六年前 | 上総層群

上総層群

上総海盆・古東京湾海底谷の生物たち

六年前の今日、普段通り都内に出勤していた。地震発生時、またいつもの地震かと思った矢先、一回り大きな揺れに、いつもとは違うと直感した。ややおさまりかけ、しばらくしてラジオをつけると、すでに大津波を呼びかけるアナウンスが聞こえてきた。その時は、まさかこんな大災害になるとは思ってもみなかった。会社の前の歩道には、他のビルから出てきた人たちなどが、不安そうに周りを警戒していた。この時点で、すでに都心の電車はほぼ停止していた。たぶん今日は帰れないなと直感した。案の定、5時になっても電車は再開する兆しもなく、それどころか、歩道を埋め尽くす人々の列が、途切れることなく流れ始めた。幸い、会社にはレトルトの食材がどっさりとあった。冷蔵庫には大量の飲料水もあった。そして、何よりも水道、電気、ガスが使えたのは、東北の方々にはたいへん申し訳ないが、とても助かった。普段は土足で歩き回る床で、新聞紙を敷き一夜を過ごし、その間も、通りの人の列が途切れることはなかった。翌日、近所のコンビニに入るものの、ガムや飴しか残っていなかった。普段買いだめしていた食材がここで役に立った。しかし、しばらくしてラジオの電池がなくなってしまい、パソコンの情報だけとなってしまった。ようやく再開した電車に乗り、普段の倍の時間をかけて、なんとか自宅に帰りついた。普段何気ない生活が、なんと幸せなことなのか、しみじみ思った瞬間でもあった。

 それからというもの、都内では不思議な現象が起きた。ペットボトルの大量値上げである。今でこそ2Lの水で80円程度だが、これが一気に200円以上になり、スーパーやガソリンスタンドに長蛇の列ができた。まあ仕事で使っている人はいざ知らず。危機感に追い立てられてなのか、スタンド前には、連日とんでもない渋滞が出来ていた。それにスーパの食料品もそうだ、レトルトから生鮮品まで、ごっそりと売り切れていた。おそらく、買いだめして結局食べきれず、腐らせたり廃棄したバカは多かったと思う。群衆心理なのか、まあ諸外国のような略奪が起きないというのは、やはり民度の違いだろう。それだけでも日本は素晴らしいと思う。今でこそ、何気ない生活に戻ってはいるが、この時のことを肝に銘じなければなるまい。災いは忘れた頃にやってくる。備えあれば憂いなし。地震とは、石原が言ったような天罰ではなく、台風や噴火などの単なる自然科学現象の一つ、地球にとってはくしゃみ程度のことなのである。