、“地黄”をはじめ、滋養強壮作用のある “人参”や“黄耆”、水分循環をよくする“蒼朮”や“茯苓”などが配合されています。

以上が脾虚タイプの方によく処方されると思われる漢方薬です。

含まれる生薬の簡単な説明も書いたためごちゃごちゃしてしまいました。

通常は飛ばしていただいて、実際に処方された時に読んでいただければよいかと思います。

それから、各漢方薬名の隣の番号は、病院で処方される際に使われる漢方薬の番号です。

病院では漢方薬名ではなく番号で呼ばれることが多いので参考にしてください。

では今回はここまで。

次回は残りの「肝虚タイプ」、「腎虚タイプ」、「瘀血タイプ」のお話をしたいと思います。


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赤ちゃんを授かるヒント、第4回目は「妊娠と漢方薬①」です。

最近では妊娠を希望する方が漢方薬を飲まれることも多くなりました。

そこで今回は漢方薬を飲むと何がよいのかお話したいと思います。


漢方薬も鍼灸も東洋医学に含まれ、両者の考え方の根本は同じです。

簡単にいうと「何らかの不調や病気(細菌・ウイルスなどによる感染症はのぞく)はその人の体のバランスが崩れているから起こり、それを治すにはその崩れたバランスを整えてやればよい」という考え方です。

では人の体のバランスとはなにか?

東洋医学では、それを「陰陽五行説」という考え方に基づく「虚・実」と「五臓」、さらに「気・血・水」のはたらきで考えます。

健康なときは体力が適度にあり、内臓も本来の働きをして、それをうまく動かすための物質も過不足なく備わっている。

これが「バランスが整っている」状態です。

しかしひとたび不調が起こったときは、

1.体力が少なくなっているあるいは過剰になっている

2.内臓のどこかで本来の働きができていない

3.うまく動かすための物質が不足もしくは過剰となっている

と考えるのです。

これが「バランスが崩れている」状態です。


このような状態の時

1.の場合、体力が少なくなっていることを「虚証」、体力が過剰になっているのを「実証」といいどちらのタイプかを考えます。

2.の場合、内臓は5つで考えられ「肝臓」・「心臓」・「脾臓」・「肺臓」・「腎臓」(これを五臓という)のどこが働いていないのか考えます。

3.の場合、うまく動かすための物質「気」・「血」・「水」の3つのなかのどれが問題なのかをやはり考えます。

そして以上の中のどれがバランスの崩れの原因かを特定し、それを本来の状態に戻してやる。

その手段として漢方薬を使うのか、鍼灸を使うのか。

その最後のところが違うだけです。

さて前置きが長くなってしまいましたが、このような考え方をした場合「妊娠しにくい」という不調はどうなるのか。

1.は「虚証」・「実証」どちらもあります。

2.は主に「肝臓」・「脾臓」・「腎臓」の3つのどれかに問題があることが多いです。

3.は主に「血」に問題があることが多いです。

一口に「妊娠しにくい」といってもその原因は人それぞれ。

上記の3項目でそれぞれどれに該当するのかをみて適切な漢方薬を処方したり、鍼灸ならば使う経穴(ツボ)を選びます。

その結果、漢方薬であれば原因の見立てが当たっていて、処方されたものを適切な量、適切な期間のみ続ければバランスが整う。

つまり妊娠できる状態になります。

正しい漢方薬は体のバランスの崩れをなおし、本来の働きができるようになるので妊娠できる状態になる。

ということですが、お分かりいただけましたでしょうか。

次回は東洋医学的に見て「妊娠しにくい」4つのタイプとそれぞれに使われる漢方薬のお話をしたいと思います。


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