アマヤドリ -296ページ目

掘り起こし潜ってゆく作業

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仕事の後コンテンポラリーのレッスンへ。
お祭りをやっていたのでその灯りをとっさに撮った。


【memo】
・骨盤で床を踏むイメージ。
・脱力と一本芯を通すことを一緒にする。これは私の踊りの課題かも。軌跡や重みのみの面白さにラインを加えること。

立っている時に働く筋肉は重力に反作用して働いている。なので寝て訓練する時にはそれでしか使わない筋肉もある。
あと床との摩擦。

コンタクト・インプロはもっと冒険していい。


目を閉じた相手をひたすら歩かせたり走らせたり…をやった。
子供に還った感覚。
だんだん視界に暗い紫が加わり、触られた部分が黄色く光るような感触がする。
目を閉じるといろんなことを考える。あふれてきてとめどない。どこかへ連れてゆかれる。知らない景色の知らない坂道を私は越えている。走るでもなく歩くでもないスピードで。
ぐんぐん、私の頭のなかなのに急に思いがけない風景が坂の向こうに待ち構える。

幻なのかな。


終わってから先生と色々話した。
勅使河原三郎の、盲目のひととの舞台で感じたどうしようもない、技巧じゃないものを見せられた体験について。文字に色があること。
細胞分裂と一緒に踊るアイデアの面白さについて。時間とミクロとマクロのこと。

夢のこと。
キリスト教と処女懐胎のこと。


創る側のひとと話すことはいつも刺激的だ。
ことばにすることの大切さを感じた。自分の中に埋もれさせないため。風化してゆくのを止めるため。

人はどんどん変わること。意識と体について。
みせることと、みせられること。
様式美から歌舞伎、宝塚の話。耽美とオタクの話。

ああ、尽きない。
もっと話していたかった。

黒の竪琴

私はいつか気が狂ってしまうんじゃないだろうか。

小さい頃から、それをたびたび心配してきた。心配なんてものじゃない。恐れだ。波みたいに、抗えないことが怖かった。

もちろん子供だし、楽しいこともたくさんあるから普段はそんなこと心配しない。まるで悪い、寝入りばなの夢みたいに深呼吸一つで朝の光に馴染むことができた。

でも、その時がやってくるとどうしようもない。

私はいつか狂ってしまう。

お願い。狂ったりしたくありません。

私をひとりにしないで。



今でも自分の中にある手のつけられない部分の存在は感じているけど、その頃は本当にそれが怖かったんだろうな。否応なしに自分が変化させられてしまうことを、でもそれでも自分であるということを、ずっとずっと怖がっていた。波みたいに抗えないのが自分であるということがなによりも。

本を読んだりして、いずれそれが自分とともに育ってゆくことも知っていた。

誰にでもその欠片は埋まっていて自分が特別なわけではないこともちゃんと分かっていた。でもその欠片に気付かずにいられる人生もあるということもまた知っていた。

私のその欠片がどんどん肥大して、身体を傷つけ膿ませる可能性を何度も想像した。暗い部屋で。夕焼けの中で。カーテンの内側で。きっと誰にもどうすることもできない、囚われたこのさきの時間について。

だからいつも結局は、ひとりでいなければならない気がしていた。

打ち負かされて朽ちてゆくことは怖かったけれど。



何故かな。

私は幸せだったのに。

胸の中の、頭の中のわさわさの触手。



今、多分それをうまく操れているような気がする。

認めたからかな。私の中で、特殊に生きてくれ、って。

多分踊りが、それを助けてくれた。

すごい輝きに変わること。



自分以外で気付いたのは、スタジオ時代の同僚のAちゃんだけ。

だから、そんな風に踊るんだね、って。



だから、踊りがなくなることは少し怖い。

でも多分大丈夫だ。もう、子供じゃないから。

『ピアノ・ブラック』

仕事を終え、Kさんのお芝居へ。
結構ぎりぎりだったので新宿に着いてからキョロキョロお花屋さんを探す。ここらへんタイニィアリスもあるしシアターモリエールもあるし…劇場が多いからお花屋さんはあるはず…と。
白にピンクの入った薔薇を一輪。可愛すぎたかな。でも、彼の孤独な(なんて言ったら失礼かしら)戦いに、何だか花を贈りたくなったから。

案の定迷って、怪しげで妖しげなお店の周りをウロウロ。どこだぁ。始めから見られないなんてさ…焦った。
劇場に着くともうちょっぴり始まっていて、申し訳ない気持ちで入場。


芝居は…うん、最初は自分の打った公演のことをすごく思い出した。記憶喪失、脱獄、傷…キーワードが似ていたから。
でも進んでみるともっと現実の痛みのお話だった。
うわぁ、って思った。真っ正面だ、って。私だったらお伽話にしてしまう。
それを、こんなに。
Kさんはどんな痛みを受けてこの話を書いたのだろう。

