先日ですが、ファザーリング・ジャパンさんが発足した「保育ボス」の研修会に参加してきました。
突然ですが、皆さんは「保育ボス」という言葉を知っていますか?
保育ボスというのは、保育士の働きやすさ・働きがいを大切にし、よりよい保育業界を作るために全体をまとめていける力を持つ人。それが、保育ボスです。
まずは、ファザーリング・ジャパンの理事を務める、安藤さんからなぜ、今この時代に保育にもボスが必要なのか?というお話から。安藤さんのお話の中で、一番印象深かったのは、
「保育園は、子どもだけが育つ場所ではなく、親も育つ場所である。ただ、近年感じるのは、保育園によって空気感が異なるということ。そして、親が保育園を選べない。子どもの教育が大切だと言われている昨今、この状況はよろしくないのでは?この保育界にも時代を引っ張っていくボスが必要!」
という部分です。確かに、保育界は園によって本当に運営も理念も全てにおいて異なることが多いですよね。しかし、そのバラつきに、困惑してしまう保育士が多いのも現状です。ならば、ベースを整えて、統一化し、子どもも保護者も、そして保育士も働きやすい環境を作っていこうという考え方にとても共感ができました。
続いては、同じくファザーリングジャパンの顧問である、小崎先生のお話。
小崎先生の情報はこちらから
https://ja.wikipedia.org/wiki/小崎恭弘
(有名な方はきちんとWikipediaにもまとめられているんですね…羨ましい)
まずは、今の保育界がどのような変化をしているのか?と言うところ。
みなさんが関心があるのは、この「無償化」と言うところにあるのではないでしょうか?
10月の保育の無償化に向けて、保育業界は確実に変化します。なぜに今、この「保育の質」や「保育に教育が注目されている時代」に無償化なのか…。実際に、大阪の守口市では、0歳~5歳の無償化を行ったそうなのですが、小崎先生がそこで感じたのは、
『無料のものは大事にしない。これからの保育で何が大切なのかを考えていかなければならない。』
ということ。
確かにそうですよね。どの職業も質を上げるために価格を上げる。無料で良いものを提供することができるのか?教育の質とは?と言われている時代に、果たしてそれが本当に正しいことなのか?と改めて感じ、日本は逆行していることに不安を感じました。また、近年は保育園は増えるが、保育士の人材育成が追いついていない、東京では、保育士を常に取り合っていて、保育の理念などよりも賃金のほうが重要視されています。保育ボスの必要性は、この人材育成や働き方、保育士不足の対応について重要な役割があるとも話されていました。
また、「学力」について、この10年で変化が現れていて、その中にある「非認知能力」を大切にするというところでは、それを基にセンター入試の内容が変わったそうです。選択項目数が、6つ→8つに増え「回答なし」という項目もできたそう。ここにもきちんと意味があり、「何かを覚える」ではなく、「思考する」「もっている知識の活用」が大切になっている傾向にあるという意味があるそうです。これを聞いて、教育の現場はここまで変化しているのかと同時に、私達、保育者は、子どもたちに向けてどのような「力」を育てていかなければならないのかを考えさせられました。
保育の質については確かに、世間でも話題になっていますよね。最近では、若いお母さんたちが、幼児教育を自ら学んでいる人もわたしの周りでは増えています。しかし、世間の保育士さんたちはどうでしょうか?私が知っている限りでは、マイナスイメージばかりが世に出ている気がします。
・賃金が低い
・子どもの配置基準
これが、多く発信されていますが、私はこの「賃金」というのは、この5年で大きく変化していると思います。23区で言えば、千代田区は、「借り上げ家賃制度」として家賃13万円までを無料としています。少し前までは、この借り上げ家賃補助は、支給は5年間や、住んでいる地域に関してばらつきがありましたが、近年では5年縛りの排除や、最低でも8万円は支給されています。ということは、手取りが15万だとしても、15万円丸々を自分で使えるわけです。これって凄いことじゃないですか??また、この借り上げ家賃補助は、給料とは別に支払われますので、「住宅手当」とは違い、税金を取られることはありません。また、概ね7年の経験がある職員には、キャリアアップ研修で研修を受ければ、4万円を給料に上乗せがされます。これでも賃金が低いと言えるのでしょうか?ただし、この借り上げ家賃補助は、永年ではありません。世田谷区は、今年度で廃止すると公言しています。となると、いままであった「幻の底上げ」がなくなるわけですから、身の振り方を考えなくてはならないですよね。しかし、「知らなかった!」では、済まされず、保育士自身も自分たちが置かれている環境を知り、どのような働き方をしなければならないのか?危機感を持って働ければ良いなぁ…と感じました。
