夕餉が終わり、後片付けも終わり、私は部屋に戻ろうと廊下を歩いていました。
すいっとすれ違った人に私は声をかけそびれ、あっと小さな声をあげました。
(沖田さんだ。今日は体の調子悪くないのかな?)
なんとなく気になり後をつけてみると、玄関から外へと出て行ってしまいました。
(ちゃんと近藤さんか土方さんに断ったのかな)
気になった私は、沖田さんの後を追いかけることにしました。
(思ったより歩くのが早い。見失いそう…)
沖田さんは誰かと合流することもなく、一人でどんどん歩いて行きます。
(巡察に同行している際は、私の歩調に合わせてくれてるんだな)
何処に行くのかと考えてみるものの、まったく思いつきません。
(原田さん、永倉さん、平助くん辺なら、夜泣きそば食べに行くが正解だろうけど、沖田さんはそんな食欲ないし…)
必死に後を追い続けると、沖田さんは小川の側でピタリと足を止めました。
きょろきょろと周りを見渡し、何かを探している様子。
(まっ…まさか逢引とか!?私滅茶苦茶邪魔?)
「居るんでしょ?最初から気がついているよ、千歳ちゃん」
「へっ?」
「くすっ…下手くそな尾行。気がつかないわけがない」
「すいません…一人で出て行くから心配で」
「お節介だなぁ。まぁついて来て正解だったけどね」
沖田さんは草の茂みの中を、黙って指差しをしました。
「何か見えても無言で。不用意に声をあげたら…殺すよ」
「あはは…」
小さな声で乾いた笑いを返すと、目を凝らし指差す先をじっと見つめました。
その先には…
「わかった?くれぐれも大っきな声は出さないでね。蛍が驚くから」
黙って頷き、茂みの中をじっと見つめました。
「綺麗…」
「うん。消えては光る。光っては消える。人の命みたいだね」
「儚いですね。だから綺麗です」
何時かは消える命。
誰もが限りある命。
だから光輝くのだろう。
命と言う灯を灯して。