灯 | 千歳日記

千歳日記

この先にある未来を…

たとえどんな未来でも私は見届けてみせる

最後まで…必ず

梅雨が間近いと言いながら、雨雲は気まぐれに寄り道をしているようです。





夕餉が終わり、後片付けも終わり、私は部屋に戻ろうと廊下を歩いていました。

すいっとすれ違った人に私は声をかけそびれ、あっと小さな声をあげました。

(沖田さんだ。今日は体の調子悪くないのかな?)

なんとなく気になり後をつけてみると、玄関から外へと出て行ってしまいました。

(ちゃんと近藤さんか土方さんに断ったのかな)

気になった私は、沖田さんの後を追いかけることにしました。





(思ったより歩くのが早い。見失いそう…)

沖田さんは誰かと合流することもなく、一人でどんどん歩いて行きます。

(巡察に同行している際は、私の歩調に合わせてくれてるんだな)

何処に行くのかと考えてみるものの、まったく思いつきません。

(原田さん、永倉さん、平助くん辺なら、夜泣きそば食べに行くが正解だろうけど、沖田さんはそんな食欲ないし…)

必死に後を追い続けると、沖田さんは小川の側でピタリと足を止めました。

きょろきょろと周りを見渡し、何かを探している様子。

(まっ…まさか逢引とか!?私滅茶苦茶邪魔?)

「居るんでしょ?最初から気がついているよ、千歳ちゃん」

「へっ?」

「くすっ…下手くそな尾行。気がつかないわけがない」

「すいません…一人で出て行くから心配で」

「お節介だなぁ。まぁついて来て正解だったけどね」

沖田さんは草の茂みの中を、黙って指差しをしました。

「何か見えても無言で。不用意に声をあげたら…殺すよ」

「あはは…」

小さな声で乾いた笑いを返すと、目を凝らし指差す先をじっと見つめました。

その先には…


(蛍!)

「わかった?くれぐれも大っきな声は出さないでね。蛍が驚くから」

黙って頷き、茂みの中をじっと見つめました。

「綺麗…」

「うん。消えては光る。光っては消える。人の命みたいだね」

「儚いですね。だから綺麗です」

何時かは消える命。

誰もが限りある命。

だから光輝くのだろう。

命と言う灯を灯して。