躑躅が満開だと耳にしたので見に行きましたが…二割ほど枯れてしまっていました。
また逆にまだ蕾の固い躑躅もありました。
躑躅の中に見たことのない植物がありました。
熱心に写し絵を撮っている殿方が居たので、勇気を出してこの花の名を知らないかと尋ねてみました。
少し離れたところにもうひと株この花があり、そこには【セイガイ】と書かれているので、おそらくそれが花の名だろうと教えていただきました。
線香花火のような花の形、葉も同様の形状をしています。
【セイガイ】は躑躅の仲間なのでしょうか?
陽が落ちた事を確認した私は、山南さんの部屋へと向かいました。
「あぁ…セイガイねぇ。これではないかな?」
山南さんは書物の一頁を指差し、にこりと笑いました。
「セイガイ…青涯…青涯躑躅!」
「細長い花弁の躑躅のようだね。」
「凄い!面白い!躑躅って色んな種類があるんですね」
興奮気味の私を見て、山南さんは笑いだしてしまいました。
「ふふっ…私には君の色んな反応を見ている方が、ある意味面白いですよ。」
「すいません…単純で…」
「いいや、楽しいですよ。羅刹となってからは、顔を合わせる人も限られているからね。君が色んな情報を持って尋ねてくるのは、ある意味楽しみなのです。」
そう言いながら、山南さんはそっと私の肩を押しました。
「もう少し話していたいところですが、長居すると危険ですよ。私は人ならぬ者だ。何時かの様に君の生き血を求めて、暴走するかもしれない。さぁ行きなさい。」
そう言う山南さんは少し寂しげで…あの夜、山南さんが変若水を口にしてしまった事を止められなかった私の胸は痛むのです。