また、この配置基準も勘違いされがちなんですが、国が決めている配置基準は、あくまでも最低基準です。ここを勘違いしていて、必ずこの人数で見なくてはだめ!と思う人が多いのですが、23区の保育園で言えば、配置基準以上の保育士を配置して保育をしているところがほとんどです。
こうした、世間の誤ったイメージを払拭することも、保育ボスの役割の一つだと私は、小崎先生のお話を聞きながら感じました。
では、どうして保育の質が大切なのでしょうか?先程述べたように、保育は以前のように過程の延長上でOKな時代ではなくなってきました、その背景には、小崎先生がお話されていた中で、
「小・中・高・大学も同じ文言で教育をする。日本で一つの理念で教育をつなげていく。教育に縦軸が入った。その縦軸のスタートに幼児教育がある。それくらい幼児期はとても大切な時期であることを感じてほしい。」と言うところに答えがあると思います。
そして最後に、「保育はこれからどんどん変化をし、5歳児が「義務教育」になるかもしれない。小学校0年生ではなく、保育の中で義務教育が行われる。これは保育という仕事が、より専門性や技術を向上しなければならないということにもなる。しかし、それが本来の保育の仕事ないか?」と話されていて、今は保育士もどこでも需要があって働きやすい環境ではあるけれど、こうした視野をきちんと入れながら働いていかないと、時代に取り残されてしまう。時代に取り残されてしまう場所は、必ず廃れてしまいます。そうなる前に、自らが学ぶ!これが大切なのかもしれませんね。
今回は、実際に保育園を運営している方3名が、ゲスト登壇をしてくださいました。
まずは、九州は福岡で保育園を展開しているOZカンパニーの小津智一さん。
なんと、小津さん以外は、みんな女性の社員さんだそうです。企業内保育所を運営し始めたのは、今から10年ほど前。「保育は人」を大切にし、チームで成果を出す「同一賃金制」や「在宅勤務」を導入。今では、離職率がほぼない環境のようですが、立ち上げ当初は、1年でほとんどのスタッフが退職されたそうです。ここには、それぞれのライフワークバランスを受け入れた働き方の導入により、勤務に偏りが出てしまい、チームが組めなくなり、そこが経営にも響くようになってしまったそうです。小津さん自身も、「なんとかしなくては!」と言う思いから、スタッフ一人ひとりのヒアリングをし、傾聴しケアをしていたつもりだったのですが…聞くだけで終わり、具体的な解決には至らなかったとか…。せっかく、「世の中を笑顔にしたい!」その希望から立ち上げた会社を、無くすわけにはいけないと、一念発起し、小津さんが考えたのは
「スタッフの残業を徹底して無くす」
ということだったそうです。ただ、当然そこには課題も人件費の問題もある。しかし、ここをクリアしなければ、「みんなの笑顔を守れない」と感じ、とにかくやってみたところ、結果は大成功。ここの背景にあるのは、残業をなくすことと、「同一賃金」の制度の導入だったそうで、この同一にすることで、「私は、非正規職員なんで。」という、正規職員・非正規職員の壁が解消されて、「みんなで良いものを作ろうよ!」と会社の中にチームワークが育ち、社員が笑顔でいる時間が増えたそうです。
保育士が笑顔でいれば、子どもも笑顔。そして、保護者も笑顔。小津さんの思いは、今ではきちんと反映されたようで、これからも子育て世代にもっと笑顔になれる時間を増やしていきたいと話していました。
続いては、都内目黒区を中心に保育を展開している、アソシエ・インターナショナルの代表である内山恵介さん。
内山さんが保育の道を歩むことになったきっかけは、前々職の企画部で、「保育園を作ろう」という企画を実現させたことから始まったそうです。自らプロデュースして認可保育園を開園し、その後、大規模な展開をしている保育園で取締役をしていた内山さんは、大規模過ぎることで、現場で働く保育士さんたちがどのように働いているかを感じることができなくなってしまい、もっと保育士さん達の近くで保育を運営していきたい。その思いから、アソシエに入職したそう。
そんな内山さんのモットーは、