劇団内の苦労を少し知っていたから「あぁ…」と思ったりもしたけど、だいたいはそんなことに気を散らさず見ることができた。

悪くなかったよ、みんな。
でも確かに、きっとKさんの登っているところとは違うんだろうなぁとは思った。なんだろう、役者は第三者的に自分を見ることが大事だ、ホントに。こう…押し出す輝きだけで十分な人もいるのだけれど、たいていの人は、そしてちゃんと続けたかったらやはり世界の色や、押し出しのボリュームや浮き加減をちゃんと知らなければならない…気がする。その空気に目を配れないと本当に見ていてたまに我に還らされるから…お客さんは敏感だものね、ちょっとした温度の差に。
あと信じること。
自分のつくりあげた世界を信じてその中に染み込むこと。じゃないとだんどり!みたいだから。ほほえむ、うなずく、ってト書きが見えちゃうとこちらの瞬きが増えちゃう。

でも、今日はその、「信じよう」って、「染み込もう」っていうのが見えたから。ト書きじゃなくて。
演出家はさすが。きっと高い要求をしたんだろうなぁ。


はっとさせられるセリフがあって…ちゃんと正しく覚えていないのだけれど…
雛鳥が親をわかろうとわかるまいとちゃんと愛してくれる親がいる…みたいなところ。
あぁ…こんな軽い意味じゃなくてもっと深いの。うん、全然こんなじゃない。Kさんごめん。
うまくいい表せない心のどこかふわふわしたところ、でもすごく核心を突かれたんだ。
真実だなぁって。
私がある本を読んで生まれ変わったように気付いて、最近ずっと考え続けている心の仕掛けみたいなもの。世界と私の精神の共通項みたいなもの。

世界の真実は、混沌の中。
愛や憎しみやなにもかもが矛盾も道理も越えてそこにある。
そこから憎しみをつまみだしてるのも人間の心の働きだし愛を感じるのも、生きてるもののはたらき。
ほんとはなにもかもまぜこぜで、でも何かをかたちにするのは私。
そんなこと理屈をこねなくても分類しなくても、ただそこに在る。


たぶんそんなところより大事なところはたくさんあったんだけど、私はそこまで見て蓄積したなにかがそのセリフではらりとウ゛ェールを脱いでくれた感じがした。

深遠な…そして本当は身近なテーマ。その中にとてもロマンティックなセリフがちりばめられていて、ふふ、と思った。
他のも見てみたいな。


お疲れさま。
もしかしたらひっぱりあげる努力よりも、ずんずんぶちあたる努力に重きを置いたらいいかもしれないと思ったよ。
年輪は必要だけれど今しか出せない空気もある。
そんな気がしました。


お疲れさま。

残滓

なんのために働いているんだろう、私。
とたまに思う。

勿論レッスン代を稼ぐためなんだけれど、それ以外の何かがきっとあって毎日やりがいを感じたりちょっぴり落ち込んだりする。
その対象は誰か人であったり、仕事そのものの手ごたえだったりするのだけれど...それが一体どこに辿り着くのだろうか、とがらんとした部屋に行き着いてしまうことがある。

私は全てを自分のためにやっているんだ。全て、自分の益になるようなことしかやっていない。
それはいいんだけれど、そのことに胸を痛めているんではなくて。

踊りを踊らなくなったとしても、その濃い空間は私の体の中に残る。
多分踊りのことだけが私が考えてもいきついてもからっぽにならないなにものかなんだろうという気がする。だから、その濃密な空気を抱えたまま、私はそれから何のために毎日を過ごすことになるのだろう。

多分、大きな意味での自分のために、というのは一生変わらないし、それが自分の周りの大切な人たちの幸せに繋がることが私の幸せなのだろうけど、
・・・

なんだか怖い。



この「無」みたいな空白を一年間たっぷり味わった。のんびりと楽しかったような、日々追い詰められてちょっとずつ息が詰まっていったような。

どうしてあんなに麻痺していたんだろう。
何にでも簡単に慣れようとしてしまう。
とおい昔の、私が懐かしい。

もっともっと単純で、混沌としていて。
取り出す方法を知らなかったからからっぽだと思っていた。

そしていつも空を見て。

うん、それだけは変わらないな。
空を見ていつも風がどこから吹いてくるのかを感じていた。



なにが書きたかったのかな。

わからなくなっちゃった。



確信がぐらついていて、決心が水に溶け出しそうになっていて、でも戻れないことも知っている。
自分で選んだんじゃないけれど。首を振っても、空にお願いしても、これは、もう変わらないことなんだ。

マーブル


むっとーに

自動人形師ムットーニの機械仕掛けの迷宮博物館


なんだかとっても面白そう。



広大なものにも、それから微細なものにも。

あちこちに目を向けたい。

それで全部散漫になってしまっていはいけないけれど。


…ううん、いいのかな。

それでもいいのかもしれない。

無駄なんかないのだから。



嵐が近づいている。

どうしようもなくわくわくする気持ちと、

それからなにごとかを心配するような畏れのような気持ちと。


混ざり合って、お隣との区別がつかぬまま。

なにも分類せずに、この足場のない雲のような灰色の霧の中で。



かいつまむ作業は、またこんど。