前回の記事で、占星術の起源は、メソポタミア地方の南部に位置するシュメール都市にあるらしいとご紹介しましたが、黄道十二宮が定められた紀元前2,000年頃にこのメソポタミア地方を支配していたのは「バビロニア」という国でして、「シュメール」という名前は地名と人種に残るのみだったようです。
厳密には、メソポタミア地方の北側を支配していたのが「アッシリア」で、南側を支配していたのが「バビロニア」なんだそうですが、後にバビロニアが南北統一するらしいので、もう最初からメソポタミア地域全体を「バビロニア」にしちゃいます。
別に世界史を勉強してるわけじゃないし、ざっくりでいきます。
さて、一方、数秘学の大きな礎となる「カバラ」は、現在のイスラエル地方が発祥とされています。
このへん。
バビロニアにかなり近いですね。
カバラは、このイスラエル地方に住むユダヤ人にとって精神的成長に欠かせない大切な教えであり、基本的には「秘伝」として、師から弟子へ口頭で語り継がれてきました。
カバラはユダヤ人の祖であるアブラハムがメルキゼデクという王から受け取った教えだとされていますが、どちらも伝説上の人物のため、正確な時代が分かりません。
カバラ黎明期に関連する人物で、一応、実在していると思われるのが、かの有名な「モーセ」です。
モーセはシナイ山に7日こもって神の啓示を受け、その啓示がカバラの聖典となる「旧約聖書」におさめられるわけですが、モーセは紀元前1,200年頃に亡くなったと記録されています。
カバラと占星術の原石は、同時代というのは乱暴すぎますが、わりと近いエリアの近い時代に誕生していたとは言えそうです。
ちなみに紀元前1,200年頃の日本は、まだバリバリの縄文時代です。まだどんぐり拾ってます。
800年差を「近い時代」と言ってよいのか微妙ではありますが。
紀元前1,000年頃になると、イスラエル地方が統一されてイスラエル王国が建国されます。
バビロニアとイスラエルの間で何かしら文化交流が生まれていたら素敵だなと思いますが、残念ながら、侵略によってこの二国間に決定的な接触が起こります。
それは、紀元前587年に起きた「バビロン捕囚」であります。
Wikipedia情報によりますと、イスラエルがバビロニアに攻められ、多くのユダヤ人がバビロニアに捕虜として連行、移住させられてしまった事件とのこと。
強制連行という形ではあったものの、ユダヤ人たちはバビロニア国内で自分たちの町を築くことになります。
この地でユダヤ人はバビロニアの文化におおいに影響を受け、また、失われかけていた自分たちの文化をもう一度築きなおそうと、新たに言語が作られ（新ヘブライ語）、カバラの教えもまた重んじられるようになったそうです。
Wikipediaに書かれている
「イスラエル民族のアイデンティティはこうしてバビロン捕囚をきっかけとして確立された」
という一文に、何とも言えない数奇な運命を感じます。
そしてバビロン捕囚のわずか50年後にバビロニアが滅び、ユダヤ人の一部がイスラエルに戻って自治国を建てたものの、その後も次々に色々な国に支配され、最終的にはローマ帝国の属州となったのでした。
このメソポタミア地方やイスラエルなどで花開いた文明は「古代オリエント文明」と呼ばれ、ヨーロッパに持ち帰られたのちにギリシャやローマをはじめとしたヨーロッパ文明に非常に大きな影響を与えました。
ちなみに、ちょうどこの頃、ギリシャではピュタゴラスが世界各国の知識を求めて旅をしている時代であり、当然ながらユダヤ人の知識層から秘教的学びを受けていたであろうと考えられています。
ピュタゴラスの確立した学理もまた、数秘に欠かせない基盤であり、やはりカバラとピュタゴラスも少なからず接点があったのですね。
そんなわけで、侵略を機に文明の中心はヨーロッパに移っていきますが、ヨーロッパに持ち込まれた天文学は主にギリシャで研究が続けられ、一部は占星学として発展していきます。
そしてカバラはスペインで盛んに研究され、今ではスペインが第二発祥地であるとすら言われるほどに体系化・文書化が進んでいきました。
カバラ三大経典のひとつ「ゾハルの書」。
それぞれ異なる国・人種によって生まれた天文学（占星学）とカバラはひとつの事件をきっかけに深く交わり、占星術が盛り上がる時代にはカバラ研究家も多く輩出されるなど、共に発展・成長をする運命共同体のような道のりを歩んでいます。
そうなるべくしてなったのかは神のみぞ知るではありますが、占星術とカバラは「宇宙と個人の魂は対応している」という同じ原理に基づいており、この２つを分離して考える方が無理があるとさえ感じます。
どちらの学問も生涯かけても学びきれない奥深さがありますが、両方を学べる機会と情報を得られる今の時代に生まれたことに感謝しつつ、頭をパンクさせながらこれからも勉強していきたい所存であります。
ひとまず自身の整理もかねて、占星術とカバラの歴史をご紹介させていただきました。
少しでも「へ～！」と思っていただけたなら幸いです。
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