「保育はドミナント、子どもの手を引いて歩ける範囲で保育園を展開していきたい。」
アソシエの保育園は、目黒の本社から近い場所に展開している保育園が多いのですが、そこにはこのような意味合いがあったようです。確かに、なにか事故や事件などのトラブルが起きた時に、社員が駆けつけられる環境にあるというのは、とてもいいことですもんね。また、内山さんの思いは、アソシエで働く職員が、転勤してもバス停一つで済むように、通勤に時間がかからないようにと、働く保育士さんのことを徹底して配慮もしているそうです。もちろん、将来の保育に対してのビジョンも視野に入れている内山さん。
住みたい場所ランキングをしっかりと調査をして、そこに保育園は需要があるのか?を一番に考え、
「人気のある場所=その場所に済み続ける人がいる=保育士の永年勤続が可能」
を意識し、保育士が安心して長く働けるように意識もしていると話していました。
アソシエの保育園で働いている職員からも、
「以前は、休日が思うように取れなかったけど、アソシエはきちんと休日が取れるし、書類を書く時間も確保してくれる。」
と現場で働く職員に、幾度となく聞いたことがあったのですが、保育士一人ひとりのコンプライアンスを大切にすることが、アソシエの保育園の人気につながっているのかもしれないですね。
また、保育士の離職原因に多い変形労働時間も、なるべく保育士がコアタイム(9時~18時)で働けるようにし、その他の勤務(早番・遅番)は、有資格者の非常勤職員で補えるようにしていて、早番・遅番もきちんと特殊業務手当を加算をしていたり(アソシエの場合は、早番・遅番の時給が、1700円)、子育て中の保育士さんが働きやすい環境も整えていて、さすが東京都のワークライフバランスを取得している会社だなぁ…と感じました。しかしこの背景にも、内山さんの保育士に対しての思いがあるからこそなんですよね。
ここで、補足です。今、保育士に求められている働き方は、「コアタイム」です。私も現役時代は、早番→遅番→早番と本当に不規則な生活で、毎朝きちんと起きれるかと不安な日々でした。その不安が不眠へと繋がり、精神が安定しなくなることもありますよね。そして、その影響を子どもが受けてしまう…。そんなふうになるのであれば、コアタイムで勤務をして、しっかり身体を整えて働くことは大切だと思います。また、早番・遅番勤務には付加価値をつける。お互いにとっていい環境で仕事ができる。これが、理想のワークライフバランスなのです。きちんとそこを視野に入れている保育園は少ないです。本当にアソシエさんは保育士のためを思っていると、私は感じます。
最後に、内山さんが話されていた、
「私は、夢物語や採算性が無い仕事はしない。そこで、利益の損失になったら、誰が働いている保育士を守るのか?私は、わたしの会社で働く保育士やその家庭を守り続けていきたい。この信念は大切にしている。」
と聞いて、利益だけを求めて失敗して、保育士に負担をかけてしまう保育園が多い中で、自らをも犠牲にして、運営するトップこそが、次世代の
「保育ボス」
に等しいと思います。私も実は、アソシエで働かせていただいていた時期があるのですが、入職した当初、内山さんに
「職場で起きた問題ごとで、解決できなかったら、何時でも良いから電話しなさい。」
と声をかけてもらい、普通であれば、面倒なことは関わりたくないのに、こうして保育士一人ひとりに対して、向き合って「人として」大切にしてくれることに嬉しく感じました。また、同時に、その言葉をもらえただけで「心強く」なり、ちょっとした辛いことがあっても、我慢しながら働くことができていました。
広報として、他園を周り、職員の方に話を聞く機会が多いのですが、やはり内山さんの保育観や安心感に惹かれて入職したという方が多数いて、ファザーリング・ジャパンで男性の家庭への進出を真剣に考えているからこそ男性保育士の今後や、働き方についても考えてくださることや、建設的な考えをもっているからこそ、保育の業界を変えてくれると思っています。
最後の登壇者は、東北は福島で保育園を運営している、株式会社ペンギンエデュケーションの横田 智史さん。
保育士さん達の働き方を変えようではなく、パパやママの働き方や、ワークライフバランスを変えていこうというのがテーマで始まった保育事業。そして、そこからパパたちに保育園の運営に参加してほしいという気持ちが生まれ今に至るそうです。ちなみにペンギンエデュケーションのペンギンという名は、人間界と似ているところが2つあり、1つは、コウテイペンギンの特徴の夫婦で共働き・子育てをしているところ。2つめは、自分の子どもだけではなく、みんなで子どもを育てる=地域社会に似ているところから、名前をペンギンにしたそうです。
横田さんのモットーは
「明るく・楽しく・元気よく」と、「みんなが主役である(子どもも保育士も)」
ということ。職員が余裕を持って笑顔で仕事ができるように、ICT導入でペーパーレス化をしたり、仕事の見える化もしている。それによって、一人ひとりの働き方を把握することができる。また、保育士さんの副業も承諾している。この承諾の背景には、他業種を学ぶことができることで、保育士の人間的なスキルが上がることを横田さんは実感したそうです。また、お互い様の精神も大切にしていて、子育てをしている人、体調を崩して休まなければならないときも、家で仕事をして、きちんと成果を見える化すれば、賃金を支払うようにしている。この、「お互い様」って保育士さんの中に本当に必要なことで、みんなで支え合うってこういう背景があるんですよね。
後半は、小崎先生とのディスカッションで、さらなる保育士の今後について展開されました。
その中で上がった意見で、これからの保育士像について意見が上がりました。
・今後は、保育士=会社員というイメージを持つ
・保育士は経営や労働条件などの勉強をしなくてはならない。ただ受けるだけのスタンスではだめ
・社員になって、サービスとして捉えて子どもや保護者に還元する
・ワークライフバランスを自分で考える
・保育士は、経験年数があがると役職に就かなくてはならなくなる。しかし、役職には得手不得手がある。主任・園長になるのにキャリアの研修は少ない
・保育士さんがやりがいを持って働けるのは、やはり「評価」。この評価によって、給料に反映させていくことがこれからは大切になってくる
・アソシエでは、本部から保育園に向けてアンケートをする。園長を通さないで、ダイレクトに伝わるので、問題点がより明確になる
・内部の社員を強化し、一人ひとりが持つ力を会社の中だけでなく、会社外へと派遣できるようなシステムを作っていくと、会社の利益にもつながってくる
・自分がやってきた保育観が曲げられない人が多い。受け入れられないから、チームが組めない。「朱に交われば赤くなる」ではないが、そこの場所に合わせたルールに準じて働くことができるようにしていく
次世代の保育ボスとはどのような人物像?
・社福の保育園では、転職してもまた一からのスタートが多いが、株式の会社では、今までのスキルや経験を加味して、それに合わせたポジションを用意してくれる。これが、働くモチベーションにつながっていく
・女性の多い職場なので、聞く力を鍛える
・保育の在り方を変えていく。モデリングの保育園を作っていく。そこでしっかり評価を上げて経営していき、他の保育園が真似をしたい!と思えるような保育園にしていく。
・周りと競合しながら保育をしていくのがこれからの保育園経営である
・保育だけではなく、違う視点で保育(介護と保育を近づけたり)をしていく
最後に、会場からの質問
Q 保育士の休憩はどうやりくりしているのか?
A 橋本さん 保育士は休憩を気持ちで取る。時間ではなく、気持ちを大切にしている。
内山さん 保育士が保育室から必ず離れた場所で取らせている。自治体の助成金を利用して、午睡の間に専用の職員を配置する。
堤さん かならず休憩を取らせるようにしている。休憩は権利としている。
小崎さん 各園ごと前提が異なる。ここを問題点として上げることが大切である。
会全体を通して感じたのは、保育を良くするということは、一人ひとりが保育というものはどのようなものなのかを知るというところにあると思います。子どもを取り巻く環境だけでなく、自分が置かれている環境を知るということ。その中には、「他人任せにしない」ということも含まれています。これからの時代は、
「目の前にいる子どもを見ているだけでいい」
ではなく、保育士の言動や心がけ、スキルによって子どもがどのように変化をしていくかを知り、
「目の前にいる子どもの全てに責任を持つ」
ことが大切になるのでは?と感じました。
2時間あまりの研修でしたが、もっともっとみなさんのお話を聞きたかったのが本音です。
「育ボス・保育ボス」この言葉が浸透する世の中になりますように…。
イクボス8か条
1 働く人の安心をつくる
2 チルドレンファースト
3 保護者とともに歩む
4 変化への柔らかな対応
5 WLBの率先的推進
6 多様性の理解と実践
7 働きやすい職場のリーダー
8 保育の質的向上を目指す








